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今の仕事に不満と不安はあるけれど、漠然と働き続けているすべての人たちへー転職の思考法 解体新書

みなさん、こんばんは。
今日は最近読んだ本の中で、秀逸なものがあったので皆さんに共有します。今回は、転職にまつわる本です。

こんな風に心の中で思っていないですか?

今の職場に不満と不安はあるけれど、やめてやりたいことがあるわけじゃない。きついところもあるけれど、慣れた場所だから離れるのは怖い。

世の中には、もっとブラック企業もあるんだし、下手なところに動くより、今の場所に留まる方がいいんじゃないか?

いや、でも先細りは見えているし、この先自分はここでずっとやっていけるのか?でも転職を考えるとしても、他に行けるほどの経験と能力があるなんて、言えるだろうか。

ああ、でも、辞めて新しいことに挑戦する同期は羨ましいー

この本は、そんな風に一度でも思ったことのある、あなたの心をがっつり刺すだろう。これは転職を希望しようとも、しなくとも、全ての仕事に着く人に関わる、妙薬であり劇薬であるからだ。

著者は博報堂で経営企画・経理財務を担当し、ボストンコンサルティンググループを経て、人材ポータルサイトワンキャリアを運営している、職業人生の設計家。


本書の魅力は、下記のポイントに集約される。

1 市場価値を否応にも考えさせ「やりたいこと探し」に埋没させない設計
2   自分が今いる場所の価値と意味を、外側から知れる
3   仕事を通じた生き方が見つかる


1 市場価値を否応にも考えさせ、「やりたいこと探し」に埋没させない設計

ビジネス系の自己啓発で、こんな本を読んだことはないだろうか?

「成功するには、まずは自分のやりたいことを探そう」
「自分がやっていて、好きなことを考えてみよう」

そこから、次の仕事探しにつなげる本はビジネス、スピリチュアルなどで多い。好きなことには、成功への道が隠されている、というわけだ。

だが、この本はそんな甘い始まりではない。読者は最初に、自分の市場価値というものを突きつけられるのだ。

30歳を迎え、新卒で入った会社でサラリーマンをしている青野の物語を通じて、転職とは何かを考えさせる当書。

経営コンサルタント黒岩は、青野にこう突きつける。

「おまえ自身のマーケットバリューを測れ」

他社でも通用する、自分のスキルとは何か?転職を考えたとき、それは現実味を帯びて、自分の身に降りかかってくる。転職という場において初めて痛感することではあるが、本来は仕事につくすべての人に関わることだ。

あなたもこの本を読んで、自分の身に置き換えずにはいられないだろう。青い鳥を追わずに、あっさりと真実に迫る設計には、あなたもうなるはずだ。


2  自分が今いる場所の価値と意味を、外側から知れる

自分が今いる職場というものは、客観的に見ることが難しい。新卒で入ったところなら、愛着もあるし離れることは、必ず不安が生じる。

本書はそうした人間ならではの、客観視することの難しさや人間の不安を踏まえたうえで、会社の寿命を教えてくれる。

衰退している産業では、そもそも業績を上げるのが難しい。それどころか、消えていく産業で得た経験は、無効化してしまう。あなたの今いる場所には、どこまで生産性があるだろうか?今後も伸びていくと、言えるか?
10年前とまったく同じサービスを提供している業界に、明日はない。

ぎくっとした人も多いだろう。

そして、恐ろしいことに、上で書いたことはある真実を導いてしまう。
つまり、終わった産業・衰退する会社にいる人間は、その場に居続けると、「その場にしか居れない」人間を生み出してしまうのだ。

あなたの会社にもいるだろう。この会社にいることしか、もうできない人間が。仕事に文句たらたらだけれども、もう他の場所に入れない人間が。しがみつくためだけに、必死になっている人間が。

これは、なぜそういった人間が生れるのか、青野という人間の一人生の1ページを通じて学ばせてくれる。そうなりたくないと、心から思えるあなたは、ぜひこの本を手にとって欲しい。


3 仕事を通じた生き方が見つかる

2で述べたように、業界を間違えたり、自分の能力をうまく身に付けられないと、その会社でしか生きられない人間を生んでしまう。

そして、そういう人間は、上司や会社の顔色を伺って生きるほか、なくなってしまうのだ。「自分の人生を選ぶ力」を失っている。

あなたは、それを自分に許すのか?

そして、エージェントの黒岩は、青野に問う。

「君はなにがしたいんだ」

そう、転職では新卒採用よりもさらに主体性を問われるのだ。おそらく、新卒の時はネームバリューとか、初任給とか、なんだかんだ親の意見や周りの学生と足並みをそろえた回答を選びがちだ。ところが転職では、まさにあなた自身の生き方を問うことになる。これは、転職のテクニックだけでは解決できない。自分自身を振り返らなくてはいけない。なんとなく働いてきただけの人間には、つらい作業だ。

本書は小手先の転職テクニックではなく、あなたの人生を生きられる方略を差し出してくれる。1の通り、最初に市場価値と給与の関係性を見せつつも金銭ではない生き方も、ちゃんと提唱している。

そして、本書の利点はこれについて言及していることだ。

「心からやりたいこと」を探す人間は多いが、多くの日本人は「どんな人でありたいか」に価値を置いている人が多い。

だから、やりたいこと探しより、どんな自分でありたいか、どんな仕事ならそれができそうかを考えろ。そして、やりたいことはなくても、ある程度はやりたいことは見つけることができる。

やりたいことを探せ、と一定の年齢から言われてきた人間にとっては目の前が急に開けたような気がするのではないだろうか。

本書は、その設計に優れている。理論だけではなく、読者に本当に腹落ちさせて新しいものを見せることができる。青野が、転職エージェント黒岩を通じて学んだことが、あなたにもそのまま、すとんと理解できる。むむ。この感情設計は只者ではない。

この読書体験、あなたにもぜひ体験してほしい。この物語は、きっとあなたの物語でもあるはずだ。


さて、北野氏はこの秋はWEB上で話題になった、天才と秀才、凡才の組織での関係性について言及した書籍を刊行するそうなので、楽しみだ。

(元ネタは上記の記事)


(ちなみに、この本は弊社プロデュース書籍ではないため、弊社および私には一円の利益も入りません。この記事は、私の気持ち悪い情熱とお節介心によって支えられています。)


記事は基本的に無料公開ですが、もし何か支援したいと思っていただけましたら、頂戴したお金は書籍購入か、進めている企画作業に当てさせて頂きます。