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140字小説集

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140字小説だけ集めたもの。コメント欄に設定付き。
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2019年9月の記事一覧

「たとえばさ、タピオカとカエルの卵ってすごい似てるじゃん?」「たとえ話下手すぎじゃない?」「えっ」「普通に気持ち悪くて先聞きたくないわ」「せっかくわかりやすく説明しようとおもったのに」「気持ち悪いことしかわからなかった…で、なんの話?」「俺、おまえのこと友達じゃなくて好きみたい」

幼い私が泣くたび、母は何もないところから花を出したものだ。「実はママは魔法使いなの」その言葉を信じ込み、大人になれば私もと目を輝かせた。そんな私も今や二児の母。「ママ、あれやって!」我こそは『手品が趣味な女』の正統なる後継者。タネも仕掛けもありますが、夢の時間をご覧入れましょう。

中学二年、初恋だった。見つめるしかできずに終わった——はずが、私たちは出会い恋に落ちた。『夢』の中で。時を重ねて、十年後。同窓会会場ではにかむ彼の左手に指輪を見つけた。その夜、夢の中の彼は私にプロポーズ。「君に出会えなかった人生を想像できない」笑って、起きた。それが私の人生です。

浮気されていたとおもったら、わたしが浮気相手でした。とても寝つけない夜中、アイツにもらったマグカップを叩き割ってやった。みじめなわたしのちんけな復讐は失敗する。破片を前に涙が止まらない。可愛くてお気に入りだった。毎朝これでコーヒーを飲んだ。代わりなんて誰もなれないはずだったのに。

朝霧で世界がかすんで見える。このまま自分も溶けてしまえそうな気がした頃に、「早起きなんだな」我に返った。祖父がコーヒーを片手に戸の前で立っている。「べつに」YESでもNOでもない言葉を残して、部屋の中に戻ろうと足を踏み出した瞬間、頭上を大きな鳥が羽ばたいた。「新入りを見に来たな」