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【実験・検証室】 011:CMYK×蛍光インキ

印刷で蛍光色を使うとき、その部分を【目立たせる】という目的で使うことが多いと思います。蛍光色は“鮮やかでまぶしく感じる色” なので、自然と目を引きますよね。

蛍光色が鮮やかでまぶしく見える理由は、蛍光色に「蛍光体」という蛍光を示す物質が含まれていて、その「蛍光体」が見えない紫外線の光までも可視光線に変換する働きがあるためだそうです。

ただ可視光線を反射するだけではなく、紫外線などの本来は目に見えない光を吸収して目に見える光として放出しているということです。
(物体が見える仕組みは010でも説明していますので省略します)


印刷では?

印刷で蛍光色を使いたい場合は【 蛍光インキ 】という特色インキを使います。蛍光インキには蛍光染料を溶かし込んだ顔料が使用されていて、これにより鮮やかで強力な色彩効果を得ます。

蛍光色を単独、もしくは数色で印刷するときに、その蛍光色を強調する目的で蛍光インキを2度刷りする場合があります(インキメーカーによっては、1度刷りを推奨している蛍光色インキもあります)。

例えば、通常のカラー印刷(CMYK)に蛍光色を追加する場合は5色印刷になりますが、蛍光色を2度刷りすると6色印刷になり、

●印刷機の制限(5色機以下は使えない)
●印刷の制限(インキ量増による乾きの問題など)
●それに伴う納期面
●コスト面

などで問題になる場合があります。


ちなみにここで言っている“蛍光色を強調する”とは、“蛍光感(まぶしさ)” に関することではなく、“蛍光色による印象の強さ” に関することです。​

では、CMYK+蛍光色の印刷で
他に蛍光色を強調する方法はないのでしょうか。

…実は、蛍光色の下地にCMYKの適切な色を引くことで蛍光を強調させるという方法があるんです。

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こちらはdrupa2016で、某メーカーの資料として製作したものです。目を引くインパクトのある印刷が求められました。

【CMYK+蛍光ピンク+蛍光イエロー+蛍光グリーン+シルバー】の計8色を8色機で印刷。最大限印象的な色彩に仕上げたかったので、今回ご紹介する技を使うことで蛍光部分が鮮やかで強い印象を持つ印刷物ができました。

蛍光の下地にCMYKの適切な色を引くことで
蛍光部分を強調させることができます。
どんな色を何%引くと良いのか、実際に見てみないとイメージしづらい。
そんなデザイナーの皆様のために


検証

蛍光インキの下に任意のCMYKを引くことで、蛍光色の印象がどう変化するかを確認しよう


検証スタート

検証物

蛍光色の中でも概ねよく使用される、蛍光ピンク(P)/ 蛍光イエロー(Y)/ 蛍光グリーン(G)/ 蛍光オレンジ(O)の4色で検証。それぞれに、下記の各CMYインキを10%刻みで引いていきます。

●蛍光P +(M10%~50%)
●蛍光Y +(Y10%~50%)
●蛍光G +(C5%Y10%~C25%Y50%)
●蛍光O +(M5%Y10%~M25%Y50%)

​蛍光インキの下に引く色は、

「似ている色でないと意味がない」
「多くの色を混ぜると色が濁る」
「濃すぎると同じく色が濁る」

と想定して、上記のように設定しました。

用 紙 : OKトップコート+(135kg)
インキ : 株式会社T&K TOKA社製 蛍光インキ
      TOKA FLASH VIVA DX160 (マーズマゼンタ)
      TOKA FLASH VIVA DX450 (マーキュリーオレンジ)
      TOKA FLASH VIVA DX610 (サターンイエロー)
      TOKA FLASH VIVA DX700 (ダイアナグリーン)
色 数 : 8色(CMYK+蛍光4色)
印刷機 : KOMORI 4色機(2回戦)


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こちらを検証物として印刷します。


印刷結果

印刷しました。

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検証物を見ると、まず「まぶしい!」と感じる方も多いと思います。
今回使用している蛍光インキ(T&K TOKA FLASH VIVA DXシリーズ)は高濃度で鮮やかな発色性に秀でている蛍光インキなので、1度刷りでも十分な蛍光感が出ています。

各蛍光インキに引いたプロセスインキ、シアン(C)/ マゼンタ(M)/ イエロー(Y)は、蛍光と比較すると普段見ているよりもかなりくすんでいるように見えます。

また、蛍光色単体部分と、蛍光インキの下に任意のCMYを引いた部分の発色感を比較してみると、任意のCMYを引いた部分CMYの%が上がるほど(CMYが濃くなるほど)発色感は落ちて、くすんでいます。

しかし、色の強さとしては蛍光色単体部分よりも強い印象です。バランスの問題ではありますが、プロセスインキ(CMYK)よりも色が薄く感じる蛍光インキが実際にデザインに組み込まれた時に、他の色に負けない色の強さが出てきます。通常のプロセスカラー(CMYK)では出すことができない「強い蛍光色」になっているかと思います。

主観にはなりますが、“蛍光色の印象を強める”という目的の場合は、その蛍光色に似たプロセスカラーを10%程度重ねるのが蛍光感もそこまで落ちず、自然で良いかと思います。

蛍光色をデザインに組み込んだときの全体の色バランスや
仕上がりイメージによりますので、検証資料を参考になさってください。


ちなみに、色の比較をする時には周りの色を隠すように見ると色の評価がしやすいので、不要な紙などで、このようなものを作るのがオススメです。
(周りを隠さないと、蛍光色単体のまぶしさに印象が引っ張られます)

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蛍光のまぶしい発色に“強さ”もプラス。
通常のカラー印刷に取り入れやすいちょっとした小技です。


検証物のサンプルは資料請求フォームよりお問い合わせください
(無償でご提供しています)



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