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跳び跳びのエネルギー:お話物理:水素原子

前回は,我々を構成する原子のもっとも簡単な模型である,水素原子の話を始めたのだった.古典的には,原子核の周りを電子は楕円軌道で回るのだが,それを認めると,原子が潰れて大きさを持てなくなってしまったり,跳び跳びの色の光が出てくる実験結果と合わないのだった.


水素原子のハミルトニアンは

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という形だった.三次元の固有値方程式は

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という形になる.長い.

長い数式を見るとうんざりする.がじっと見ると角度方向の微分方程式は以前やった球面調和関数の固有値方程式になっている.

すると動径方向"r"の微分方程式だけになって

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となる.ここで注意したいのは,微分方程式が角運動量の大きさ"l"に依ることだ.角運動量の大きさが長さ方向の形の決定に効いてくるということだ.逆に一成分の大きさ"m"には依らないのだ.


この動径方向の微分方程式にはちゃんと解がある.昔の数学者が物理で必要になる何年も前に用意していたものだ.用意周到というか漏れがないというか数学者には頭が下がる.物理屋はのうのうとその努力の上の成果物だけ使う.なんと都合のいい人間か.

その微分方程式を実際にとくのは面倒なのでやらないが,二つポイントがある.一つ目は波動関数が原点(r=0)で滑らか(まともな形)であること,二つめは規格化可能であること.

まともな形というのはどういう心か.極座標では原点が特別な点になっている.それは角度方向の値が定まらないからだ.しかし本来はそこは特別な点ではない.だからそこでの波動関数も特別な形であってはいけないというイメージだ.

規格化可能性は今までの量子力学,例えば調和振動子でもあった,量子力学の基本的要請だった.波動関数の二乗は粒子の存在確率(密度)であるから全部で"1"にできなければならないという話だ.

その二つの条件でしこしこ微分方程式を解くと,エネルギー固有値が定まる.

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ここで"n"は正数で,これが規格化可能性から出る量子力学特有の跳び跳びだった.

次回はこの波動関数の形を具体的に見て,あれこれ言ってみよう.

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