中原駿 特別コラム MEA CULPA メェア・クゥルパァ ~ あるいは「非常識」な相場 ~

世界大恐慌を生き残った伝説の投資家、W.R.ギャン(1878~1955)。彼が確立した相場分析手法は今も「ギャン理論」として継承されています。この理論の日本における第一人者として分析記事を執筆中の、中原駿氏の特別コラムとなります。

日本時間 6月11日(木 )に予定されているFOMCでの政策金利発表を前にして、中原が金融市場の見通しを述べております。


プロたちのあげた“白旗”

雇用統計が終わってもまだ下がらぬ相場―というより、歴戦のマクロ系ヘッジファンドが思わず白旗を上げる超強気相場に彼らが思わず口をついて出た言葉、それがメェア・クゥルパァ(mea culpa)である。
 このラテン語、直訳すると「私が悪かった」となるが、実際に受ける語感は極めて丁寧且つ内省的。これを政治家が言えば「私の不徳の致す処」となる。
元々、ローマ=カトリックでミサの初めや苦行の秘跡を受け取った時に用いる告解―つまり罪深き自身が過ちを認める自戒の言葉なので、この場合「(一生懸命予測したが)今回は間違っていた。懺悔する」というニュアンスになる。
そして、この言葉が先週8日、マーケットのあちこちで囁かれた。
ジョージ・ソロス氏の右腕として活躍しヘッジファンドで富を築いたスタンリー・ドラッケンミラーは、米CNBCのインタビューの中で「私のキャリアのなかで何度も恐れ慄き、謙虚になる時があったが、ここ3週間はこの類に属する」と述べていた。緩和的な金融政策による企業負債の積み上がりが長期的な懸念材料として、新型コロナがバブル崩壊につながると公言していたのだから、彼はとても強気にはなれなかったのだろう。事実5月中旬、彼は「景気のV字回復は空想」と切り捨て、株高の持続性に疑問を呈していた。
ところが、先述の通り8日出演の米CNBCの番組ではハッキリと「底値からのラリーに乗り遅れた」と告白したのだ。

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