よく言われるインバウンドの「コト消費」「モノ消費」の話

2019年の訪日外国人数が前年比2.2%増の約3,188万人であったと10日の国交省大臣会見で公表されました。

これを受けてネットニュースの見出しは「政府目標遠い」など厳しい言葉も見られました。一方で、ネット上のコメントは、訪日者「数」よりも「質」を重視した方が良いという声や「数はもういい」という声が見受けられました。

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(2013年以降の訪日外国人数の伸びがすごい)

そもそも当初目標は「2020年訪日外国人数2000万人」(2008年観光庁アクションプラン)であったことを覚えている方はどれほどいるでしょうか。当初目標が前倒しで達成できてしまったので、4000万人と上方修正。しかし最近問題にもなっているように、訪日外国人数の数が増えれば増えるほど、受け入れる観光地側が混雑してしまい、キャパシティオーバーになってしまっています。

ということで、訪日外国人の数で議論するのはほどほどにして、目標を消費額増加にシフトしてはいかがでしょうか。今日の記事はそんなお話です。

訪日外国人による日本での消費(訪日外国人旅行消費額)は、観光庁の訪日外国人消費動向調査から算出されています。

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(2017年から2018年は算出方法に変更があったので訪日外国人旅行消費額の伸びが緩やかに)

訪日外国人旅行消費額は、ざっくりいうと、「訪日外国人1人が日本で使った金額(1人当たり旅行消費額)」×「訪日外国人の数」で算出されています。訪日外国人が増えなくても、1人当たり旅行消費額が高くなれば、訪日外国人旅行消費額自体は増えるのです。現状は2015年を境に1人当たり消費額は減少しています。

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(1人当たり消費額は「爆買い」が流行語となった2015年をピークに減少傾向。)

「買い物などのモノ消費から、アクティビティなどのコト消費へ」とよく言いますが、どの「コト消費」を売り出すのが良いでしょうか。今回は、訪日外国人旅行消費額全体の約2割を占める中国のケースを見ていきましょう。(中国人による消費は訪日外国人旅行消費額全体の17%1.5兆円なのです。)

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上のグラフは訪日外国人旅行消費額のうち、コト消費にあたる娯楽等サービス費の国別ランキング(左の横棒グラフ)と中国に絞った購入率と購入者単価の季節ごとの推移を示しました。(左上の国籍で「中国」だけをフィルタリング)

何%の人がその費目にお金を使ったのか(購入率)と購入した人がいくら使ったのか(購入者単価)に分けると、中国は娯楽等サービス費の購入率が年間を通して高くないことが分かります。左上の国別ランキングを見ても下位に位置しています。つまり、娯楽等サービス費にお金を使う中国人が少ないことを示しています。

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上は、現地ツアー・観光ガイドにお金を使った中国人の購入率と購入者単価です。購入率が3~4%と低いことが分かります。中国人は他国と比較して団体ツアーの比率が高いので、そもそも日本に来てからの現地ツアー・観光ガイドが必要ない?という議論もあるのですが。一方で現地ツアー・観光ガイドにお金を使った人の購入者単価は10000円前後となかなか高額です。現地ツアー・観光ガイドについては、中国語ガイドの不足についても言われていたことがありましたが、購入した人はお金を使ってくれるわけですから、もっと多くの人に現地ツアー・観光ガイドに参加してほしいところです。

もっと多くのひとに現地ツアー・観光ガイドに参加してもらうことで中国人の「コト消費」の拡大とそれによる訪日外国人旅行消費額全体の増加が見込めるのではないでしょうか。より多くの中国人に現地ツアー・観光ガイドへ出費してもらうためには3つのポイントがあると思います。

①多様な現地ツアーの造成:もともと団体旅行の多い中国人ですから、ツアータイプの旅行に抵抗は少ないと思われます。では、なぜ購入しないのか、シンプルに考えられるのは、参加したいツアーがないということでしょう。近年言われているテーマ性のある旅行に合致した多様なテーマのある現地ツアーの造成が求めらていると思います。

②交通手段を手配した現地ツアーの造成:日本全体で地方誘客に取り組んでいますが、地方の観光地での現地ツアーも増えてきました。しかし、現地までの交通手段がセットになっておらず、現地までの足(交通手段)を自分で確保しなければならないところに障壁があるように思われます。都市部からの交通手段もセットにした現地ツアーがあればよいように思われます。

③観光ガイドの育成:質の高いツアーを担保するには、レベルの高い観光ガイドが必要です。そのためには、中国語対応できる通訳案内士などの育成が必要であるように思います。

ありきたりな提案になってしまいましたが、多様な現地ツアーの造成とこれと合わせて情報発信が重要になってくると思います。

ところで、記事に掲載したグラフはtableauという可視化ツールを使ってグラフを束ねたダッシュボードという形式でtableau publicで公開しています。https://public.tableau.com/profile/tourism.data#!/

国や費目を選択してインタラクティブにグラフを表示させることができますのでよろしければご活用ください。



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