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企業経営にこそデザインを、ブランディングを。

特許庁が経営におけるデザインの重要性について調査をした『「デザイン経営」宣言』なるものをご存知でしょうか。

2018年ですから、今から3年前です。この調査の内容を見ると、経営にデザインを活かした「デザイン経営」が望ましい、と言っています。経営にデザインを活かすのってどういうこと?と思うかもしれませんが、デザインを経営資源として捉える考え方は決して新しいものではありません。そして、経営者であればデザインについて無知ではいられない時代にすでに突入しているのです。デザイン経営が必要とされる背景についても触れながら、デザイン経営とはなにか考えてみましょう。


そもそも「デザイン」の意味って?

特許庁はさらに、昨年は『デザイン経営 ハンドブック』と『「デザイン経営」の課題と解決事例』という資料を作成しています。

これらの資料を見てみると「デザイン」という言葉が、単純に見た目を整えることだけを意味しているわけではないことに気づくと思います。

「デザイン(design)」という言葉は、ラテン語の「Designare」と言われています。この言葉は「計画を記号に記す」という意味を持っています。日本人が一般的に認識している「デザイン」の意味は、この後半部分についてであって、前半の「計画」という部分はあまり認識されていません。「見た目を整える」ことはとても重要なことですが、「きちんと計画に基づいて」いることも非常に重要です。特許庁のいうデザイン経営もこの2つの意味を含んだ「デザイン」として捉えられています。

デザインが経営に必要なわけ

正しくは、デザインが経営に必要に”なった”かもしれません。なぜデザインが必要のなのかは戦後からの時代変化を見ていくとよくわかります。

モノがなかった戦後

戦後は極端なもの不足でした。衣食住に関わるものすべてが足りなくて、とにかくモノが必要でした。そんな状況にあってモノの品質はあまり求められません。とにかく食べられるものがあれば、とにかく着るものがあれば、とにかく寝床があれば、そんな状況です。

このような中では何を基準にモノを買うかというと、自分に足りていない(持っていない)かどうか、です。日々の暮らしをつなぐための消費がそこにはありました。

技術が発展した高度経済成長期

ある程度モノが行き渡り、生活が安定してきた時に訪れたのが高度経済成長です。日本のものづくりが花開き、技術が発展した時期です。この時期は新たな技術がたくさん生み出され、その技術によって物が売れた時代です。

テレビ、エアコン、車、洗濯機、掃除機、炊飯器、などなど、今の暮らしでも活躍している、生活を便利にするさまざまな製品が誕生しました。この時期にモノを買うときの判断基準になったのが、生活を便利にする機能があるか、でしょう。いままで洗濯板でゴシゴシしていたのを、ポイッといれてボタンを押せば後は干すだけ、というような暮らしの便利さを求める消費がメインでした。

モノも技術も飽和してきた現代

さて、今私達が暮らしている現代はどうでしょうか。貧困の問題はあるものの、多くの人は衣食住にあまり困っていません。モノは溢れています。身の回りの製品はある程度技術が成熟し、暮らしぶりを大きく変えるような誰もが欲しがる製品はあまり登場しなくなってきています。モノも技術も飽和状態になってきています。

では、今の私達はなにを基準に消費をしているのでしょうか。それは、ライフスタイルや価値観と言われています。私はまだこの過渡期だと思っています。お米を炊く道具をどんなふうに選びますか?

戦後であれば、とにかく米が長ければ何でもよかった。釜があればいい。
経済成長期は、ボタン一つで炊ける炊飯器。保温機能つき。楽ちんになるモノ選びをした。
現代はというと、わざわざ土鍋を使う人もいる。見た目がおしゃれな炊飯器を選ぶひともいる。ご飯のおいしさを追求した高級炊飯器もある。

現代のモノ選びはひとりひとりの暮らしや価値観によるものへと変化してきています。つまりライフスタイル基準です。ライフスタイルを表現して暮らすためにはデザインがとても重要になるのです。

ライフスタイルとデザイン

ライフスタイルを表現するには見た目がとても重要です。自分の暮らしぶりに合わない製品が一つでもあるとなんだか納得がいきませんよね。部屋や家の中、ファッションや車など一気通貫な暮らしをすることにみんな熱心になってきているのです。

上記はデザインの「記号に記す」の部分ですが「計画を」についてはどうなのか。

近年、ファッションブランドのバーバリーが大量の売れ残り商品を焼却しているというニュースが話題となりました。これに対してさまざまな議論が巻き起こりましたが、バーバリーに限らず多くのブランドがこのような方法でブランド価値を保ってきたといいます。しかしながら、世の中からの批判はとても大きく、こんな対応をしているブランドはもう買わない、という人が続出しました。

「計画を」の部分はそのブランドや製品が持っている「ストーリー」ともとらえられます。どんな思いを持って製品を作り、どんなことに気をつけて販売しているか、など製品の裏側にあるものです。現代の生活者はこうしたバックグラウンドを非常に気にするようになりました。環境負荷が少ないもの、とか、中間搾取のないもの、とか、公共性の高いもの、とか、人種差別をしていない企業のもの、とか。こうした価値観でもって、私達は消費欲求を満たすようになってきているのです。

つまり、

自社の思いや理念をきちんと整理し(計画)、それを企業ロゴや製品の見た目、WEBサイトなどに正しく反映させる(記号に記す)ことが現代の経営にとって非常に重要になっているのです。

経営の隣にデザインを

こうして考えてもまだ経営とデザインが結びつかない人も多いと思います。そこまでしなくてもなんとかなると思っているのではないでしょうか。確かになんとかなるかもしれません。でも、デザインをしっかりと活用して成功した事例はたくさんあります。

・日産(カルロス・ゴーンのとき)
・ユニクロ
・レッドブル
・中川政七商店
・今治タオル
・ヤンマー

などなどもっとたくさんあります。

デザインを経営資源として考えて向き合うことは必須です。と言い切りたいところですが、向き合わずとしても会社は回るでしょう。でもひとつ言いきれるのはデザインをしっかりと考えた経営のほうが絶対にいい、ということ。

ちなみに、しっかりと世界観、価値観を持つことで採用活動や社内のエンゲージメントにも影響が出ます。いわゆるインナーブランディングにも役立ち、離職率や業績向上にも寄与します。

もしこの記事を読んで、デザインのこと考えられていないなと感じた経営者の方は、これを期に自社のブランディング、デザインについて考え直してみてください。

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