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【書評】六反田豊「一冊でわかる韓国史」(河出書房新社)

 日本の隣国、韓国(朝鮮)の歴史については、義務教育である中学の歴史教科書にも触れられています。

 古代には新羅・百済・高句麗が成立し、新羅が統一。その後、王朝は高麗、朝鮮王朝となりますが、近代には日本の植民地支配を受けます。日本の支配から解放されてからは、南北に分断されて激動の歴史をたどります。

 しかし、高校レベルの日本史や世界史では、朝鮮史についてあまり深く学ぶことはありません。

 筆者自身、近現代史を除いた朝鮮史の知識は薄かったため、概要をつかむため本書を使用しました。

 百済の滅亡に殉じた忠臣の階伯(ケベク)、朝鮮王朝時代の発明家・蒋英実(チャンヨンシル)など、多彩な人物にも焦点が当てられています。「チャングムの誓い」といった韓流ドラマに登場する人物もいます。

 特に朝鮮王朝以後の歴史を特徴づけるのが、王族や官僚たちの間の複雑な権力闘争です。豊臣秀吉の朝鮮出兵の直前も、党派対立が原因で外患への対処が不十分になった側面が指摘されています。

 食文化についても触れられています。韓国料理といえば焼肉ですが、新羅時代までは仏教が盛んで、肉食は行われていませんでした。朝鮮民族が肉を好んで食べるようになったのは、仏教が廃れた朝鮮王朝以後のことです。

 日本統治時代には、朝鮮は穀倉地帯として農地が開発されました。しかし、潤うのは地主ばかりで下級農民は困窮。彼らの一部は職を求めて日本に移住し、現在の多くの在日コリアンのルーツとなります。

 韓国は「近くて遠い国」と形容されますが、確かに歴史について知らないことが多いと思います。相互理解を深め、現代の問題の原因を探るためにも広く読んでほしい一冊です。


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