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面倒という体験(わざわざのわくわく)@卒研

卒業研究で取り扱ったトピックをオープンな場に置きたいなと思いNOTEを始めました。「わざわざのわくわく」というタイトルです。内容は手間や面倒の中の体験価値への問題提起。

面倒っていつも悪いことじゃない

これが研究の趣旨でありテーマのようなものでした。人々の幸福のため、暮らしを豊かにするためという目的で社会は多くのプロセスを省いてたけれども、その中に存在した価値にも目を向けてみようよ、みたいな話です。

デザインによって失ってきた価値

私たちは日々生まれるモノやサービスによって新たな価値を手にいれると同時に、失ってきた価値も存在します。例えば、現代のコミュニケーションにおいては即時性という価値を手に入れる代わりに、待つことにおける期待や楽しみを失ったみたいなことです。ユーザビリティを求めるあまり、プロセスの中に存在した体験が失われている、といった感じです。

人の行動から辿る体験の価値

UX(ユーザーエクスペリエンス)の考え方って楽や効率、使いやすさというユーザビリティではなく、喜びや感動だとかがゴールにある、みたいなことがよく言われます。でも、そもそもユーザーの体験の正解、あるべき姿って誰にもわからなくて、それ自身に形もなければユーザーに依存するものなので、結局は何なのだろう...と疑問に感じてもいました。そこで僕は、人々の振る舞う行動から体験価値というものを辿ってみようと考えました。

アナログ回帰現象

今、敢えて「アナログ的なモノ」や「手間のかかる手段」をライフスタイルに取り入れようとする人が増えているみたいです。フィルムカメラやアナログレコードが普及しているのが代表的な例ですね。でもこれは単なるブームではない気がしています。生活の効率化によって、人々が触れることのなくなった面倒なプロセスの中に価値を見出しているからでは?という仮説を立てました。

「わざわざ行動」から UXを考える

「わざわざ」=「面倒と感じながらも時間や労力という手間をかけ、敢えてその手段を選択すること」というように言葉を定義しました。アナログ回帰現象を一般化して考えるためです。合理化効率化していく社会の中に生きる私たちは、合理的な生き物ではないという行動経済学の前提のもと話を進めていきます。

まずは、みんなの"わざわざ"を集めてみました。例えば、味の違いはわからないけれどコーヒーを豆から挽くみたいなエピソードもあれば、神様は信じてはいないけども神社に合格祈願しにいくみたいなものもありました。意外と簡単に200個くらいのエピソードが集まったので、みんな"わざわざ"の手段を選択し生きています。

そこで、どうして人々は「わざわざ」何かをするのか、そこにはどんな価値が存在するかを考えることは、楽や効率ではなく、豊かさを生み出すヒントを得ることをできると考えました。例えば、自分の力で達成することだったり、セレンディピティ(偶発的出会い)的な価値みたいな、ニーズよりも深いところにある体験価値が見えてくるのではないかと考えたわけです。

そこから、予期的UXの話と行動経済学の中のIKEA効果の話を引っ張って説明していきます。

予期的UXの話

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UXの学問分野では、UXを時間軸で4つに分類されます(詳しくはUX白書に)。
予期的UXとは、(厳密にいうと少し異なるが)実際には経験していない段階での体験価値です。それも、さらに分解することができます。

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・知る体験
知るというのはユーザーとサービスとの最初の接触部分で、何かしらの視覚や聴覚、嗅覚などの感覚によって認識する体験のこと。
・想像する体験
知る体験した人は、内容を自分の頭の中で処理し、想像する。リアルタイムで知りながら想像することもあれば、完全に知る対象物が存在しない状態で、頭の中だけで反芻しながら想像することもあります。

この想像する体験の価値が「わくわく」に値するんではないかと考えました。最初に触れた「待つ」という体験にもこの価値が含まれているって言えそうです。

IKEA効果の話

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IKEA効果:自分で労力をかけて作ったものに対して、出来合いの完成品よりも高い価値をつける行動心理

IKEAで買った家具を買ったことがあればわかるかもしれませんが、自分で組み立てた家具がなんだか素敵に見えることありません?あの現象です。

これをわざわざ行動に適応すると、「こんだけやれば」という期待をもって、わざわざ行動することは、実際の得られるモノや経験の価値が上がるとも言えそうです。

わざわざ行動から生まれる価値

そもそも人間の五感なんて曖昧で、味の違いや価値の違いなど、ほとんどの人がわかっていないのかもしれません。高級ワインの美味しさが本当にわかるなんてなんて、格付けのGACKTぐらいでしょう(自分は舌バカなもので)。

実際の体験は、この予期的UXに左右されます。そのため、美味しいに違いないと期待して食べれば、美味しく感じる、みたいな話です。

BBQを例にとると、食べているお肉も野菜も、飲んでいるビールも、そのもの自体はなんら変わりませんが、わざわざ外でテーブルにコンロにお皿にグラスを準備して、自然に囲まれながら食べれば、こんだけやればおいしいだろうと期待します。その期待によって、食べ物が飲み物が美味しく変わるのです。

このことから、実際の体験場面の価値を向上させることはもちろん重要であるが、いかに人々に「体験の想像」をさせるかも重要だということが言えます。

ワクワクしている時間そのものにも価値はあるし、それが得られる報酬の価値を変えうるということがわかります。

問題提起の展示作品

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名付けて、「わざわざの極みグランプリ」!

簡単に説明すると、自分がやった「わざわざ行動」をカメラロールから見つけ、それを、その場でプリントし、「わざわざ」と「ワクワク」の軸が書かれた壁に貼っていくというものです。

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こんな感じで、たくさんのわざわざが集まりました。グランプリといっても、順位とかは全くつけてないんですけどね笑

後付けですが、この展示のポイントとしては、こんな感じです。

・それぞれが面倒について、「自分ごと」として内省すること。
・ほかの人たちのわざわざエピソードに触れられること。
・展示に楽しく参加できること。

タカラトミーのプリントスという、スマホの画面をアナログに撮影して、プリントするチェキを用いました。即興性が高く、いろんな用途展開があると思います。

この展示、どっかの美術館の企画とかでやってみたいなぁ、と呟いておきます。笑

最後に

様々なテックを駆使し、面倒さを一掃してきたけど、その中にも価値があったんじゃない?だから一度立ち止まって考え、未来の選択肢について考えてみようよ、みたいな感じですね。

2020年1月19日(最終編集)

参考

・時間軸でのユーザーエクスペリエンス 〜予期的UX編〜 | UXデザイン会社Standard
http://www.standardinc.jp/reflection/article/prospective-user-experience/
・Norton, Michael I., Daniel Mochon, and Dan Ariely. “The IKEA Effect: When Labor Leads to Love.” 2012
・「若者の消費トレンドとは?アナログ回帰傾向も」財経新聞
http://www.zaikei.co.jp/article/20170815/392170.html


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九州大学芸術工学府デザインストラテジー専攻 修士2年長崎県の福江島に3月から住みます。興味は暮らし、共同体自治など。

コメント4件

たいへん興味深い記事でした。ありがとうございます!
読んでいただきありがとうございました!
すばらしい記事でした。効率化だけ考えるのではなく、わざわざ行動から生まれる人生の楽しみのようなもの、意識していきたいです。
ありがとうございます。社会が効率化されていくからこそ、それぞれの"わざわざ"を選択できるようになるのかもしれませんね!
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