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私のベストテン(第10回)

(10)高坂 研 (twitter 平成30年2月14日)

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                                          持駒 sqrt(p)-leaper 1枚
                                          1手詰 2解 King Madrasi

但し、盤面は縦横とも無限に長いものとする。また、p=67280421310721であり、玉方はsqrt(p)-leaperを持っていないものとする。

King Madrasi:玉を含むすべての駒は、同種の駒から取りをかけられたとき動けなくなる。
sqrt(p)-leaper:移動距離がpの平方根に等しいリーパー。例えば、sqrt(50)-leaperは(1,7)-leaper + (5,5)-leaperである。

 まずは練習として、持駒が(2,3)-leaperだと仮定してみよう。この場合、この持駒を45或いは54に打てばそれで終わりである(玉方は同種のリーパーを持っていないし、22玉は動けない)。つまりこれは、持駒で王手をかけさえすればそれで詰むという、ある意味究極の1手詰なのだ。
 では、持駒であるsqrt(p)-leaperで王手をかけるには、どこに打てばいいのだろうか?この問いに答える為には、整数に関する予備知識が必要になる。

定理 ― 奇素数pが整数mとnを用いて p=m^2+n^2 と表されるのは、p≡1(mod 4) の時に限る。また、逆も成り立つ。そして、この分解は一意的である。

p=67280421310721は4n+1型の素数である(注1)。よって、上の定理より
p=m^2+n^2 を満たす整数 m ,n が一意に存在し、この整数m ,n を用いると与えられたリーパーは(m, n)-leaperと表すことができる(三平方の定理ですね)。従って、1手詰にする為の打ち場所は(m+2,n+2)または(n+2,m+2)であり、これ以外にないということが証明された。

 では、その m, n の具体的な数値はそれぞれいくらなのか?実を言うと、作者である私も知らないのだ。正確には、「この作品が完全作であることは保証できるが、その具体的な解は分からない」ということになる。実際に出題することはないので実害はないものの、こんなことが許されていいのだろうか?(笑)

 私の知る限り、こういった「数学の定理を詰将棋の形で表現する」ということを初めて試みたのは縫田光司氏である(注2)。氏は私と違って本物の数学者であり、その為氏の作品はどれも、フェアリー駒やフェアリールールを駆使した非常に複雑な構成になっているようだ。私にはとてもそんな高度な真似はできず、定理がそのまま解に結びつく非常に安直な表現になってしまった。まあ、無駄な装飾が一切ないという意味では、私らしいのかもしれない。

 なお、m=1やn=1があり得ない(あれば4解になってしまう)ことは中学生でも証明可能なレベルだと思うので、ここではあえて証明しない。何故それが言えるのか、読者のみなさんも一寸考えてみて下さいな。

(注1)wikipediaによると、この素数は1855年にThomas Clausenによって発見されたものらしい。

(注2)いずれもWeb Fairy Paradise(以下WFPと略す)に発表されている。興味のある方は、以下も参照してみて下さい。
・WFP 108号(ベルトランの定理)
・WFP 111号(双子素数)
・WFP 112号(巨大な合成数の素因数分解)
尚、これらは全て、以下のURLからDLできる。
www.dokidoki.ne.jp/home2/takuji/wfp.html

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