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JOSIF KRICHELI傑作選(1)

JOSIF KRICHELI (1931-1988) by Jean-Marc LOUSTAU

我々は雑誌「プロブレミスト」で、ソ連の偉大なプロブレム作家Josif KRICHELI の死を知った。9月20日、ブリッツを指している最中のことだったそうだ。1977/79のアルバムが出版されてからプロブレム創作のグランドマスターとなった彼は、主に長手数のオーソドックスとヘルプメイトで有名である。しかし彼は、以下の作品群が示すように、稀な折衷主義者でもあった。

(1) Josif Kricheli (URSS Yougoslavie 1976/77, 2nd Place)

#2 (9+11)

(1)は素晴らしい2手問題であり、ごく普通の手が3つのスレットを生み出すanti-triple white threatsの希少な作例の一つである。
 まず、白Se5を適当に動かしてみよう。すると、2.Qe5#, Qd4#, Qg4#と3つものスレットが生じるが、これらはいずれも1...Qa1!で逃れる。そこで、キーを1.Sg4!?に変更してみよう。これは2.Qe5#のみをスレットとして持ち (2.Qd4?, Qg4?) 、1...Qa1に対しては2.Sxf2#があるが、1...Bg3! (x)で逃れ。また、キーを1.Sxd3!?とした場合は、2.Qd4#のみがスレットで (2.Qg4?, Qe5?)、1...Qa1に対してはやはり2.Sxf2#が成立するが、今度は1...Bxe3! (y)で逃れ。
 正しいキーは1.Sxf3!!だ。これは2.Qg4#のみがスレットであり (2.Qe5?, Qd4?)、1...Qa1 に対しては2.Sxd2#となる。そして、1...Bg3(x) 2.Qd4#/1...Bxe3(y) 2.Qe5#という形で、トライでの逃れ手がテーマに関連する2つの詰手順の中に再度現れるのだ!まとめると、作意は以下の通り。
Try : 1.Se-- ? (2.Qe5#, Qd4#, Qg4#) but 1...Qa1!
1.Sg4!? (2.Qe5#) 1...Qa1 2.Sxf2# but 1...Bg3!(x)
1.Sxd3!? (2.Qd4#) 1...Qa1 2.Sxf2# but 1...Bxe3!(y)
Key : 1.Sxf3!! (2.Qg4#) 1...Qa1/Bg3(x)/Bxe3(y) 2.Sxd2/Qd4/Qe5#

最後の2つの変化順は、デュアル回避にもなっている。つまりこの作はwhite correctionであり、anti-triple threatsでもあり、デュアル回避を含むHannelius themeであり、多くの同質な要素――即ち同じSによるキー、同じ白Qによるチェックメイト、同じ黒Bの2つの手から成るHannelius――を含んでいる。端的に言って、実に優れたプロブレムである!

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