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LE COIN DU RETRO(補記4)

R65 N.Plaksin, S.Fatchullin(Schchmaty v SSSR 1986, Special Prize)

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           1# (10+14)

 なくなった駒は白がP6枚、黒がRSの2枚。また黒側の駒取りはb6,e6,f6,g5のPによるものが4枚あることが確定している。白の2枚と黒の2枚については、駒取りの種類・場所とも未確定である。
 現在白番だとすると、直前の黒の着手が見当たらない(Ph6xg5と戻すと、h筋の白Pの成が戻せなくなってしまう)。よって現在黒番で、1.Sxb5#というのが作意なのは明白だが、問題はそこではない。勿論、本質的な問いは「この局面に至る手順を求めよ」である。

 まずは、1.Ra8-b8と戻しておこう。そうすれば黒は手に困らないから、白は悠々とQg8の成を戻すことができる。以下2.Qh8-g8 3.Bg8-h7 4.Ph7-h8=Q 5.Ph6-h7 6.Ph5-h6 Ph6xRg5と戻せば、次図になる。

           (途中図1)

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 以下、自陣に戻せる駒は戻してしまおう。すると、問題は「白Kを如何にして解放するか」だということがはっきりと見えて来る。

           (途中図2)

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 白Kをd6から脱出させる為に、黒側はPe7xf6+と戻したい。しかし、それには邪魔な黒Re7にどいて貰わなくてはならない。ということで、更にその前にBc8の形にしておいてPd7xe6と戻す必要があるのだ。このとき白Rがc7に残っているとillegalなので、これはunpromotionしておく必要がある。

           (途中図3)

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 さて、ここから実際に戻してみよう。手順は以下のようになる筈だ。
Bc8xSd7 Sc5-d7 Pd7xPe6 Pe5-e6 Ph7-h6 Pe4-e5 Re5-e7

           (途中図4?)

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 しかし、これではオカシイ。白Bf8はこのままでは身動きが取れないので、Pe7xf8=Bと戻す必要があるが、これだと白Pc7と合わせると白の駒取りが多過ぎるのだ。白Bf8が成駒なのは明らかだから、e6で取られたのは恐らく白Qなのだろう。そうすれば、正しい途中図は以下のようになる。

           (途中図4)

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 これによって、例えば以下のような手順で白Bf8の成を戻すことができる。

Pe7xSf8=B Rf5-e5 Pe6-e7 Sg6-f8...

           (途中図5)

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 注意すべきはf8で取られた黒駒で、一見自然に見えるBを戻すとPe7xf6と戻したとき黒Rがh8に戻れなくなってしまう。従って、f8で白Pが取ったのはBではなくSである。すると、黒Bを取った駒は何か?それは必然的に白Pc7ということになる!
 この駒取りをする為には白Kはd6にいてはならないが、下がるのは不可能。となると、場所を空けるには敵陣に入り込むしかない。つまり、例えば以下のような局面を作る必要があるのだ。

           (途中図6)

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 ここまで来ればもう後は簡単だ。Pd6xBc7と黒Bを戻し、それをf8に連れて行って予定通りPe7xf6+と戻せばよい筈なのだが…。よくよく考えてみたら、Bf8が発生した為に、Pf6でチェックを受けた直後にd6に行くのは不可能ではないか!

 だが、必死に読みを入れ直しているうちに、あることに気付く。白Kが移動した為に、黒Sa7が動ける駒になっている!白Ra8を動かして、3枚あるうちの1枚のSの成を戻し、そしてPa7xBb6とすれば、今度こそ白Kの脱出ルートが見えて来る。

           (途中図7)

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 今まではずっとe5-d6-c7という侵入経路を想定していたのだが、c5-d6-c7という経路もあり得ることになった。この違いはとてつもなく大きい。つまり、Pe7xf6のときにチェックにならないのなら、その後に白Bでもe7に挟んでおけばいいのだから。以上より、例えば次のような局面を想定でき、やっと白Kを開放することに成功したことになる。

           (途中図8)

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 作者の狙いは勿論、白の順列AUW。複雑に組み合わされた論理を解きほぐしていくという、レトロ本来の楽しみが十分に味わえる。

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これにて‘LE COIN DU RETRO’は本当に完結です。今までお付き合い下った読者のみなさん、有難うございました!

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