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プロパラを振り返る(158)

 今日読んでいるのはプロパラ74号(April-June 2016)。16th Sake Tourneyから幾つか作品を紹介したい。今回のお題はColorless Chess。透明駒よりはずっと作りやすいし、プロブレムには既に‘Color the pieces’という設定のレトロもあるので、きっと西欧の作家たちにも馴染みやすかった筈。

Colorless Chess-初形で配置されている駒は、所属が定まっていない(便宜上、全て白駒として表記されている)。そして、先に動かした方がそれを自分の駒であると主張することができる。着手は全て合法であると仮定し、全ての可能性について詰んでいるときのみ、チェックメイトと定義する。キャスリング及びアンパサンは、いずれも不可能であることが証明できない限り可能なものとする。

(306)原亜津夫(Belgrade 2016 Sake Tourney, example)

306 原亜津夫(H#2 Colorless Chess)

           H#2 2sols. (5+0)
           Colorless Chess

1.Kb7(=b) Kf4(Rd4,Be5=w) 2.Kc8 Ba6(=w)#
1.Kf2(=b) Kd5(Bc4,Rd4=w) 2.Ke1 Bg3(=w)#

 Kの色を交換しての2解。センスいいねえ! 例題には勿体ないくらいだよ。

(307)Kostas Prentos(Belgrade 2016 Sake Tourney, 1st Prize)

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           H#2 b)Rb1→d1 (8+0)
           Colorless Chess

a)1.Rb7(=b) Bcb6(=w) 2.Sd7(=b) cxb7(=w)#
b)1.Bb8(=b) c7(=w) 2.Rd7(=b) cxb8=Q(=w)#

 どちらの解においても最後までKの色は確定しないが、どちらだとしても詰んでいるという訳。若島さんは解説で、これを「シュレーディンガーの猫のテーマ」と評している。

(308)Michel Caillaud(Belgrade 2016 Sake Tourney, Special Prize)

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           H#2 (16+0)
           Colorless Chess

1.axb3 e.p. 0-0 2.Bb7 d8=Q#

 フェアリーレトロといえばやはりこの人。順を追って駒の色が確定していくロジックを見ていこう。

 まず、初手1.axb3 e.p.により、この直前の着手が0...Pb2-b4だったことになるから、Ba1とPa2がいずれも黒であることが確定する。特にBa1は成駒であり、Pa4と合わせるとここだけで黒側は3枚駒取りをしていることが分かった。
 次に白は1...0-0とキャスリングする。明らかにKe1,Rh1とd2-h2の5枚のPは全て白駒であり、Kc6は黒駒である。又、白Bf1は初形位置で取られていることになる。更によく考えると、白Bc1も又初形位置で取られているのだ。ここ迄で、黒側の確定した駒取りは5枚だ。
 この後、作意は2.Bb7(=b) d8=Q(=w)で詰んでいると主張している。その場合はBe8が白駒で、Pc5が黒駒ということになるが、どうしてそう言えるのだろうか?

 まず、Be8も黒駒だとして矛盾を導こう。もしBe8も黒駒だとすると、c8,e8のどちらかは成駒である。これはb1かd1で成ったので、少なくとも2枚駒取りをしなければならない。一方、ここ迄に判明したことから、出題図においてPb4,Pd2,Pd7,Ke1,Pe2,Pf2,Pg2,Rh1,Ph2の9枚が白で、更に白は2枚のBを含む5枚が取られている。すると、黒PがBに成る為の2枚を加えると16枚ちょうどになり、唯一色が確定していなかったPc5は黒ということになる。ところが、a筋の3枚の駒が初形でa-c筋のものだったとすると、黒Pc5はこの位置に来るために少なくとも1枚駒取りをしなければならなくなり、駒取りの収支が合わなくなってしまう。
 よってBe8は白駒ということになり、これは明らかに成駒なので、これも含めると盤面には白Pが8枚ある。従ってPc5は黒駒ということになり、確かに作意順で詰んでいることが証明された。

           (色が確定した出題図)

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