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楽しいレトロプロブレム(31)

(30)Michel Caillaud (feenschach 1980)

#2 (12+9)

 作意は1.Ke2+ Kxa2 2.b4#という至って平凡なもの。しかし、何故1.0-0??ではダメなのでしょうか?実はここに、作者Caillaudの真の狙いが隠されています。では、局面を分析していきましょう。
 なくなった駒は白がQSSPの4枚で、黒はQRBSSPPの7枚。白はc8,d3,f3,f8の4ヶ所で駒取りをしており、一方黒はPf5が2枚駒取りをしています。黒Bg8が成駒なのも明らかで、ここでも1枚駒取りがありますね。
 #2という条件より現在白番ですが、では直前の黒の着手は何だったのでしょう?少し考えてみれば、-1.Kc1xBb1 Bc2-b1+と戻すほかないことがすぐに分かります。これで黒側の駒取りは全て判明しました。
 白Bのうち1枚は明らかに成駒であり、これが生じたのは白桝であるg8なので、白Pはg-h筋で2枚駒取りをしています。また、白Pd3,f3がそれぞれc,e筋のPだったことも分かりました。

           (1.0手戻した図?)

 しかし、よく考えてみると、この図では更に-2.Kb1-c1 Bd1-c2+...と戻すことになり、これを繰り返すだけでは埒があきません。白の駒取りはまだ1枚の猶予があるので、白Bで取りを戻す必要があります。
例えば下のような図なら、-2.Sa3-b1 Ph6-h7...と局面をほぐすことができますね。(尚、黒駒の戻し方は一意ではありません。例えばd1で黒Sを取る逆算も可能です)

 さて、ここからが本番です。現在g8にいる成Bが生じたのはb1ですが、この黒Bをb1まで運ぶことは可能でしょうか?g8とb1を結ぶルートは1本しかありませんが、その途中には白Bが挟まっています。
 分岐のない一本道なので、この白Bと黒Bがすれ違うことは非常に困難です。途中で白桝にあるPを戻せればよいのですが、いずれもillegalとなります(例えば、Pg6xf5と戻すと、白の方の成Bを戻せなくなってしまいます)。黒Bより先に白Bの成を戻せたらそれでも良いのですが、やはり同じ理由でこれもまた困難なのです。では、これらの成を戻すにはどうすればよいのでしょうか?
 この解決法は一つだけしかありません。即ち、Rh1が動いてh1を空けることで、一時的な避難場所を作ることです!よって、白のcastlingは不可能であることが示されました。

 あの世界のHashimotoも絶賛している、Caillaudの代表作の一つ。白Rが不動ではあり得ないことを2枚のBの相互干渉を利用して示すという、独創的な構成が美しいですね。

(31) Michel Caillaud(Orbit 15, 2002)

Proof Game in 14.0 moves (15+14)

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