第4回透明駒解答選手権(解答・解説)前編

 ごく一部のマニアに好評を博している(←ほんとか?)透明駒解答選手権、第3回に引き続き第4回も「透明駒+フェアリー」で10題揃えてみました。「何故そんなヤヤコシイのばかり作るのだ?」と思われているかもしれませんが、これには一寸した理由があるのです。今回でこの選手権も最後なので、そういう裏話もしておきましょう。

 御存知の方もいらっしゃると思いますが、実は来年「透明駒入門」という本の出版が予定されています。しかし、透明駒を含む作品は発表作自体がまだまだ少なく、更にフェアリールールを加えた作例となると殆どないに等しいというのが実情です。私は「透明駒+フェアリー」のセクション担当になったのですが、このままではとても原稿を書けそうにありません。そこで、去年の今頃からそういうタイプの作品を作り始め、そのお披露目の場として思いついたのがこの透明駒解答選手権だったという訳です。
 容易に想像できると思いますが、透明駒の創作で一番大変なのは検討です。実際に透明駒を作った経験がある作家なら、ここで全員大きく頷いてくれることでしょう。いくら手を読んだところで全検にはほど遠く、どれだけ巧妙にロジックを設定しても予想もしていなかった余詰筋がいくらでも出てくるのが透明駒です(そういう筋を指摘され、バッターボックスに入って構えていたら背中の方からボールを投げられたような気分になることがよくあります)。勿論、作者が全てを把握しているというのは理想ですが、私のように検討力が皆無の作家にとっては、できるだけ多くの人に見て貰うのが一番完全検討に近い気がします。
 もう一つの理由は、リアクションの速さです。普通に雑誌に投稿して、それが採用され、更にその結果稿が載るとなると、投稿してすぐに採用されたとしても数ヶ月~半年、長いと1年以上もかかってしまいますが、「透明駒入門」の原稿は年内〆切なのでそんな悠長なことは言っていられません。でもこの方式だと、作品さえ作れば発表から10日もすれば結果稿が出せます。この解答選手権を始めてから、「作品を雑誌に投稿し、辛抱強く掲載を待つ」ということができない体質になってしまったのは、思わぬ副作用でしたが(笑)。
 ようするに、この解答選手権は表向き透明駒の普及を目的としながらも、「透明駒入門」用作品の検討会を兼ねており、従って参加してくれた方はみな解答(検討)という形で「透明駒入門」のお手伝いをして下さったことになるのです。これまで参加された全ての解答者の皆様には、心よりお礼申し上げます。有難うございました!

  随分前置きが長くなってしまいましたね。では、今回の解答選手権の解答・解説に移りましょう。スターターはいつも通り、レトロ入りの1手詰です。

           1

1 安南協力詰(1手 透明駒0+1)

           安南協力詰 1手(透明駒 0+1)

28桂成(X=16玉)迄1手詰。

☆一見先手玉に三重王手がかかっているように見えますが、本当に王手をかけているのは17桂です。勿論この王手をかわして38玉(39玉)としても1手詰どころか王手にすらなりませんから、桂の利きを消す為に後手の透明玉が16にいることに気付くのは容易でしょう。

          (16玉を加えた図)

1-1 安南協力詰(16玉を追加した図)


☆本当の問題はここからです。16に玉がいる場合、17桂は玉の利きになりますから、26馬や26とでは同桂と取られてダメ。では、15とが正解でしょうか?
☆ここで、レトロ解析の登場です。現在先手番だとしたら、直前の着手は後手だった筈。では、それはどんな手だったのでしょう?
☆たとえば18銀だったとすると、既に19とで王手がかかっていたことになりますね。他の駒を戻したときも同様です。そして19とは戻せません。以上より、直前の後手の着手は存在しませんから、現在先手番ではない、つまり後手番ということになります。お分かり頂けたでしょうか?
☆驚いたことに、正解者はたったの3名。「拙作の1手詰はレトロ」というのは、本選手権における常識になっているとばかり思っていましたが…。レトロはまだまだ普及が必要なようです。

ほっと-後手16玉は確定なのだが、先手番では不可能局面。
占魚亭-レトロ解析で手番が確定。3重王手に見える初形に少し混乱。 詰上りは3重王手に見える両王手。
神在月生-王手消し 玉の隠れ家 見つけたり
☆見つけたところまでは良かったんですが…。
☆通常、将棋におけるレトロの手番問題では、一方の配置が玉だけというのが多く、あってもプラス1枚程度なのですが、安南を用いるとそれをもっと増やせるということに気付いたのが創作のきっかけでした。

           2

2 マドラシ協力自玉詰(2手 透明駒1+2)

           マドラシ協力自玉詰 2手(透明駒1+2)

21角、X(=32角)迄2手詰。

☆初手21角が、透明マドラシ特有の手です。これが王手ということは11と31に飛(又は龍)がいることになりますね。更に、これがセルフチェックでないことから、12-14の間に玉方透明駒が1枚挟まっていることも判明します。
☆2手目はこの遮蔽駒が動いて王手を受けた筈ですが、それには14角が32に動くしかありません。これによって21角も石化し、もはや先手は王手を受ける手段がありませんからこれで詰となります。

          (詰め上がり図)

2-1 マドラシ協力自玉詰(詰め上がり図)


ほっと-実は一番難しかった。
☆ほっとさんがこれで悩まれるとは意外でした。
まゆしぃ-初手で2枚可視化するのがマドラシをうまく活かしている。
NZ-22歩が効率の良い配置。
☆22歩は、2手目に13透明角が31透明飛を取る筋や11透明龍が22龍とぶつける筋、及び3手目に31透明龍が22龍とぶつける筋を消しています。

           3

3 背面協力詰 3手(透明駒0+1)

           背面協力詰 3手(透明駒0+1)
          *余詰

43桂、42玉(X=44角)、41桂迄3手詰。

☆上記の順が作意だったのですが、56桂、X、51桂迄の余詰順を答えられた解答者が殆ど。「44・64を抑えるには56桂を発生させればよい」というのが、一周回って盲点でした(笑)。
☆それでも2名の方が、作意順を見つけてくれました。
占魚亭-基本の詰み形。2手目で受方の透明駒が角であることを確定させる。
一乗谷酔象-桂になった玉の利きを考える。

☆尚、作意自体はほぼ玉位置に関係なく成立するので、下にスライドさせるだけで修正できている筈。

          (3の修正図)

3-1 背面協力詰 3手(透明駒0+1)修正図

           背面協力詰 3手(透明駒0+1)

(明日に続く)

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