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プロパラを振り返る(165)

 今日読んでいるのはプロパラ80号(October-December 2017)。この号に載っている拙作について、少し詳しく解説してみたい。

(324)高坂 研 (Problem Paradise 80, 2017)

324 高坂 研(将棋プルーフゲーム 12手)

           プルーフゲーム 12手

 まずは手数計算から。先手は76歩・36歩・37桂・29飛で少なくとも4手指しており、一方後手は82飛が32-37-26と動いたことが容易に予想できる。このコースを辿ったとすると36歩は37飛成の後に打った駒であり、その後26龍、37桂、---、29飛、---と進んだことも明らか。つまり、後手は6手目迄に37飛成と指さないと間に合わないのだ。
 以上のことを念頭において、序を考えてみよう。例えば、次のような手順はどうだろうか?

 76歩、32飛、33角成、同飛

324-1 4手目同飛の局面

           (4手目同飛とした局面)

 この5手目の局面でもし先手が1手パス出来れば、予定通り6手目37飛成以下の手順に入ることが出来る。しかし、この局面で先手が何を指してもかえって配置を乱してしまい、12手で出題図に到達することは不可能。つまり、先手には適切なtempo moveが必要なのだ。
 そこで後手は、3手目33角を取らないことで、先手にtempo moveを与えようとする。76歩、32飛、33角生、52玉、51角生ならどうだろうか。角生とすることで6手目37飛成が可能になり、如何にも作意らしいのだが…。

324-2 5手目51角生の局面

          (5手目51角生とした局面)

 ところが、これでもダメなのだ。何故なら、6手目以降は37飛成、36歩、26龍、37桂、51玉、29飛が必然となり、11手で出題図に到達してしまうからだ。今度は後手にtempo moveが必要となってしまった。だが、この解決策はもうお分かりだろう。正解は、以下のようになる。

76歩、32飛、33角生、52玉、42角生、37飛成、36歩、26龍、37桂、42玉、
29飛、51玉迄12手。

 5手目51角生ではなく42角生とするのが主眼手で、これにより後手玉が51-52-42-51と小さな三角形の軌跡を描くことが可能になる(プロブレムでは、これをtriangulationと呼ぶ)。
 纏めると、「42角生は『tempoの為のtempo』になっている」というのが作者の主張である。ご理解頂けただろうか。

 プロブレムの方では、白黒双方にtempo moveがあるだけならそれほど珍しくない。しかし、双方のtempo moveが有機的に絡み合った構成のものは殆どない筈である。そういう希少な例を、参考までに挙げておこう。

(324-a)Michel Caillaud (U.S.Problem Bulletin 07-10/95)

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           Proof Game in 16.0 moves (14+13)

1.f3 h5 2.Kf2 Rh6 3.Ke3 Rg6 4.Kd4 Rg3 5.hxg3 b6 6.Rh4 Bb7 7.Re4 Ba6 8.Re6 dxe6+ 9.Ke4 Qd6 10.Ke3 Qa3+ 11.bxa3 Bc8 12.Bb2 a6 13.Bf6 gxf6 14.Kf2 Bh6 15.Ke1 Bf4 16.gxf4 f5
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 これまでプロパラの作品について好き勝手に書いてきたが、ここら辺で一旦休憩とさせて頂きます。来週からはOrthodoxとHelpについて書く心算。乞御期待!

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