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Michel Caillaud, The chameleon composer(8)

No.11 Michel Caillaud (Problem Paradise 2013, Special Prize)

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           H#10 (13+8)

1.Rxg7 Bf1 2.Rg8+ Qg7+ 3.Rxg7 Rg2 4.Rg8+ Rg7 5.Rxg7 Rg2 6.Rg8+ Rg7 7.Rxg7 Bc4 8.bxc4 Sb3 9.c3 Sc5 10.c2 Sxd7#

 これもまた、他のジャンルからアイデアを移植した例である。時間的な制約の下、黒のバッテリーが駒取りを繰り返すというのは、クラシカルレトロにある手順にヒントを得ている(例えば、A.Frolkin, L.Lyubashevski (Shakhmaty v SSSR 1987) Special Prizeなど )。

注3 文中で言及されているのは以下の作品である。
Andriy Frolkin, Leonid Lyubashevsky (Shakhmaty v SSSR 1987, Special Prize)

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           Release the position (9+12)

Retract : 1.Sf6-g8 Rg8xSg7! 2.Se8-g7 Rg7-g8+ 3.Sd7-f6 Rg8xBg7! (Rg8xQg7?) 4.Bd4-g7 Rg7-g8+ 5.Bc6-a4 Rg8xQg7! 6.Qe5-g7 Rg7-g8 + 7.Bg2-c6 Rg8xRg7! 8.Bf1-g2 Kg4-h4 9.g2xBh3+ …

 なくなった駒は白がQRRBSPPの7枚で、黒はQRBSの4枚。白の駒取りはe7,h3,h7のPによるもので尽きている。従ってa-b筋の白Pはいずれも直進途中で取られており、白は成駒を作っていない。即ち、取られた駒は全てオリジナルのものである。ということは、黒Kを解放するためには、白はBa4をf1に戻してからPg2xh3とするしかない。しかし黒はRg7以外に動かせる駒がないから、Rg7をg8に戻すときには必ずuncaptureしなくてはならない。そのことが分かれば、作意手順自体は容易に発見できるだろう。
 上手くできているのはQとBの限定の仕方だ。先にQを戻してしまうとQの移動先がe5しかなく(他はチェックをかけてしまいillegal)、Bを戻せなくなってしまう。最後、Bf1としてPh3の取りを戻せば、白Rh1はここから出ることなく取られたことになり、これで駒取りの収支も完全に合う。レトロ版AUWとでもいうべきか。

No.12 Michel Caillaud
(Marco Bonavoglia 60 Jubilee Tourney 2014, 1st Prize)

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           Proof Game in 12.5 moves (15+14)
           2sols.

1.c4 d5 2.Qc2 d4 3.Qxh7 d3 4.Kd1 dxe2 5.Kc2 e1=Q 6.Sf3 Qe5 7.Kd1 Qg3 8.Qc2 Rh4 9.hxg3 Rg4 10.Rh5 Sf6 11.Rc5 Sd5 12.Ke1 f6 13.Qd1

1.e4 Sf6 2.e5 Sd5 3.e6 f6 4.exd7 Kf7 5.Sf3 Qe8 6.d8=Q h5 7.Qd6 h4 8.Qg3 hxg3 9.hxg3 Qd8 10.Rh4 Ke8 11.Rc4 Rh4 12.Rc5 Rg4 13.c4

 一瞬の閃きによって生まれる作品もあれば(それらを仕上げるためには幾らかテクニックは要るのだが)、長年の作業の結果漸く生まれる作品もある。これはそうした作品の例である。このアイデアは、他の作品(Prize, Good Comparison, 2002)を作った後に思いついたものだ。共同作業の過程で、Natch(Pascal Wassongがプルーフゲームを解かせるために作ったプログラム)が、その作品の根本的な余詰(作者は黒側のCeriani-Frolkiを意図していたのだが、白側のCeriani-Frolkinも成立していたのだ)を見つけ出した。私はこのアイデアを、他の作品でも用いてみたが(Problem Paradise 2002-03, 1st Prizeなど)、スイッチバックのエコーを含む完全な手順の実現には数年かかった。最初の解では、黒の成Qがg3で取られ、白のKとQがスイッチバックしている。対照的に、2番目の解では白の成Qがg3で取られ、黒のKとQがスイッチバックしている。


注4 文中で言及しているのは以下の作品である。

Michel Caillaud (Problem Paradise 2002, 1st Prize)

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           Proof Game in 12.5 moves (14+15)
           b)Pg6→g5

a)1.h4 d5 2.Rh3 d4 3.Ra3 d3 4.Ra4 dxc2 5.d4 e6 6.Bh6 Ba3 7.Kd2 c1=B 8.Kc2 Bg5 9.hxg5 Qd6 10.g6 hxg6 11.Bc1 Rh5 12.e3 Rc5+ 13.Bc4
b)1.c4 e6 2.c5 Qh4 3.c6 Ba3 4.cxd7+ Kf8 5.d8=B Qxh2 6.Bg5 Qd6 7.Rh4 h6 8.Ra4 hxg5 9.d4 Rh3 10.Kd2 Rc3 11.e3 Rc5 12.Bc4 Ke8 13.Kc2

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