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チェスプロブレム世界大会参加記(2012年)その1

 調べてみると、若島さんが世界大会の日本開催決定をtwitterで速報されたのが去年の8月26日。最初は22日から29日ということだったが、何らかの理由で一週間早まったために、ほんの数時間だけだが運良く世界大会に参加することができ、夢のようなひと時を過ごすことができた(これが元の通りだったら中学・高校の定期テスト期間と完全に重なってしまうので、流石に参加は無理だったろう)。残念ながらこのイベントを体験することができなかった皆さんのために、思い出せる範囲で世界大会に関することを書き綴ってみたいと思う。

 悲しいことに私には、仕事をほっぽり出して一週間まるまる参加できるほどの時間的、金銭的余裕はない。長くてもせいぜい2日が限度だが、では何日に参加するのが一番いいのだろうか。まずこれが、参加前最大の難問だった(世界大会とはいえ、できれば知った人や懐かしい顔が多く見られる日がいいしね)。実は7月の全国大会の時に同じ質問を上田さんにしたのだが、「最後のbanquetに出ればいいんちゃう?」というのが御神託だった。でも、それまで何一つ参加していないのに、そしらぬ振りをして最後の宴にだけ顔を出すというのは人間としてどうなのか?その点が気になり、旅行日程を決めかねていた。
 しかししばらくすると世界大会の公式サイトにプログラムが発表され、この問題はあっけなく解決した。そこには「18日夜、レクチャー(上田吉一、橋本 哲)」とあったのだ。はい、もう行くならこの日しかないでしょ。多分、私以外の詰キスト兼プロブレミストも集結する筈だし。そして、この読みは当たっていた。

 台風の影響で18日の近畿地方は午後にかけてだんだんと雨が強くなっていたが、3時前に神戸の宿にチェックインし、すぐに会場となる神戸商工会議所に直行する。着いたのは4時半ごろだったか。参加費を払って、その場で上田さんと橋本さんの作品集を購入。これでもう目的の1/3は達成した。会場に入ってみると、ちょうどどうぶつ将棋でのプロブレムの創作競争の表彰式をやっている最中だった。そこで、世界のHashimotoはじめ数名の詰キストと会った。特に菊田氏とは十数年ぶりの再会だ。でも殆ど昔と風貌が変わっていないなあ。氏には色々とロシアの話を伺った。
 ところで肝心のレクチャーは何時からなのかと尋ねると、8時かららしい。何でそんなに間延びしたプログラムになっているのかよく分からないが、(全国大会なら、6時過ぎにはもうアルコールが入っているところだ)それまで特にすることもなく、犬田らと取りとめのない会話をする。そこへ若島先生が登場し、「会議の間に作品を作ったんだ」といって(そんなことしていいのか?)レトロの問題を出してくる。しかもルールはマドラシである。私も菊田氏も考えてはみたが、15分くらいかけても解けず。彼でも解けないものを私が解ける筈もない。4つの駒取りのうち最後の2つしか分からず、そこから延々唸っていたら、若島先生は作意を解説し自分で余詰を見付けて去って行った。相変わらずスゴイ人だ。それから「これ、預かっておいて」といって、瓶に入ったウォッカを置いていった。もしかして、これは解けなかった罰なんだろうか?

 そのうち小林さんがいらっしゃって、一緒に食事に行かないかと仰る。勿論OKして、みんなで近くの中華料理屋に入る。食事をしながらあれこれ話をしていると、そのうち外人さんが4人(全員明らかに世界大会参加者)入ってきた。そして、そのうちの一人はあのCaillaud!思わずビビるが、小林さんが「朝会うと向こうから握手してきたりして、とてもフレンドリーな人だよ」と教えてくれた。でも、そうと分かっても、やはり外人さんとの初対面は緊張してしまうなあ。ましてや、相手はあのCaillaudだよ。今回この世界大会に参加した目的の一つが「Caillaudと会うこと」だったのだが、この後本当に彼に挨拶したり、名刺を渡したり、ましてや握手したりできるのだろうか?食事を終えた後、一抹の不安を抱えながら会場へと戻る私なのだった。
(明日へ続く)

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