L.Ceriani レトロプロブレム傑作選(39)
(39) Luigi Ceriani (La Genesi delle Posizioni 1961)
なくなった駒は黒がQRBPPの5枚で、白は1枚も取られていない。また白側の駒取りはb5,c7,e4,g6の白Pによるものが4枚、また、白Sd8は最終手で黒駒を取っている筈だから、白側の駒取りはこれで尽きている。これより、a筋及びd筋の黒Pは成っていることも分かる。
Pの駒取りの順序を考えると、最初に戻さなくてはならないのはd筋の方の黒Pだ。このPの成りを戻してPd4-d3とできれば、その後はPd3xe4とすることで以下局面をほぐすことができる。ではこれを目標に逆算してみよう。
d8に戻す黒駒は、その後d8-e8と往復することで手待ちをする必要があるのでQかR。しかし、これを開放するためにはe8に何か遮蔽駒を入れなければならず、それは白K以外ない。このことから、戻される黒駒はRに決まる。
Retract: 1.Sb7xRd8 Re8-d8
(図1)
ここですぐに2.Kd1-e1?とはできない。何故なら、2...Rd8-e8がillegalとなるからだ。白Kは、黒Rがd8にいるときにKd1-e1とチェックをかけられにいかなければならない。ということで、時間調整のために右下でtempo moveを行うことになる。
2-8.Ke1-f1-g1-h2-h1-g1-f1-e1 Rd8-e8 9.Kd1-e1
(図2)
このタイミングでe1を脱出する。すると次なる目標点がc5であることが自然と見えて来る。勿論、ここも最短距離で突っ走ろうとしてはいけない。敢えて1手無駄手を挟むことで黒Rをd8に呼び込んでおいて、Kc5-d6と突入する。e8はもう目の前だ。
9...Re8-d8+ 10-16.Kc5-b6-a5-a4-b3-b2-c2-d1 Rd8-e8 17.Kd6-c5
(図3)
勿論、ここからも一手無駄手を入れる。白Kがe7まで来た瞬間にとうとう黒Rはお役御免とばかりにd1に飛び込む。後は予定通り、黒Pd4の形を作るだけだ。
17...Re8-d8+ 18-21.Ke7-f6-f5-e5-d6 Rd1-d8!
(図4)
黒RがunpromotionしてPd4となるにはあと3手かかるが、白はc筋とf筋のPを待ち手として使えばよい。これでとうとう、Pd3xe4と戻すことができた。
22.Ke8-e7+ Pd2-d1=R 23.Pf2-f3 Pd3-d2 24.Pc3-c4 Pd4-d3 25.Pd3xSe4
(図5)
これでもう本質的な部分は解決したが、局面を完全にほぐすにはもう少し時間がかかる。ここでuncaptureした黒Sをd8に挟み込むことで白Kを開放し、2枚の白Rをずらすことで、黒も手に困ることがなくなった。後は黒Sd8をa1でunpromotionしてa5まで戻し、白Pa4xb5とすることで、漸く局面をほぐせたことになる。
25...Sc5-e4 26.Pd2-d3 Se6-c5 27.Pc2-c3 Sd8-e6 28.Ke7-e8 Pd5-d4 29.Re8-f8 Pd6-d5 30.Rf8-g8 Rg8-g7...
テーマは勿論、白Kによる多重tempo。同様の構想を持つ作を、参考までに引用しておこう。
(39-a) Luigi Ceriani (problem 41-44 03/1957)
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