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楽しいレトロプロブレム(4)

(3) Michel Caillaud(The Problemist 1995-1996)

Proof Game in 6.5 moves (16+15)
b)7.5 moves

 a)では黒の着手はPが1手、Sが4手の計5手。よって、黒の猶予はあと1手だけ。すると白は、Sg1がd7まで出かけて黒Qを取り、g1に戻る(switchback)という順がすぐに目につきます。即ち、a)1.Sf3 d5 2.Se5 Qd7 3.Sxd7 Sc6 4.Se5 Sd4 5.Sf3 Sf5 6.Sg1 Sh4 7.f3が作意です。こちらは素直ですね。では、b)はどうでしょうか?
 b)では、a)と同様の順は成立しません。実際、この図では白Sだけ、あるいは白Sと白Kの両方をいくら動かしてみても、7手消費することはできません(各自御確認下さい)。つまり、tempoを失うことができないのです。
 ここから、次の二つの事実が見て取れます。

(A)白Sが動いた後で初形位置に戻ると、必ず偶数手かかる
(B)白Kが黒桝のみを踏んで動いた後で初形位置に戻ると、必ず偶数手かかる

 特に(A)の方は、より拡張した

(A-1)Sの移動回数の偶奇性(parity)は、桝目の色のみで判定できる

という形でよく知られています。これはレトロ解析において非常に重要な原理ですので、是非御記憶下さい。

 さて、(B)より、白Kがtempoを失うためには一度白桝を踏む必要がありますが、どの白桝を踏んでも最低7手かかってしまいます。従って、b)では白Sは不動で、白Kが黒Qを取りつつtempo moveしている訳です。後は簡単な試行錯誤によって、解を見つけることができる筈ですが…。
 b)の作意は、1.f3 d5 2.Kf2 Qd6 3.Ke3 Qf4 4.Kxf4 Sd7 5.Kg4 Se5 6.Kg3 Sg6 7.Kf2 Sh4 8.Ke1となります。軽作ながらも、黒Sの軌跡の限定の仕方などにはCaillaudのセンスの良さと抜群の創作力が窺えますね。

(4) Walter Freiherr von Holzhausen (Akademische Schachblätter 1901)

#1 (5+2)

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