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楽しいレトロプロブレム(33)

(32) Lothar Finzer (Die Schwalbe 29 10/1974)

S#2  b)H#2 (7+12)

 Selfmateでは白から指し始めることになりますが、では直前の黒の着手は何だったのでしょう?もしcastlingが可能だとすれば、直前の黒の手はPc7-c6又はPd7xc6しかありません。しかし、前者だと白Kが黒陣に潜り込むルートがありません。では、後者ならどうでしょうか。実はこちらも不可能局面なのですが、その証明には少々込み入ったレトロ解析が必要となります。
 まず、黒の駒取りを確認しておきましょう。黒はb,c筋の4枚のPで8枚の白駒を取っていることになります。また、黒Ba6が成駒であることも明らかですね。この黒Bは、g筋の黒Pがf1かh1で成ったものですね。この際にも1枚駒取りがありますから、黒の駒取りはこれで尽きています。すると、黒Pa4は駒取りをしていませんから、白Pによりa,b筋で2枚の駒取りがあったことが分かります。更に白は黒Bc8も取っていますから、全部で3枚の駒取りが判明しました。
さて、ここでg筋の白Pに着目しましょう。このPもまた黒Pに取られている筈です。するとg筋の黒Pとすれ違う為に1枚駒取りをしなければならないので、白側の駒取りもこれで尽きています。するとこの白Pはf8で成ったことになりますが、黒Kにチェックをかけずに成ることは不可能です。これより、黒のcastlingが可能だとすると、直前の黒の着手が存在しないことが示されました。従って、黒のcastlingはillegalです。これより、a)の作意は 1.Qc7 Kf8 2.Qf7+ Kxf7# (1...0-0+? but illegal!)となります。

 では、b)ではどうでしょうか。Helpmateは黒から指し始めますから、直前の着手は白ということになります。よって、白がPd4-d5と指してこの局面に至ったと解釈すれば、黒の0-0は合法ということになりますね。従って、b)の作意は1.0-0+ Qd8 2.Kh8 Qxf8#
となります。

「ルールが違うと手番も違う」という、言われてみれば当然の事実をcastlingの可否に巧く結び付けた作者のアイデアが素晴らしいですね。

(33) Michel Caillaud (Messigny 06/1995, 1st Prize)

Proof Game in 16.0 moves (16+13)

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