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楽しいレトロプロブレム(38)

(37) 橋本 哲 (Problemesis 12/1999, 2nd Prize)

Proof Game in 12.0 moves (15+14)

 なくなった駒は白がP1枚で、黒はQPの2枚。また盤面配置を作るのに白は5手、黒は(castlingをしても)10手。更に、白Pf6が同じ筋の黒Pを取っているのも明らかですから、これでも1手かかります。すると、黒の猶予はあと1手しかありません。
 黒がcastlingをする為には、黒Qをどかす必要があります。しかし、例えば白がBやSで黒Qd8を取りに行くのはいずれも手数オーバー。黒Qは1手動いてから白に取られたのです。これで黒の手は12手ちょうどになりました。従って、直進途中のd筋の白Pを取れる黒駒はありません。これより、この白Pがc7で黒Qを取り、更に成っていることが判明しました。

 ではここから、実際に駒を動かしてみることにしましょう。序は、1.d4 Sc6 2.d5 Sa5 3.d6 c6 4.Qd5 Qc7 5.dxc7 d6 6.Qh5 Be6となりますね。

           (6.0手目の局面)

 さて、この後黒のcastlingを邪魔しないためには、何に成ったらよいでしょうか?
 勿論それはBです。6.0手目以降は、7.c8=B Bb3 8.Bh3 b6 9.g4 0-0-0と展開します。成ったばかりのBを最遠移動し、Pg4とすることでc8への利きを消す訳です。

           (9.0手目の局面)

 更にこの後は、10.g5+ f5 11.Pxf6 e.p.+ Kb7 12.Bc8+ Rxc8となって出題図に到達します。en passant captureした後、h3に引いた成Bを再度c8に放り込んでフィニッシュ!実に見事な幕切れではありませんか!
 Valladao themeを僅か12.0手の中で表現した、作者の代表作。単に条件を満たしたというのではなく、それぞれの要素(castling, en passant,そしてpromotion)が有機的に作用しあっている点が素晴らしいですね。

(38) Julio Alberto Pancaldo (feenschach 01-03/1977)

H#2.5 Grid Chess (11+12)
b)Orthodox

Grid Chess:「着手は双方とも、必ず盤上に引かれた太線(=grid)を跨がなくてはならない」という制限を加えたチェスのこと。

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