オットー_ネーベル

【ある作家へ】

「相撲は土俵があるので行える。前提知識が乏しい者に説明する場合、土俵の形成が必要である」
これはこれで真理だと思いますが、固執することはないように思います。
名作は一般的理論からの例外のほうがはるかに多いので……
小説の本質はただひとつ、「自由」ということだけです!!

私は脚本がいまのところ本職なので
演劇の感覚からも強く思うのですが、
観客・読者をひきつけるのは設定そのものではなく、
そのなかでのキャラクター同士の関係性、事件なのです。

まったく状況が分からなくても、登場しているキャラクターの
いがみ合っている、仲がいい、愛し合っている、敵意を持っている、
などの関係性が分かればふつうに楽しめます。
また、印象的な事件はそれ自体、スリルがあって先が気になります。

エヴァンゲリオンなど、細部はよく分からなくてもおもしろいではありませんか。
設定は、キャラクターを生かすために適宜効果的に示すべきもので
まず設定を説明する、ということを最優先しなくてもいいと思います。

文章表現についてですが
おそらく文学的レトリックめいたものが「うまい文章」であるという
固定観念が読者や作者にあるのではないでしょうか。
私は叙事的で正確、簡潔な文章がダメだとはぜんぜん思いません。むしろ壮大なファンタジー、歴史絵巻には非常に合致した作風だと思います。

独創的な比喩が効果的なこともありますが、「うまい文章」と言われたくて
文学っぽさをマネする必要はまったくありません。

お悩みの点を知って、
作品を読んだときのややぎこちない印象が理解できたように思います。
再度、小説の本質を申し上げますと
「自由」
ということにつきます。

書きたいように書いて、
自分にウソをついていなければ大丈夫です。
それが名作の条件だと思います。

ご健筆を!

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