【書籍紹介】「関さんの森」の奇跡

 私が大学院で里山の研究を始めた頃に出会った里山の保全活動の一つで、道路問題で行政と対立し、都市の中で貴重な里山を残せるか厳しい状況にありました。大学院卒業後に行政代執行(強制収容)手続きにあたり、関係者に応援要請の手紙が届き、私自身も都市計画法についてかなり学びました。

 苦肉の策で道路を迂回させて、それを暫定道路として行政代執行を回避し、できる限り一塊のみどりを残す提案を一緒に参画した教授と共に模型図なども作成して提案しました。

 私自身は地域から便利な道路を通さない煙たがられる団体とならないように、接点を増やす戦略としてエコミュージアムを提唱して、約款の作成もお手伝いいたしました。私が手伝えたのは当時の市長が翻意し代執行をひとまず取り下げると宣言するところまででした。その過程でも投票率や議会の派閥などから逆算して署名に必要な筆数を算出して、可能性を少しでも高めることが多少は効果があったように思います。

 その後は外部で連携していた行政との調整に有力な外部団体の方が辛抱強く交渉してくださったと会報にありました。活動は関さんの森を守る活動だけではなく、古文書の会など幅を広げ、その文化的な価値をより広めているように思います。そうした長年の結果として昨年に議会から暫定道路を正式な都市計画道路として認める形に結実したそうです。

 都市計画を曲げることは非常に難しい作業です。その線引きはある程度合理性を持ち、市役所、県、省庁と稟議をあげて決定されているもので、住宅開発もそうした都市計画に基づいて将来を予測して販売され、住民も期待して居住していることもあります。そうした中で、道路線形にこだわらない住民意識を発掘し、曲線で通過させることは本当にぎりぎりの判断だったと今でも思います。森を守る方々にとって決して100点ではないですが、これが今後の都市計画のあり方を考えるきっかけになれば良いなと思います。

 これから購入して改めて振り返りたいと思います。


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