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iPadは再びデジタルペンの混沌へ向かうのか

iPad用デジタルペン(スタイラス)といってもさまざま

 いつの時代も混沌の中のデジタルペン。iPadに関していえば、ご存知の通りiPad Proだけでなく、2018年以降の普通のiPadでもApple Pencilが使えるようになりました。

 2年前にはこんな記事がありました。以下の記事はスマートフォンのデジタルペン(記事では「電子ペン」)について書かれています。でも以前の私もそうでしたが、この記事だけではデジタルペンを使おうと思っても、まだ心許ないと思います。

私がそうだったように、これからiPhone・iPadを使われる皆さんが最初に直面するであろう疑問は、デジタルペンの種類がいろいろあり過ぎて一体どれが良いのかわからない、ということだと思うからです。

アップルも前CEOの故スティーブ・ジョブズ氏は2007年の新製品発表会で「Who wants a stylus?(誰が電子ペンなんてほしいの?)」と発言するなど否定的だったが、2015年にはiPad Proの周辺機器として「Apple Pencil」を発売した。将来的にはiPhoneで使えるようになるとの見方もある。アップルが対応すれば、中国スマホメーカーも追随する可能性が高く、普及が一気に加速するかもしれない

 少し昔前と違って今はデジタルペンに関する情報も格段に多くなっています。私はデジタルペンなんて呼んでいますが(そもそもデジタルペンという呼び方が良いのかどうかもありますが)、以下の別の記事では「タッチペン (スタイラスペン)」などと呼んで、ペン先に注目していくつかに分類しています(私はスタイラスという呼び方はしません。その理由は後ほど)。

ペン先が丸いタイプ
ペン先が細いタイプ
ペン先が筆タイプ
筆圧感知タイプ

 丸いタイプのペン先は感度が良いシリコンゴム製で指の代わりにタッチしたり幅広い用途に使えます。
 導電性繊維製のペン先は滑らかな書き心地が良いのが特長です。これらのデジタルペンは電池を使ったりしないので手軽に持ち歩けますし、比較的安価です。あとはペン先が見やすい透明ディスクのタイプも最近は安価になっています。
 一方、指で描くよりも小さい文字が書ける樹脂製のペン先のタイプとなると、結構値段が上がって来ます。このタイプの極め付けはApple Pencilで1万円以上します。ただし、Apple Pencilと互換性のあるiPad専用デジタルペンとなると、Amazonでは3000円前後の製品が多く見られます。これらのタイプは電源が必要となるので、ペンというよりもiPadの周辺機器みたいな感じであり、その分高価になります。

デジタルペンの使える度と価格は比例する

 前述の記事ではペン先から用途を想定することになりますが、実際に自分の買うべきデジタルペンはどれが適しているのかがわかるでしょうか。記事の中では「メモ書きや文字入力で使う」「ゲームを楽しむ」「イラストを描く」と3つに分けていますが、どれも安価なデジタルペンで試すことができますが、できるのと使えるというのは別物です。
 文字を入力したり、イラストを描く段階になると、利用者が望むレベルによって実はそのデジタルペンが使えるかどうかが異なってきます。実際のところ、デジタルペンが使えるかどうかは価格は比例します。自分が買うことができる価格のデジタルペンが自分の望むレベルの用途に合っていると思います。

 とりあえず現在はApple Pencilの性能と値段を頂点に、5千〜3千円代、指の代わりに使うような幅広い用途のものとなると千円前後から千円以下で選べると思います。
 デジタルペンの性能と価格になぜこのような幅があるかは、タッチを認識する方式の違いに理由があります。ペン先が細く、小さな文字が書けるタイプの製品は電源が必要となる一種の周辺機器のようなものですから、スタイラスよりも高価になります。2016年のこちらの記事では、デジタルペン(スタイラス)は次のように分類されています。

感圧式…ゲーム機などの液晶画面に採用されている。
静電容量式…iPhoneなどスマートフォンで利用され、マルチタッチに対応している。
静電発生式…電池によりペン先に静電気を発生させるので静電容量式よりもペン先が細くできる。
デジタイザー…電磁誘導方式、アクティブES方式、N-trig、Apple Pencilなど、ハードウェア的にいくつかの方式があり、液晶とデジタルペンが同じ方式に対応している必要がある。

価格的にデジタルペン=スタイラスではないと思う

 デジタルペンは「スタイラス」とも呼ばれますが、私がスタイラスという言葉を使わないで、デジタルペンと呼んでいるのは、デジタルペンは指やポインティングデバイスの代わりでなく、手書きで文字を書いたりイラストを描くことを主な用途にしている製品を指していると思っているからです。つまり、Apple Pencilなどはデジタイザーの仲間であると思っているのが理由です。

 スタイラスというと電源を伴わないプラスチックの棒みたいなイメージがあるので、あえてスタイラスは使わなかったりします。

  Apple Pencilが登場するまで、iPhone・iPad用のスタイラス・デジタイザーペンは用途と価格がわかりにくい製品でした。しかし、Apple Pencilが登場して、iPhone・iPadで使えるデジタルペンは再編された感じです。これはWindows環境でSurfaceでもいえることなのかもしれませんが。

Apple Pencil登場で再編されたデジタルペン

 当初Apple PencilはiPad Pro専用だったので、iPad専用のデジタルペンは特定用途でしたが、2018年以降は普通のiPadでも使えるようになり、利用者の裾野を一気に広げました。ただし、iPhoneではApple Pencilはまだ使えません。それがなぜなのかはAppleにしかわかりませんが、理由の1つはApple Pencilの価値を守ろうとしているのだと思います。

 普通のiPadでも使えるApple Pencilを第一世代だけにしたのも同じことなのかもしれません。Appleにとって、Apple Pencilはまだデリケートな製品だということなのでしょう。

 それでも、2018年以降の製品であれば、普通のiPadでもiPad Proでも使えるとしたサードパーティ製のデジタルペンシルは、AmazonなどでApple Pencilの半額以下の値段で多数販売されています。これらのサードパーティ製品が今後はiPadの手書きを普及させるのにひと役買うのだろうと思っています。これについては以下の記事に書きましたが、書いた後に気づいたこともあるので、それを次項に書こうと思います。


iPadとiPhoneで使えるデジタルペンを探す

 AmazonでiPad用のデジタルペンを眺めていて、2018年以降のiPad専用のほかにiPhone・iPad両対応があるのに気づきました。つまり同じような価格でも、Apple Pencil互換のデジタイザーでなく、iPhoneでも利用可能な静電発生式の製品を選ぶことができます。そこで視点を、iPad専用からiPhoneでも使えるかどうかに変えてみると、また違うものが見えてきました。

 これまでApple Pencilの精度を考えるばかりにiPad専用のデジタルペンを探していましたが、iPhoneとiPadを並べて使っているときに、iPhoneの画面もApple Pencilでタッチできたら便利かもと思うことがあります。今まではそう思うだけでしたが、サードパーティ製のデジタルペンまで視野に入れて探してみると、案外簡単に見つかりました。

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iPhone・iPad両対応のデジタルペン。デジタイザーではなく静電発生式か

 さらにもっと安い製品もあります。これは充電する必要がないことからiPhoneやiPadを指でタッチするのと同じ静電容量式と思われますが、この方式ならば両対応のデジタルペンを作ることは可能なわけです。ただし、問題になってくるのはその精度。つまりApple Pencil並みに細かい文字を書けるかどうかです。まあ、そこはAmazon。安いものなら人柱にでもなればすぐに確認できますが。

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iPhone・iPad両対応のデジタルペンは指でタッチと同じ静電容量式か

 もしもiPadだけでなくiPhoneでも使えて、Apple Pencilのように細かい文字も書けるのであれば、今後はApple Pencilのライバルになるかもしれません。反対にiPhoneでもiPadでも使える代わりに、Apple Pencilの使い心地を諦めなければならないのなら残念ですが、元々Apple Pencilを使っていなければ、サードパーティ製のデジタルペンでも十分かもしれません。またApple Pencilよりも安ければ諦めがつくこともあると思います。。
 AppleがApple Pencilの価値をコントロールしたいという考えもわかりますが、サードパーティ製品の隆盛はそれと真正面からぶつかっていくことになるような気がします(了)。



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