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手書きのiPadOS 14に来た「スクリブル」

iPadOS 14が登場しても日本語スクリブルはまだ先

 iOS 13からiOSはiPhone用、iPad用はiPadOSとなり、手書き入力するにはもうiPad Proでも普通のiPadでもよくなり、その代わりに手書き入力の主戦場はiPadOSになりました。そのiPadOSも14から本格的に手書き入力が「スクリブル」という名前で導入されるとのことです。

 でも、最初に登場する手書き入力は英語と中国語だけであり、日本語はその後ということになっています。WWDC2020以降、それ以上の手書きに関する情報は出て来ていません。その後、一般にも公開され始めたiPadOS 14のパブリックベータ版を見る限りもやはりその通りで、ひとまずiPadで日本語で手書きの時代が来るというのは、残念ながらお預けという感じです。

iPadOS 14について今わかっていること

 そうは言っても、パブリックベータ版には守秘義務があるので、私もここで「スクリブル」が使えると、ここがこうなってああなってと言えないので、「スクリブル」に関してはこちらの記事が詳しいです。

スクリブルは手書きだけのことなのか

 さて、iPadOS 14が登場するまで時間ができた代わりに、ここで「スクリブル」が登場してiPadはどういうふうに変わっていくか考えてみたいと思います。あれ?iPadは使うものであって考えるものではない、と思われるかもしれません。

 まあ道具というのはそういうものかもしれませんが、新しい道具が登場した時には、その道具がこれからどういうふうに使われていき、どのような道具になっていき、そして私たちの生活や社会がどう変わっていくかと見据えるのにちょうど良いタイミングだと思います。

「スクリブル」は漢字が書ける

 ヒントは、やはりiPadOS 14の「スクリブル」にあります。「スクリブル」は最初は日本語は使えないという話でしたが、「スクリブル」の機能そのものが使えないというわけではなく、日本語を認識しないだけです。つまり、今の「スクリブル」は手書き入力はできるのだけど、日本語が使えないだけなのです。だから、漢字は使えます。

 iPadOSの「言語と地域」を中国語を認識するように設定することで、手書きの漢字を認識することができます。手書きの漢字を認識するしくみは、ソフトウェアキーボードなので、漢字入力だけでよいのなら「○体中国語ー- 手書き」という中国語入力を有効にしておけば、漢字と、標準の英数字だけは手書きで入力できるようになります。

キーボードをぞんざいに扱ったMac

 そうはいっても、日本語でローマ字入力したいときにアルファベットが入力されたら、普通はそれは使えないキーボードってことになります。それでも、まったくキーボードが使えないわけではありません。

 たとえばMacでいえば、日本語入力は文字入力はできなくても、矢印キーやコマンドキーは使えるので、簡単な文章の編集はできます。さらにマウスやトラックパッドがあれば、かなりなことができそうです。
 まあ、長生きをしていると、日本語が苦手なMacも知っていたりするわけですが、Macはキーボードの扱いがぞんざいなのは、今に始まったわけではなく、その昔IBM PC ATに代表される当時の仕事用パソコンに対するアンチテーゼとして「パーソナルコンピューター」を提唱したからです。

 IBM PC ATに代表される当時のパソコンは仕事用であり、さまざまな仕事に合わせて、パソコンのキーボードは、キーボードの型番にキーの数が記載されるようになるほど、機能キーやらファンクションキーをどんどん追加されていきました。これによりパソコンは汎用性を高めていったもの、一般の個人には難解なものになっていきました。これに対して、個人の活動に役立つ真の「パーソナルコンピューター」を提唱したAppleは、プルダウンメニューをマウスで使う操作体系をMacに持ち込んで、キーボードは文字をタイプするだけで良いのだ、と割り切ることにして、マウスは本体に同梱してもキーボードは別売にしたりしました。当時Macは、Macintoshと表記しなければいけなかった、そんな時代のことでした。

キーボードは便利だけどじゃまでもある

 iPadでは、今度は指があるからいいじゃないか、とばかりについ最近までマウスやトラックパッドが使えないままでした。ところが、10年近くできなかったことが、この2020年コロナ渦の年に一気に動きはじめたのです。

 すでにiPad Proが登場して外部キーボードはiPadのもう1つの使い方として、ある意味裏標準とはなっていましたが、今年になってトラックパッド付きのMagic Keyboardが登場して、一気にMac化の道を辿り始めた感じです。ただ、どうしてメーカーであるAppleが、iPad Proを発表した後も手をこまねいていた感じで、こんなことをもっと早くできなかったのかと思います。

 まあ、好意的に考えて、メーカーのお仕着せでなくユーザーの求めるものを模索して来たと考えれば、この10年はお互い様だったというところなのでしょうか。

「スクリブル」は手書きというより新しいUI

 そんな外部キーボードやトラックパッド付きのMagic Keyboardの後に登場する予定の「スクリブル」は、手書きによる文字入力のための機能だけではなく、Apple Pencilをキーボードの代わりに使う、iPadのもう1つの機能になる感じがします。とりあえず、日本語が使えない現時点でも、手書きには便利な機能になりそうです。端的にいえば、まずはApple Pencilを矢印キーの代りに使うのに便利です。

 それというのも、iPadの矢印キーは私版iPad七不思議の1つともいえるほど、それが存在しないばかりに、iPadユーザーは永らく苦労させられ続けました。実際に矢印キーといえば、単にカーソルを移動するだけのためですが、外部キーボードには当然のようにある矢印キーが、なぜかソフトウェアキーボードになく、追加されても次のアップデートで消えてしまったりと、どうにも当てにならないものでした。

 iPadで文書を作成しているときに、矢印キーがあれば文章中(とくに文字入力の途中で!)でカーソルを容易に移動できるのに、矢印キーがないだけに、いろいろ新しい機能が追加されました。とくに最近までマウスやトラックパッドが使えなかったiPadだったからです。 

 その後「3D Touch」やら「Haptic Touch(触覚タッチ)」と矢印キーの代用として使える新機能が出ては消えて、最近はソフトウェアキーボードで空白キーを長押しすることで、キーボード画面がトラックパッドのようにはたらき、矢印キーの代わりになるようになりました(今こうして書いていて、そういう開発の流れだったのかと納得したりしています)。

 そうはいっても、やはり矢印キーと比べると使い勝手はイマイチです。はっきりいって、付属している矢印ーを使いたいがためにソフトウェアキーボードの「ATOK」を使っていたりします。または「手書きキーボード」というソフトウェアキーボードにも矢印ーが付いているので、手書きの鬱陶しさがなければ「ATOK」よりもこちらの方が便利だったりします。

手書きならApple Pencilだけで用が足りる

 何が便利かというと、Apple Pencilを握りながら外部キーボードまたはATOKなどのソフトウェアキーボードを使うのはちょっと手間です。Apple Pencilを使って手書きをしているときに、キーボードを使わないで文字入力ができる「手書きキーボード」は便利です。以前は手書き入力そのものに注目していましたが、今ではなんといっても、キーボードを使わないで済むというのが「手書きキーボード」の利点です。そこで「スクリブル」で日本語が使えるようになれば、もうキーボードとApple Pencilを持ち替えるひと手間が減りそうです。

 実はこれまでそんなiPadの使い方をしている人は多かったのではないでしょうか。人はいろいろな利用環境を工夫しながらいつのまにか使いこなしていたりしますが、指で画面をタッチして使うiPadでは、これまであまり自然でない使い方がされていたと思います。それが手書きやiPadの普及を阻害して来たのがこの10年ではなかったかと思います。

 「スクリブル」では、ようやくiPad本来の自然な使い方ができるように思えるのです。ある意味、それは脱キーボードなのではないかと。iPadの新しいUIになるわけです。


 

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