水際のこと

山陰の海水浴シーズンは意外と短い。
夏休みに入ってから8月の上旬までが一番いい時期。
お盆になるとクラゲに刺される、と止められたものだ。

海水浴場ごとに、水際の感触が随分と違う。

砂の種類がまず違う。細かい柔らかな砂が続く浜。
ザラザラと座ると痛いぐらいの砂の浜。
その中間ぐらいの浜。白い砂浜。黒っぽい砂浜。
同じ山陰の浜でも色々だ。

さらに個性があるのは、遠浅の浜、ものすご〜く遠浅の浜、
ほんの1、2メートルでグンと深くなる浜、という深さのいろいろ。

波がすぐに高くなる浜。
大きな波が来るように見えても、
水際にくるといつも波が小さくなる浜。
風の具合で、斜めに波が押し寄せて来る浜。

海の家がある子供たちの浜。
子供は眺めているだけのサーファー専用の大人の浜。
みんなが民宿に泊まって、民宿から浜まで出かけていく
お泊まり専用の浜。

鳥取市内の実家から海まで、自家用車のなかった頃は、バスや列車を乗り継いで行っていたのだろう。お弁当を持って、なかなかの大旅行だったと思うが、
母はよく海水浴に連れて行ってくれた。
その水際での、たくさんの感触が私の思い出の中にしまってあって、
思い出しては、体の感触とともに再経験してみることができる。

そのたくさんの水際の感触の中で私が一番好きなのは、
波打ち際に立って、波が寄せては、引いていくときに、
自分が波と一緒に海の中へ引っ張られそうになるのをこらえて、
しっかりとそこに立ったまま、ひく波の力を砂の動きとともに
足の裏で感じている時の感じだ。

大海と大地の、拮抗しながらも補い合うそのエネルギーを身内に感じ、
私は、またしてもその境界にいながら、
どちらにも組みせずに、立ち続けることで、
すこ〜し自分を力強く感じていた。
波の音のリズムに乗って、何度も何度も味わっていたあの感触。
海と大地が交わる感触。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
やった!嬉しいです!
鎌田敏子:海辺の山辺にある宿を創りたい。私の中にとっ散らかっていた、好きなものたちを、そこに集めてみたら、なんだかしっくりとその宿の中に収まっていくようだった。この宿のあたりで感じることを日々描いてみる試み。www.facebook.com/toshiko.kamada