a sort of homecoming|帰郷、のような旅

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ネットでGO TOキャンペーンのことをいろいろ調べて、いろいろ複雑で困惑しながらもようやっと旅行程を整えて九州は佐賀県、故郷の基山町へ。慌ただしい短い旅。基山町立図書館で行われているカレンダー展をこの目で確かめて挨拶してお礼をするのが目的の旅だ。飛行機での旅行、最後はすでにコロナが生活に忍び寄っていた3月に所用があり福岡へ日帰りして以来。その前も2月の警固ジョイトリップカフェでのライブだったので、今年は3回目の福岡へのフライトということになる。タイミングがまた感染者数が急カーブを見せる時期と重なったことが後ろめたい。

平日でも飛行機は満席。何気にいつも楽しみにしている機内誌が、ない。コロナの影響か。福岡までは1時間半くらいの空の旅、そこから基山までは高速バスで30分。僕の故郷は非常にアクセスが良いとこにいある、と大人になってから初めて気づく。実家から車で5分走ったらそこは福岡だ。高速バスを基山のサービスエリアで降りるとそこにはスターバックスコーヒーがあって、ちょっと前まではこのスターバックスは観光名所だった(今は幹線道路沿いにたくさんスタバがある)。

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基山町立図書館に到着、スタッフのみなさんから「おかえりなさい」と歓迎を受けて照れくさい。追加の展示物として完成版の2021年カレンダー(それまで簡易印刷のものを飾ってもらっていた)と原画を数点。会期残り1週間のところで完成形に。2011年から2021年まで11年分のカレンダー。ひとつひとつはA5サイズでささやかだけど、132ヵ月分あると、自分が作ったものだけれど、やっぱり見応えがある。

今回設営のすべてをお任せしましたが、とても丁寧に立派に設えてあって本当に感動しました。聞くところによると関東や関西、とても遠くから、それこそ「GO TOを使って見にきました」という方が少なくないそうで、図書館スタッフに「『夕暮れ田舎町』の舞台となっている、何にもない町を見下ろす小高い丘はどこにありますか?」と尋ねる方もいたそうで、驚きました。

基山の町はいたるとこで紅葉がきれい。図書館の閉館時間になって外に出るころには日が暮れる直前の夕焼けで、山並みの形が赤く染まっていて息を飲むような美しさでした。あれ?自分の故郷ってこんな良い町だったっけな、と帰るたびに思ったり思い出したりするのです。

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短い故郷滞在。行き当たりばったりで朝10時からお墓参りで山へ。おばあちゃんが住んでいた集落は、これぞ「山」という風景。うろうろしていたら農作業をしていたおじさんおばさんから「おーい」と声をかけられた。不審者がられるかと思いきや、うちの母親のことを知っている方だった。そこから予期せぬ流れで三味線とギターでのセッションに。「家族に乾杯」的な。喜納昌吉「花」と「涙そうそう」

つつじ寺として知られる大興善寺は平日にも関わらず紅葉で賑わっていた。同級生のみっちゃんと合流、みっちゃんは役場で働いていて、今回の山田稔明カレンダー展の仕掛け人でもある。子供のころから慣れ親しんだ場所だけど大人になってから来るほうがやっぱり味わい深い。長い石段で息が切れた。みっちゃんはこの石の階段を登った記憶がないという。地元にある場所ってそういうものだ。

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急遽、松田一也基山町長とのランチ。お会いするのは久しぶり。町長になられてからは初めてかも。エミュー定食という新しい基山名物を。飛べない鳥エミューを基山町が飼育しはじめて6年になるそうで、現在北海道に続いて基山にエミューがたくさんいる。脂身のない赤身の食べやすいお肉。実際にエミューを見てから食べるか、食べてから見るか迷って、食べてから見ることに。エミューに会いにいく前に町長から紹介していただいてPICFA(ピクファ)という施設、スタジオへお邪魔した。障がい者支援施設、アート作品の創作活動を中心にアートを「お仕事」として位置付け活動を行なうピクファ。たくさんのメンバーが実際絵を描いている現場を目にして感心と感動。こんな素晴らしい空間があることを何にも知らなかった。
PICFAのスタッフの方から今度は地元の酒蔵 基峰鶴を製造する基山商店の蔵をリノベーションしたギャラリー「基肄(きい)の蔵」を見学させてもらった。帰ってくるたびに噂に聞いていた素敵な場所をようやっとこの目で見ることができた。

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エミューは思っていたよりも全然大きくて迫力があって、鳥というよりも恐竜。最初4羽から始まって今500羽以上を飼育しているそうだ。柵のなかにまで入れてもらってとても近くでエミューを観察。貴重な体験でした。大人しくて、ドッドッドッ、ホーホーと喉を鳴らして、その鳴き声でオスかメスかを判断するそう。卵を見せてもらったけれどとても大きくて、まさに恐竜が出てきそうな感じ。

夕暮れ迫る基山町を駆け巡り、気持ちのいい田園風景で写真を。「気持ちがいい」と感じるようになったのは僕が東京で暮らして四半世紀以上になるからかもしれない。高校生のときはこの町を抜け出して都会に行きたくて仕方なかったのだから。再び図書館に顔を出し、いろいろ撮影。2016年春に完成したこの新しい図書館はとても居心地がよくデザインも斬新。子供の頃にこんな場所があったら書物の森をさまよい歩いてたくさんの興味の扉がひらけただろうな、と羨ましく思う。信じられないくらい階段を登り降りし、歩き回った一日でした。いい旅。

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