見出し画像

企業と大学におけるブランディングの違い

先日、ビズアップ総研×ブランド・マネージャー認定協会共催にて、「100年に1度の大変革時代に選ばれる会社になるためのリ・ブランディング"超"実践講座」をウェビナーにて開催しました。

その際、約60名の方が参加されましたが、その内の半数以上が大学の事務局、広報担当者でした。

このウェビナーの数日前に、以下のような質問をいただいていました。

・大学という非営利団体非営利団体だと企業に比べてブランディングがあいまいになりがちになってしまうと思いますが、気を付けるポイントはありますか?

・非営利団体(大学)における、従業員(学生を含む)がベクトル合わせのコツは何かありますか?

企業も大学もブランディングやマネジメントに関しては、本質的にはさほど違いはないだろうと考えていましたが、30名以上が大学の関係者ということもあり、しっかりと裏を取っておく必要を感じたので、当協会の顧問である中央大学ビジネススクール教授の田中洋先生に、参考になる資料などはないかを確認させていただきました。
※大学でのブランディング実務経験がないので、間違ったことを伝えるわけにもいかないので。

田中先生からは、ありがたいことに早速、いくつか興味深い資料をいただきました。その中には、「大学時報」という隔月で刊行している雑誌に以前、特集記事で掲載された「大学にとってブランドとは何か」という記事もありました。

資料は、全て合わせるとそこそこの量でしたが、しっかり読み込んだ上で、回答させていただくことができました。その資料からは、新たな示唆もいただいたので、備忘録の意味も含めて、以下に記載しておきます。

大学のブランディングで、注意するポイントとは?

ブランドと業界の関係を考えるとき重要な軸があります。それは、ブランド価値が変動しやすい業界・市場かどうかということです。

ブランドが上位から下位まで階層状態になっていることを「ブランド階層秩序」といいますが、例えば、A大学はY大学よりも偏差値で上位だというように、大学ブランドは明らかに偏差値という階層秩序があります。

これは、一般企業で言えば、社会階層と、例えばクルマブランドの格とがリンクしていることも同じです。例えば、ヨーロッパなどでは、上流階層はメルセデスに乗り、中間階層以下はフォルクスワーゲンに乗るというようなものです。ヨーロッパほどではありませんが、クルマブランドでも、日本でも同じようなことが言えるかもしれません。

このようなことからも、大学はブランド力がある程度有効に働く場であって、ブランド階層秩序が変化しにくいという特徴を備えていると思います。

ただ、このような階層秩序に依存しない方法もあります。

例えば、
・アカデミックというよりは、実務的な教育力だけで競争する。
・アメリカ的なリベラルカレッジを志向し、日本には数少なかった教養教育を徹底する。
・ある研究領域を絞るなどして「○○の専門性を磨くのであれば○○大学」のようにブランド再生を起きやすくする。
・立地的条件を絡める。

これらは、ブランド戦略のこととなりますが、組織的な課題もあります。

大学の特徴で、企業と異なっているところは、権限や命令系統がはっかりせず、その結果、事務担当者がいくら良い考えを出したとしても、教員側がついてこないとか、またその逆もあるでしょう。つまり企業以上に、どのように意思統一や実行を行うかが困難だと言えます。

ブランドという言葉が意味しているところがバラバラという問題もあります。
ブランディングの目的が、学生を増やすだとしたら、企業で言えば、売上を上げるためにブランドを行うのと同じことですが、ブランドを強くすることで売上や学生募集につながるといった媒介変数を何にするかを関係者に理解してもらう必要があります。

例えば、対象となる母数、認知数、見込み客(オープンキャンパスなど来場する数、または資料請求数)、受検数などを媒介変数とした場合、
実際にどの数値を上げるのか?
そのためには何をするのか?
これらをブランディングでどのように担うのか?
を押さえておくことが重要になるでしょう。

大学における職員や学生を含めたベクトル合わせのコツは何か?

王道で言うと「ブランドビジョン(※)を策定して、インターナルブランディング(※2)を実施する」ということになりますが、その前に・・・

企業でも同じですが、「危機意識を共通に持つ」ことがまず最初に必要なことです。そうでなければ、共通したベクトルを持つことは困難でしょう。

企業でも業績が伸び続けている会社の共通項は、「自社の課題は何か?」という問いに対して、社員全員いがほぼ同じことを答えます。

一方、組織変革するためには、以下のようなインターナルブランディングの8つの変革プロセスを実施することが必要です。

①危機意識を高める
②変革推進チームを築く
③ブランド・ビジョンを策定する
④ブランド・ビジョンを周知徹底する
⑤従業者の自発を促す
⑥短期的成果を実現する
⑦成果を活かして、更なる変革を推進する
⑧新しい企業文化として定着させる

この変革プロセスの最初も「危機意識を高める」ことですので、普段から組織内で、いかに「危機意識を共通に持つ」といったコミュニケーションが図れるかが重要なことになってくるでしょう。

※1【ブランド・ビジョン】
将来の顧客が受け取る体験・経験を顧客視点で言語化したもの。
※2【インターナルブランディング】
ブランドを中長期的な観点から組織全体に浸透させると同時に、従業者がブランド・ビジョンに共感し、体現できるように取り組む全社的な活動

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?