見出し画像

「出版科学研究所の統計に広告収入が含まれていないのはおかしい」とは思わないんですよ、自分は。理由はあります。

毎年、出版科学研究所の統計が発表されると「広告収入が含まれていないのはおかしい。広告収入を含めるともっと儲かっているはずだ」という意見を見かけますが、出版科学研究所の統計は「販売」の統計なので、過去のデータとの整合性も含めて「広告」が入っていないことに自分はあまり疑問を感じていません。だって、「販売」の数字を比較しているんですよ? 広告は別枠ですよね。それに、そんなこと言いだしたら出版社によっては「不動産収入」や「版権収入」、「プロダクションとして編集の請負仕事で得ている収入」、「他社の販売代行」「自費出版」とか、そういうのでけっこう稼いでる社もあるじゃないですか。紙の出版物の販売収入を比較するのであれば電子書籍や電子雑誌の収入を合算するのも本来は少し趣旨が違うのではないかと思っています。

という話で自分は終わりだと思うのですが、それでは納得しない方もいらっしゃると思うので、電通の発表している「日本の広告費」から概算した「雑誌の広告費」をhon.jpのグラフに加えてみました。

画像1

数字も載せておきます。
年度 販売(書籍+雑誌+電子) 広告(雑誌) 合計
2014 17,209 2,500 19,709
2015 16,722 2,442 19,164
2016 16,618 2,223 18,841
2017 15,916 2,023 17,939
2018 15,400 1,841 17,241
2019 15,432 1,804 17,236 ※2019年の広告は前年比98%として概算

電通の「日本の広告費」ですが、2005年から算出方法が変わったそうです。2005年の雑誌広告は概算で「4,840億円」ぐらいでした。2018年の雑誌広告「1,841億円」は、その半分にも足りません。

多分、それでも「出版社はWebサイトの広告収入もあるじゃないか」という話になるんじゃないかと思います。で、それはおっしゃる通りだとは思いますが、それを言い始めると「では版権は」「不動産収入は」「業務請負は」「販売代行は」「自費出版は」という話になりませんか?(※ちなみに、紙からWebへの移行に成功した雑誌は広告(以外の収入も)を稼ぎ始めているそうです。でも、そういう雑誌って大手のばっかりですけどね!)

「紙+電子出版市場はプラス成長」と書かれると「そうか、出版社は儲かってんのか」と思う方がけっこういらっしゃると思うんですが、すべての出版社が電子書籍や電子雑誌、Webサイトの広告収入などで取り返し始めているわけではないです。

それと、出版販売のピークと言われている1996年の紙の出版物の売り上げは2兆6,563億円ですが、2019年の数字は紙+電子で1兆5,432億円です。もう一度書きます。電子の市場が無かった1996年は紙だけで2兆6,563億円、2019年は紙+電子で1兆5,432億円です。

昼休み、これでつぶしてしまった……

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?