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74歳

 明日は、母の誕生日だ。幾つになるんだっけ、と生年月日から割り出す。
 自分が小さなころは、70代は、すごくおばあさんのような感じがしていたが、いやいや、この頃のシニアは、若い、若い。いろいろなことに貪欲で、さすが高度成長期を支えてきた世代だなと思う。

 私が母と暮らしたのは、結婚するまでの25年間。今もわりと近くに住んでいるので、安心ではある。

 子どもの頃、母は、子ども達に対して冗談か本気か分からない話をよくしていた。

 長野県白馬村出身の母は、幼いころ、熊に遭遇したり、ひとだまに追いかけられたりしたそうだ。熊は、最初、知り合いのおじさんかと思ったそうだ。ひゃあ、と叫んだら逃げたとか。
 母の祖父は、ロシア人で、だから、あんたも鼻が高いのだ、と言っていた。真相は?。
 ゴミ出しをしていたときに、「おいっ」と呼ばれたから、上を見上げると、そこには大きなカラスがいた、とか。
 留守番をする時、いつも言われていたことがある。「お水くださーいって声が外から聞こえても、絶対、窓をあけてはいけませんよ‥」
‥怖すぎる。

 そんな割とふざけた母である。そして、その性格を見事に受け継いでしまったな、と思う。すぐにふざけてしまう。お話したくなってしまう。親しくなると距離感を見失ってしまう。これまで何度失敗したことか。

 大恋愛の末、21歳で結婚。
 私には、本当は、お兄ちゃんかお姉ちゃんがいたそうだ。
 7歳のとき、突然、母を亡くしている。
 腎臓を悪くして入院もしている。
 私がしたことのない苦労をたくさんしている。だから、今、元気でいる姿を見ると、なんだかほっとするのである。

 子どもはいつまで経っても子どもであるように、親はいつまで経っても親だ。今までたくさん助けてもらった分、恩返しをする日も、きっと遠くないだろう。

 懐かしい写真を見つけた。
 45年前の母と私。
 18年前の私と娘。
 シチュエーションは違うけど
 やっぱりちょっと似てるかな?

 明日は、Instagramをやっている父を経由して
母にこの写真を送ろうと思う。
 「これからも元気でいてね」
 というメッセージを添えて。


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