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プレシーズンマッチを語る-北海道コンサドーレ札幌編

J各チームのプレシーズンマッチを見て、やっているサッカーの4局面を簡単にまとめようのシリーズ第2回です。

第1回はこちら↓ 

今回取り上げるチームは北海道コンサドーレ札幌。この冬は21年の現役生活に河合竜二が幕を閉じ、昨季得点王の都倉を筆頭に11選手が移籍。逆に8名が新たにチームに加わりました。注目すべきはクラブを離れた選手と新加入選手たちの平均年齢の違いです。

その差なんとおおよそ8歳!札幌の社長の野々村さんは若手育成の重要性を口説き、未来への投資だという要旨の話をしてた気がしますが(浦和から興梠,宇賀神取るの?という札幌サポーターからの質問に対してだった気が…)、この冬はそれを顕著に表す形となりました。

さて本題へ。プレシーズンマッチの話です。

札幌は1月のタイキャンプでチェンマイFC、バンコクユナイテッドFCと。2月からの沖縄キャンプでは名古屋グランパス、東京ヴェルディ、FC琉球とプレシーズンマッチを行いました。

バンコクユナイテッドFC(以下バンコクU)との試合はJリーグアジアチャレンジと称され、YouTubeとDAZNで公開されていました。ということで今回はバンコクUとの一戦からコンサドーレの戦い方を述べていきたいと思います。

試合動画はこちら↓

スタメン <基本システム>

昨季から引き続き指揮を執るミシャことミハイロ・ペトロビッチ監督。今季も彼の代名詞である3421システムが基本システムとなりそうです。新加入組のうちスタメンには鈴木武蔵、アンデルソンロペス、ルーカスの3人が名を連ねました。

【攻撃】

この試合、札幌はどちらかといえば相手を見た戦い、敵の弱点となるスペースを突くやり方をしていました。ポイントは2つ。

① WBの裏を突け
バンコクUの撤退時のシステムは523に近いものでしたが、5のサイド=WBの選手が戻りきれない場合は3バック の脇に広大なスペースが生まれていました。札幌はそのスペースに向け福森はもちろん、宮沢や進藤からルーカス、白井の機動力を活かし、手数をかけずにロングボールを入れていました。
また、そのボールは対角のものが多く、特に左の福森から右のルーカスへと精度の高いボールが通っていました。進藤は昨季あまりそのようなボールを蹴っていなかったようですが、この試合は多かったですね。

② ボランチ脇を突け-415→145
WBが戻り遅れた3の脇のスペースに続き空くのは2の脇のスペース。ルーカスと白井のWBが相手の高い位置を取り、相手のWBを押し込むことでこのスペースが広がりますが、札幌はこのスペースを以下のようにして利用していきました。

駒井が降り、WBが前線に張った415。ご存知ミシャ式ですね。
駒井、宮澤と荒野の三角形でボールを前進。そして荒野にボールが渡ると、駒井が荒野のサポートに行くと同時に、SB化した福森と進藤が相手DHの脇を突きます。また、このスペースにチャナティップが入り、WB白井が絞り、大外高い位置を福森が使う形も見られました。

そこからWBに預け1v1を仕掛ける、3トップのコンビネーションに頼る、もしくは福森の場合それぞれ185cmあるアンデルソンロペスと鈴木武蔵目掛けてアーリークロスを入れるというフィニッシュへの展開に持ち込んでいました。

DH脇を使った5分のシーン

チャナティップがそのスペースで受ける。

外の福森に預け、内に絞っていた白井へ。

このパスはDFに当たるものの、チャナティップにボールが溢れる。そこから中へ運び、アンロペ→武蔵でゴール前まで。

ちなみに3トップは1人が裏に走った際はもう2人が下がってライン間で受けるという動きが徹底されていました。

ここまで撤退時の相手に対する振る舞いを話してきました。ただバンコクUもすぐ撤退するわけではなく、時間によって前からプレスをかけてきましたが、それに対し札幌は-蹴ってます。繋ぐことにあまりこだわらず。武蔵、アンロペのコンビはジェイ都倉ほどではなさそうですが、この試合では空中戦で圧倒的な勝率を誇っていました。

【攻→守 ネガティブトランジション】

さてここからが個人的に今年の札幌で気になっていた点です。昨季、というよりこれまで予防的カバーリングのような、ボール保持時に守備を整えておくことはあまり見られなかった印象のあるミシャ監督が、今季こそ整ったゲーゲンプレス をかけてくるのか!?と。

結論からいくと今年も、いや少なくともこの試合では予防的なカバーリングは行われていませんでした。推進力があり、小回りのきくタイの選手に何度もカウンターからゴールに迫られます。

23分のシーン。左側、チャナティップから中にクロスが送られ、そのボールはGKにキャッチされます。中はニアに駒井、センターにアンロペ、マイナス気味に武蔵、大外にルーカスという配置。駒井がそこにいるということは…

はい、スカスカです。もう一枚のDH荒野が画面右端で相手についていますが、そこにボールが渡り、まさかまさかの飛び込んでしまった荒野はドリブルで剥がされてしまいます。

ここまで持ち込まれシュートフェイントに反応、足を出してしまいます。他3人はとりあえず横に。福森は外を回る選手を気にしながらカバーリングの体制。

誰も寄せれない。右足を振り切られ失点してしまいました。

38分にはこんなシーンも。

ということで、この試合は相手が相手だけあって、リスクマネジメントへの配慮が全体的に欠けてたこともあり、荒野の対応も軽率でした。しかし札幌と対戦する相手にとってボールを奪った瞬間は点を取る大チャンスとなりますね。

【守備】

札幌の守備はどんな局面であれマンツーマンマークでのディフェンスが主体となります。

この試合では敵CBがボールを持ち、低い位置から組み立てる場合は、相手の3バックに対し、3トップをそのままぶつけて前プレという形を取っていました。バンコクUのプレスへの耐性は低く、蹴り出してしまう、もしくは奪われてショートカウンターを食らってしまうというシーンが何度も。そして中盤へ上手く繋げた場合も札幌はDHのマンマークで相手の中盤の選手を潰していました。

そこも剥がされたら撤退守備に移行します。最終ラインは5バックになりますが、大外のWBはスペースより人を意識して飛び込んでいき、真ん中3バックは横にほとんど動かず、クロスに対しての体制を整え、ゴール前の敵のFWをマークする守備を取っていました。

【守→攻 ポジティブトランジション】

相手からボールを奪った位置が高い低いに関わらず、札幌は縦にボールをつけることを意識していました。狙うスペースは上述した通りWBの裏、もしくはスピードのある鈴木とアンロペがDFラインの裏どちらかのスペースになってきますが、このスペースにボールを送り込む前に一度駒井か福森、もしくはチャナティップに預けスピードを調節することが多かった印象です。

【最後に】

「プレシーズンマッチを語る」。第2回はコンサドーレ札幌を取り上げました。この試合では攻撃時の人数の掛け方や相手カウンターに対するリスク管理、縦パスを入れるタイミングなどがチーム全体で共有しきれてないようなシーンがいくつか見られました。約1ヶ月前の試合ということで、Jリーグ開幕までどれほど突き詰められているか楽しみです。

開幕まであと1週間。来週の今頃は神戸vsセレッソの試合中ですね。
そして明日はリーグ開幕に先駆け富士ゼロックススーパーカップが行われます。ということで次回の「プレシーズンマッチを語る」はこの一戦から浦和レッズの戦い方に注目してみたいと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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