見出し画像

~前進~ J1第10節 ベガルタ仙台vs清水エスパルス

明治安田生命J1リーグ第10節 ベガルタ仙台vs清水エスパルス 2020.8.15

ユアスタで行われた一戦。順位が近いチーム同士の対戦となりました。ざざっと振り返っていきます。

試合前両チーム状況

ベガルタ仙台(13位)

3-0で敗れたミッドウィークのルヴァンカップセレッソ戦から中2日。リーグ戦では前節今シーズン2勝目を飾り、連勝をかけてこの試合に挑む。

清水エスパルス(14位)

こちらも水曜のルヴァン鹿島戦から中2日。今季からクラモフスキー監督の下で変革を目指すチームはここまでリーグ戦4試合負けなしと好調。勢いそのままこのゲームでも勝利できるか。

スタメン

スライド1

仙台は前節神戸戦と同様のスタメン。ベンチには道渕が復帰した。清水も変更点は右サイドバックのみ。前節エウシーニョが務めたこのポジションを今節は金井が務める。

前半-互いの形

まずは仙台のボール非保持から見ていく

画像2


現象
CB+ボランチのボックスでビルドアップする清水。一方の仙台は前から出て行くよりかは、一旦ブロックを作ってから相手を追い込み、選択肢を削っていくという守備をとる。中央はいつものように長沢関口が封鎖。ウイングの真瀬西村は神戸戦同様にまずは内側に立ってハーフレーンへのパスコースを消し、大外に出たらそこにそのままスライドして横側を切るような立ち位置をとった。

ただ全てが術中に嵌るわけもない。清水は高い位置に出たSBにボールが渡ると金子西澤がペナルティーエリアの角に向かってランニングを開始。そこで受けられればマイナスに折り返してのアシストを試みるし、受けられなくともそのスペースに仙台の選手を引き付けることで、他の場所で後藤がフリーになる。このサイドの駆け引きを仙台はマンツーマン気味で対処。ただ左右でアプローチはやや異なった。清水のサイドのローテーションに対し真瀬が低い位置まで相手にマークしてついていくのに対し、西村は人基準のそれを行わず、高さをキープし続けた。

意図
ウイングの守備にフォーカスしたい。高い位置では神戸戦同様の立ち回りをとったが、これには味方SBをペナルティーエリア幅から出したくないという思いがあったはずだ。清水は前述の通りSB-CB間のスペースを狙ってくるチーム。大外をウイングに任せることで、そのスペースを広げないよう心がけた。

深い位置での、相手に押し込まれた際のウイングのアプローチは保持時の狙いを加味したことによって、左右で異なるものとなった。これについては次で見ていく。

前後半ーボール保持を前提とした攻め

スライド5

現象
清水はボールを失うとその周辺の人にすぐにマークにつき即奪還を試みる。また幅を取る逆サイドの選手も中に絞るよりかは、同サイトのSBやCBにマークについてサイドチェンジを抑止する。またブロックを組んだ際も左右のウイングはFWの高さからやや下がった、高めのラインに立つ。

対する仙台は仙台は即奪還されないよう、一度GKやCBに戻してから前進を開始する。その際に使ったのがウイングの背中側のスペース。主に右サイドの柳、真瀬、浜崎の三角形で相手ブロックを全体的に前に引き付けると、開いたライン間にいる関口や長沢へボールを届ける。清水DFラインはライン間にボールが入ると仙台のようにCBがそのまま出て潰すよりかは、引いて待ち構える傾向にあったので、彼らは多くの場面で前を向くことができた。そこから逆ウイング裏の西村へと展開してフィニッシュを狙った。

意図
前述した西村の守備タスク軽減は、このフィニッシュの局面にリソースを割いてほしいという意図があってのものだと思う。得意の左ハーフレーンでの仕掛けやフィニッシュを活かすためのこの日の戦術だった。木山監督もそれに懸けて交代を引っ張ったが、得点は生まれず。西村ならもっとやれるはず。

清水ボランチを引き出すための縦方向の壁パス(正面に立つ相手を交わすプレス回避)、前を向いている選手を積極的に使う動きは川崎戦あたりから見られていたものだが、それから前進することができていた。特に浜崎が相手ボランチ背後の関口を壁にして受け直し、逆サイドへと展開するという形が多かった。

スライド7


切り替えの局面でも壁パスを使っての前進は見られる。仙台はボールを失うと左右のパスコースを切って寄せ、間でもう一人が待ち構えてボールを奪取。その局面では一時的に左右コースを切っていた選手がフリーになるので、ボールを奪った選手はその選手を壁にしてボールを受け直し前進することが可能になる。

前半ースピードアップ

スライド6

飲水タイム後に清水は修正をはかる。

現象

左サイドで前進し、同サイドに仙台ブロックを引きつけるとボールを立田へ。すると一気に逆サイド幅をとる金井へ展開。SBが出て対応するのが先か、間の金子へとボールを届けるのが先かの勝負に持ち込む。

意図
やはり飲水タイムまでなかなかペナルティーエリア幅から出なかった仙台SBを引き出すためにとった修正だったと思う。長いボールでテンポアップするのは、ルヴァンカップでセレッソに対して仙台も行っていたこと。立田の場合はそのボールのスピードも精度も非常に良かったと思う。

後半も同じような展開、同じようなペースで試合が進む。強いて言えば関口や真瀬がよく左ハーフレーンに顔を出してチャンスを作るようになり、また両者選手交代でアクセントをつけてボール保持を前提とした攻撃から点を奪いたかったが、得点までは至らず。仙台からすると2トップ間を運び脅威となっていた竹内の交代は助かったかもしれない。赤﨑の前での制限も向上はしてきているものの、長沢ほどのレベルまでには至っておらず、途中から入るも関口の負担を増やすことに。試合は0-0で終了した。

雑感

両チームなかなか良いようにはいかない、ただチャンスはあったから決めさえすれば勝てた、そんな感想が残りそうな試合だった。仙台は柏戦以来のボール保持を前提とした(カウンターに急ぎすぎない)試合運びだったと思う。その試合と敢えて比較するのであれば、この試合は前述したボールを失ってからの切り替えの局面がより整理されていた。で、じゃあその前の保持のところはどうだったの、相手に脅威を与えられていたのと言われればそれはそうではないと思う。怖さという面でまだ足りていない。17年の大宮戦も似たような442に対峙したけれど、その時は3点取れて、今は0点。前進させるためのかたちは明確にあるだけに、やはりそこの精度や緩急はこれからも突き詰め続けなければならない。前進していかなければならない。去年の春先に直面した課題に再び向き合う時が来たのかもしれない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?