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2020/4/13(うたの日366)

右耳に君の血潮を聴きつつも左の耳に梅雨は尽きない/水底

(2019/6/1「梅雨」)


かっこいい。かつ、めちゃくちゃ上手い歌だと思う。「鼓動」ではなく「血潮」でそれと対応しているのが「梅雨」という発想がすごい。熱いものと冷たいもの。ただ、それらを聞いているときの音はどちらも似ていて、集中していないと解らなくなるだろう。主体は同時にそれら両方を聴いている。梅雨は一過性のものであるけれど、それが「尽きない」と云っているのがこの歌の眼目なのかな、と思う。
意中や子どもなど、関係性を限定しなくても問題ないが、この「君」が生きていること自体がきっと主体の喜びなのだろう。だが、生きていれば同じくらいの悲しみがある。すれ違って傷つけ合ったりもするだろう。また、その喜びはいつまでも続かない。血潮の流れている生きものはいつか必ずその鼓動を止める。梅雨が終わった時は、血潮の流れが止まったときでもあるのだろう。喜びと悲しみの量は等しく、誰かを愛しながら生きていく苦しみが描かれている。

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