2020/8/11（うたの日366）

ロックとか好きですとだけかろうじて言えた四月のまばらな拍手／夏山栞
（2020/3/31「ROCK」）

いかにもありそうで、いいなあと思う。また、細部への言葉選びからこの主体と状況がいろいろ解るのが面白い。…「ロックとか好きです」の「とか」を主体はいちばん云いたかったんじゃないかと思う。なんとなく、主体の「ロック」はコアすぎるというか、Mステとかに出る類の「ロック」じゃなさそうな感じがする。固有名詞を出して場がしらけるのも怖いので、そのぎりぎりのところが「ロックとか」だったんだろうなあ、と思われる。
転校生とかであれば、そこまで過敏にならなくていいような空気感があるのだけれど、これは「四月」である。これも転入生として読めなくもないのかもしれないけれど、個人的にはクラス替えをして五十音順で、簡単な自己紹介をして回っている感じのように読んだ。なので、持ち時間も一瞬だし、かつキャッチーにも滑りもしないぎりぎりのところが「ロックとか」だったわけなのだけれど、結局「まばらな拍手」で終わる。…これは別に滑ったわけではなく、クラス全員分やるわけなのだから、大きな拍手があるわけではないので当然で、でもおそらくそれが解らず緊張してしまくっている主体の初々しさがなんだか可愛い。大人になったらもっと無難にゆるく、かつ個性を適当に出した自己紹介ができるようになってしまうので、大丈夫だよ、と云ってあげたくなる。