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2020/7/1(うたの日366)

おかあさんもう泣かないでひとんちの室外機には腰掛けないで/森下裕隆

(2018/5/13「母」)

おそらく、述べている通りの景なんだろうけれど、じわじわきてしまう…またその背景がまったく解らないせいで、不穏な雰囲気もにじみ出ていてどうにも気になってしまう歌である。お母さんいったいどうしたんだろう…歩いてる途中に何かがあって、急にお母さんが泣きだしてしまったのか。しかも、座り込んでしまうほどのことだから、涙ぐんで済む程度の泣き方ではなさそうだ。でも、手の付けれられないほど…というか、大人って子どもの前では泣かないように努めているような気がする。なので、子どもが大人の泣いているところを見ると、かなり焦るはずだと思う…にも関わらず、この下の句のゆるいたしなめに、きっとそういうことが割とあるのだけど今日はひとんちの室外機に座ってしまったような感じがある。上二句も結句も「~で」で切れているのだけど最後まで読んで、その全体のテンションに気が付く歌で面白い。とりあえず、主体を見るとそんなに深刻な事態ではないのかな、とかもイメージできる。
なんとなく、仮名にひらいた感じから主体は小さい子なのかと考えつつ読んだけれど、この主体と「おかあさん」がもっと大人であるように読むと、もっと違う読みに、例えば不穏な感じの方が濃くなったりするのかとも思った。上の句はある意味万能で、どういう雰囲気にでも持っていけるにも関わらず、ひとの家の室外機に座って泣いてるお母さんを注意するんや、という予想できない展開がいいなと思った。

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