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2020/1/15(うたの日366)

小魚が沈没船に棲むように君と暮らした県営アパート/甘酢あんかけ
(2018/10/27「沈」)

滅びゆくものの比喩のうつくしさに惹かれた。特に「沈没船」という比喩が上手、ここからストーリーが重層的に広がってゆくと思う。
沈没船に喩えると途端にいまにも崩れ落ちそうな県営アパート(でもできた当初はすごく大きくて綺麗だったとかも)がイメージできるし、そこでの身を隠すような生活、金銭的な面や、もしかして後ろめたい恋だったのかもしれないとかも同時に想起できる。またアパートに「県営」と付いているのも細かいけど、上手いと思った。
沈没船というものにもかつて船だった過去があり、主体が県営アパートに暮らしていたのも既に過去のことである。主体が「君と暮らし」ていて、今も一緒に暮らしいるのかまではこの歌からは読み取れない。そのあたりも含めて、ノスタルジーというだけではなく、もう絶対に戻れない感じがあり、淋しい一方で、とてもひきつけられる歌。

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