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2020/8/12(うたの日366)

部室から先輩の泣く声がして二回多めに外周走る/ペンギンおじさん
(2020/4/5「部」)

なさそうなのに、なんだかありそうな感じがする、妙にリアルな短歌だと思う。「部室から先輩の泣く声がして」は短歌的にはありがちだけど、リアルではなさそうな感じがする。部室に入る前から泣いているのが解るくらいなので、相当大きい声だろうから主体以外のひとからもそのうちばれてしまいそうだと推測してしまう。…ただ、一方で泣いているのを「先輩」に設定しているのが、いいなとも思う。なんとなく、中学生っぽい感じを想像して読んだのだけど、この年齢くらいの一学年上の差ってすごく大きい気がする。一歳上なだけで、万能感があった。「二回多めに外周走」ったのは、そのくらい走ったら先輩は泣き止んでいるだろう、的な公算ではなくて、先輩が泣いているという現実に動揺してしまった。また、先輩のなかの自分のイメージを壊したくなかったからな気がした。「もう一回」ではなく「二回多めに」なところに混乱している雰囲気が出ている。また、走る場所が校庭ではなくて「外周」であるところもこの歌の妙にリアルなところを補完している部分だと思う。

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