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【物語】アレクサンダー大王 歴史を楽しく

あーりーです。

歴史を楽しく身近に感じてもらいたいと思って書きました。

小説でもなく、シナリオでもなく、少し変わった会話形式の物語です。

ころんと寝転びながら、気楽に読んでいただけると嬉しいです。


それでは始まり始まり~。



第1話 大遠征

むかしむかし、ギリシャにアレクサンダー大王という青年がいました。


友人「ねぇ、大王さん」

大王「ん?」

友人「今度さ、世界征服しない?」

大王「え、なんで?」

友人「だって、大王さんの今の領土ってギリシャだけでしょ。ぜんぜん大王じゃないじゃん」

大王「うぅ……」

友人「もっと領土広げたほうが大王っぽいんじゃない?」

大王「領土が少ないのに大王っていう名前、変かな?」

友人「変だね」

大王「でも世界征服っていってもさ、広いしょ」

友人「そうでもない。これが世界地図だよ」


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大王「うそぉ、世界地図ってこんなんだっけ?」

友人「古代の世界観ってこんな感じだよ。これならなんとか征服できそうでしょ?」

大王「うん。じゃあ、ちょっとやってみる?」

友人「おれらのいるここギリシャから東に向かって、まずは『ペルシャ』を征服しよう!」

大王「でもさ、世界征服って、なんかいいことあるの? 他人に迷惑かけるだけのような気がする」

友人「世界征服を達成したら、いかにも大王って感じするしょ」

大王「それだけの為に戦うのってダルくない?」

友人「あと、こじつければいろいろ理由はあるよ」

大王「なに?」

友人「例えばさ、みんながひとつの国になれば戦争がなくなるしょ」

大王「平和の為の戦い?」

友人「そう」

大王「なるほど! って、それ詭弁じゃない?」

友人「詭弁じゃない。物事の切り口の違いさ」

大王「それも詭弁のような気がする……」

友人「まあまあ。とにかく出発しよう」


紀元前334年春

22歳のアレクサンダー大王は、世界征服を成し遂げるため『東方遠征』に出発した。


そのころペルシャ帝国では・・・・・

ペルシャ王「やっべぇ。アレクサンダー大王、攻めてきた(汗)」

武将「アレクサンダー軍は、重装歩兵3万人、騎兵5000人です」

ペルシャ王「『重装歩兵』って、なに?」

武将「すっごいがっちり装備した歩兵です」

ペルシャ王「ふーん」

武将「じゃあ、とりあえずおれ、迎え撃ってきます」

ペルシャ王「あぁ、悪いね」

武将「行ってきまーす」

ペルシャ王「あ、そうそう、わが『ペルシャの騎兵隊』は強いから、たくさん連れていったほうがいいかもよ。きっと役立つから」

武将「わかりました~。じゃあね~」

ペルシャ王「気をつけてねー」


そして。

アレクサンダー軍とペルシャ軍は『グラニコス川』を挟んで向かい合った。


大王「あれがペルシャ軍かぁ。なんか強そうだよ」

友人「おれらを待ち構えてるね」

大王「めっちゃ待ち構えてるよぉ(涙)。おれたちがこのグラニコス川を渡ってむこう岸に上陸したところをボコボコにする気だよ」

友人「そうだね」

大王「しかも、この川、めっちゃ流れ速くない?」

友人「速いね」

大王「でさぁ、あいつら騎兵隊たくさん連れて来てるよ。すっげぇ強そう」

友人「そうだね」

大王「この状況ってさ、おれら、かなり負けそうだよね」

友人「いや、かなり勝ちそうだよ」

大王「え?!」

友人「この状況は、良く考えてみると我が軍に有利なことばかりだよ」

大王「ほんと?」

友人「ほんとさ。さて、はじめようか」


こうして『グラニコス川の戦い』がはじまった。



第2話 グラニコス川の戦い

大王「おいおい、本当に勝てるの? 向こう岸は敵がいっぱいだよ……」

友人「大丈夫だよ。よし、じゃあ川を渡るよ。付いてきて」


アレキサンダー軍はグラニコス川を渡り始めた。


大王「うわ! 川の流れ、すっげぇ速いよ~。わぁ~~~流される~~~」

友人「それでいいんだよ」

大王「え?」

友人「川の流れが速いから、向こう岸への上陸地点がかなり下流になる」

大王「うん、で?」

友人「つまり、敵が待ち構えていない地点に上陸できるってわけさ。わかる?」

大王「わかったけど、流れ速すぎない?」

友人「お、おい、大王さん、前に出過ぎだよ。もっと下がれよ」

大王「そんなこと言ったって、川の流れが速すぎてコントロール不能なんだよぉ(涙)」

友人「先頭に立ってどうするんだよ。危ないだろ~」

大王「そんなこと言ったってぇ~~~」


そこのろ。

ペルシャ軍は…

武将「おお、アレクサンダーめ、わざと下流に上陸するつもりか!」

武将2「意表突かれましたね」

武将「あれれ? しかもさ、先頭切って突っ込んでくるの、あれアレクサンダー本人じゃない?」

武将2「ホントだ」

武将「勇敢だな~」

武将2「なんかちょっとカッコイイですね」

武将「うん。なんかちょっとカッコイイね」


アレキサンダー軍は対岸に上陸した。


大王「ねぇ、上陸したのはいいけどさ、敵の騎兵隊、めっちゃ強そうだよ」

友人「大丈夫さ。この狭い川岸では騎兵の機動力は十分に発揮できない。こういう状況では『重装歩兵』の方が強いんだ」

大王「重装歩兵なら、おれたち、3万人も連れてきたからね」

友人「うん。勝てるよ」


こうしてアレクサンダーは『グラニコス川の戦い』で大勝利をおさめた。


その日の夜。

大王「おおぉ、今日の戦いのこと、テレビのニュースでやってるよ」

友人「うそ!?」

大王「ほんと。ほら」

友人「ほんとだー。あ、でもおれあんまり映ってないなぁ」

大王「おれ、すっげえ映ってるよ。先頭にいたから」

友人「ほんとだ。めっちゃアップだね。いいな~」

大王「テレビに映るって気持ちいいね~。次の戦いも先頭に立って戦ってたら、またテレビに映るかな?」

友人「かもね」

大王「ほんと? じゃあ、今度からずっとそうしよう♪」


こうして…

遠征中、アレクサンダーは常に先頭に立って戦ったといわれている。


大王「さて、そろそろ寝るかな」

友人「あ、ニュース速報だ」

大王「え、なにさ?」

友人「えーとね、ペルシャ王が10万の大軍を率いて都を出発しました、って」

大王「ふーん。10万は、かなりの大軍だね」

友人「うん」

大王「ペルシャ王、どしたんだろうね、そんな大軍動かして。なんかあったのかな?」

友人「そりゃ、大王さんをやっつけに来るんじゃないの?」

大王「え、おれ?!」

友人「絶対そうだよ」

大王「マジでぇ(涙)……あ、じゃあさ、おれ、大王じゃないふりするかな」

友人「バレるよ」

大王「偽名使えばバレないよ。おれ、今日から田中ね」

友人「バレるって。田中っぽくないもん」

大王「どうやったら田中っぽくなるかな。練習するわ」

友人「田中の練習って何だよ」

大王「だって10万の大軍になんて勝てないよ」


こうしている間にもペルシャ王の大軍は近づきつつあった。



第3話 タルソスでの体調不良

遠征の途中、アレクサンダーはタルソスの町に立ち寄った。


大王「さてと……」

友人「?」

大王「じゃ、そろそろギリシャに帰るかな……っと」

友人「……いや、そんなさりげなく言ってもダメさ。帰さないよ」

大王「だってさ、早くしないとペルシャ王が来ちゃうよ」

友人「やっつければいいだろ?」

大王「10万の大軍になんて勝てないよ」

友人「なんとかなるって」

大王「……ねぇ、あのさ」

友人「なに?」

大王「もし、おれが病気になったらギリシャに帰してくれる?」

友人「まあ、重病ならね」

大王「ふーん」

友人「それがどうかした?」

大王「あ、あいたた……」

友人「?」

大王「おっかしいな~、お腹痛くなってきた」

友人「……」

大王「あ~痛い。いたたた。残念だ。ギリシャに戻るしかないなぁ。とても残念だ。でも病気だからしかたない。というわけで、帰るとするかな……」

友人「待てよ。心配だから、一本注射を打っておこう」

大王「ああ、注射ね」

友人「ものすごく痛いけど、いい?」

大王「う、うん。いいよ。注射くらい」

友人「ものすごく痛くて、一生トラウマになるかもしれなくて、あまりの痛さに何もかも嫌になって生きる気力を失うかもしれないけど、いい?」

大王「ちょっ、ちょっと待って。あっれ~、なんか治ったかも」

友人「でも、念のため……」

大王「な、治ったよ、本当に治ったってば。なんかさ、なんとなく一気に治っちゃった」

友人「まったく。体調管理には気をつけてくれよ」


記録では、アレクサンダーは『タルソス』の町で一度体調を崩し、その後回復したという。


アレクサンダー軍はさらに東に進んだ。

大王「ねぇ」

友人「ん?」

大王「ペルシャ王の軍隊って10万人でしょ?」

友人「うん」

大王「そんな大軍に勝てる作戦、あるの?」

友人「あるよ。大軍を大軍として機能させなければいいんだ」

大王「????」

友人「例えば、海とか山に囲まれた狭い地形に誘い込めば、大軍は力を出しきれないしょ?」

大王「わかんないけど、そうなの?」

友人「そうなの」

大王「そんな地形、ある?」

友人「うーん、この辺でいうと、『イッソス』の土地が理想的だね」

大王「今この場所じゃダメ?」

友人「ダメさ。ここは平野だも。大軍にとって最も有利な場所さ」

大王「じゃあさ、もし今ここでペルシャ王に会ったら、ピンチだね」

友人「やばいね」


そのとき大王が何かを発見した。


大王「あ!」

友人「どうした?」

大王「向こうから来るのって、ペルシャ王の大軍じゃない?」

友人「あ、ほんとだ」

大王「ピンチ……」



第4話 イッソスの戦い

アレクサンダーは、ペルシャ王に見つかってしまった。


ペルシャ王「……ん?」

大王(やばい! 見つかった……汗)

ペルシャ王「おい、おまえ」

大王(気づかないふり、気づかないふり……)

ペルシャ王「馬に乗ってマントひらひらさせた、おまえだ、聞こえてるだろ?」

大王「……え、あ、僕ですか」

ペルシャ王「そうだ」

大王「なんすか?(汗)」

ペルシャ王「おまえ、もしかしてアレクサンダーじゃないか?」

大王「ち、違いますよ……」

ペルシャ王「……似てるなぁ」

大王「た、たまに言われますね(作り笑い)」

ペルシャ王「じゃあおまえ、名前はなんて言う?」

大王「え、いや~、なんていうか、田中です」

ペルシャ王「田中くんか」

大王「はい」

ペルシャ王「このへんでアレクサンダーの軍隊、見なかった?」

大王「いや~、ちょっと……」

友人「見ましたよ」

ペルシャ王「おお、君は田中くんの友人だね。見たの?」

友人「はい」

ペルシャ王「どこで見た?」

友人「向こうの、イッソスのほうにいました」

ペルシャ王「イッソス?」

友人「はい。海と山に囲まれた町です」

ペルシャ王「そうか、ありがとう。じゃあそのイッソスに行ってみるよ」

大王「がんばって下さいね」

ペルシャ王「ありがとう、じゃあね~」


ペルシャ王の大軍は、イッソスに向かった。


友人「うまくいったね」

大王「すごいな~おまえ。おれなんかびびって何も言えなかったよ。田中ってウソつくので精一杯だった」

友人「ペルシャ王がイッソスに入ったところを襲撃しよう」

大王「えー、やめとかない?」

友人「なんでさ、イッソスはおれたちに有利な地形でしょ」

大王「せっかく何事もなく素通りできたんだからさ、わざわざ戦うことなくない?」

友人「ダメだよ。『イッソスの戦い』は世界史の教科書にも出てくる重要な戦いなんだから」

大王「マジ?」

友人「うん。紀元前333年イッソスの戦い。テストにも出るよ」

大王「教科書に載るんなら、がんばろうかな」

友人「よし、決まりだ、イッソスへ向かおう!」


紀元前333年

アレクサンダーはペルシャ王の大軍を一度やり過ごした。その後ペルシャ王がイッソスへ入ったところを攻撃し、撃破した。(イッソスの戦い


大王「いや~、勝ったね」

友人「うん。ペルシャ王のやつ、かなり慌てて退却してたね。やたら財宝とか置いていったよ」

大王「ラッキー! もらっとこう」


ペルシャ王の財宝を没収したことで、アレクサンダー軍は、遠征開始以来の資金不足を解消した。


大王「ん? あそこで泣いてる女の人、誰かな?」

友人「あぁ、あれはペルシャ王の妻だね」

大王「逃げ遅れたのかな」

友人「戦場はかなり混乱してたからね」

大王「おお~めっちゃ綺麗な人!」

友人「なみの王様なら、人質代わりに敵の妻を奪って手を出すんだけど、きみは大王だ。ここはひとつ、カッコ良くいこうよ」

大王「カッコ良く?」

友人「人質は人質でも、丁重にゲストとしてお迎えするんだ」

大王「敵の奥さんを?」

友人「そう。そのほうがジェントルマンでカッコイイだろ? 手ぇ出すなよ」

大王「……はい」


アレクサンダーはイッソスの戦いで捕らえた『ペルシャ王妃』を王族として迎え、紳士的に接し、贅沢な暮らしを許した。


大王「おれの東方遠征、順調だね」

友人「いや、それがたった今、報告があってね。『ティルス市』が反乱を起こした」

大王「うっそ! それってやばいの?」

友人「やばいね。早めに鎮圧しないと反乱が各地に広がって、大王さんの帝国そのものが崩壊しちゃうかもよ」

大王「じゃあさ、さっそくティルスに行ってさ、反乱軍をやっつけちゃおう」

友人「……うん」

大王「え、何でそんな暗い顔してるの?」

友人「実はさ、重大な問題があるんだ」

大王「な、なに?」



第5話 ティルス市の反乱

大王「問題ってなにさ?」

友人「実は、ティルス市って島なんだ」

大王「島!?」

友人「うん。岸から1000メートルくらい離れてる。海軍がないと攻められないんだよ」

大王「馬じゃ渡れない?」

友人「船がないと無理だね」

大王「船なんかないよ……。あ、いいこと考えた!」

友人「え、なに♪」

大王「馬でも渡れるように、海を埋めちゃえばいいんじゃないの?」

友人「おお! すごいじゃん大王さん!」

大王「道がないなら、海に道路を作るんだよ」

友人「それで行こう!」


こうして、海に道路を作る案が実行された。

道路は石と粘土とレバノン杉で作られ、この上を通ってアレクサンダー軍はティルス市を攻撃し、反乱を鎮圧した。(アレクサンダーの海上道路


アレクサンダーの遠征はさらに続いた。


そんなある日……

友人「大王さーん、電話だよ~」

大王「え、おれに? 誰から?」

友人「ペルシャ王から」

大王「ペルシャ王って、この前『イッソスの戦い』でおれたちがやっつけた、あの?」

友人「そう、あの」

大王「怒ってる?」

友人「さぁ、出てみ」

大王「うわ~なんか怖いな~」


アレクサンダーは電話に出た。


大王「お電話かわりました、大王です……」

ペルシャ王「あ、ペルシャ王です。先日はどーも」

大王「あ、いいぇ、こちらこそどーも」

ペルシャ王「この前さぁ、あれ、田中くんってやっぱアレクサンダー大王だったんでしょ?」

大王「はぁ、実はそうなんですよ。だましてすいません」

ペルシャ王「いや~作戦だったんだろうし、しかたないよ」

大王「ああ、そう言っていただけると……」

ペルシャ王「ところで、うちの家内、そちらにお邪魔してない?」

大王「王妃ですね。お預かりしてますよ」

ペルシャ王「返してくれないかな~」

大王「あ~でも、一応、人質ということで……」

ペルシャ王「もちろん、それなりの金とか条件は飲むから」

大王「と、いわれましても……」

ペルシャ王「1万タラントの現金と、『ユーフラテス川』から西の領土をあげるからさ。だめ?」

大王「1万タラント?」

ペルシャ王「うん、今の日本円で80億円くらい」

大王「おお~そんなに!」

ペルシャ王「悪くないしょ?」

大王「でも、ユーフラテス川ってどこです?」

ペルシャ王「中東の川。聞いたことない?」

大王「さぁ……?」

ペルシャ王「知らないかな? でもあるんだよ、そういう川」

大王「本当にあるんですか~。だまそうとしてません?」

ペルシャ王「いや、待ってよ、本当にあるってば」

大王「聞いたことないっすよ」

ペルシャ王「ほら、あの有名な『メソポタミア文明』を生んだ、あの川だよ」

大王「メソ・・・? なに? なんですかその文明。適当にいま考えたんでしょ?」

ペルシャ王「違うってぇ。何で知らないの? チグリス川・ユーフラテス川って、セットで有名でしょ?」

大王「僕はだまされませんよ。じゃ、この話はなかったことに……」


大王は電話を切った。


友人「なんの電話だったの?」

大王「なんか、聞いたことない川の名前とか言って、おれをだまそうとして来た」

友人「へぇ~。それで断ったの?」

大王「うん」

友人「えらい! 君にしてはよくやったね」

大王「ふふ。まぁね」


そのころ。

ペルシャ王妃に、命の危険が迫っていた。



第6話 アレクサンドリア

友人「大王さん! 大変だ!」

大王「どした?」

友人「ペルシャ王の奥さんが亡くなった……」

大王「え!」

友人「子どもを身ごもってたんだけど、出産のときに亡くなったんだ。もともと体は強くなかったからね」

大王「そうか……。なんか、ペルシャ王に悪いことしたね。……ショックだよ」

友人「大王さんのせいじゃないよ」

大王「でも、こんなことなら、奥さんを帰してあげるんだったな……」

友人「うん。そうだね」

大王「せめて、誠心誠意、弔ってあげよう」

友人「うん」


アレクサンダーは、ペルシャ王妃のために盛大な葬儀を行った。

翌日、ペルシャ王から電話があった。


ペルシャ王「もしもし、ペルシャ王ですけど」

大王「あ、ペルシャ王さん……」

ペルシャ王「妻のために盛大な葬儀を、ありがとう」

大王「……いぇ、その……すみませんでした」

ペルシャ王「君が最後まで妻に敬意を表してくれてことには感謝しているよ」

大王「いえ、そんな……」

ペルシャ王「でもおれはね、敬意とか盛大な葬儀よりも、とにかく……妻と最後まで一緒にいてあげたかった」

大王「すみません……」

ペルシャ王「これはおれが戦いに敗れたことが原因なんだから、君が謝ることはないよ」

大王「……ぅぅ」

ペルシャ王「おれは君のことを一生許せないけど、 でも彼女に誠意をもって接してくれたことは忘れない。ありがとう」

大王「……」

ペルシャ王「じゃ、いずれまた戦場で会おう!」



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大王「なんか、落ち込むなぁ……」

友人「疲れてるんだよ。ちょっと南のほうで休養すれば?」

大王「うん。そうしよっかな」

友人「エジプトあたりがいいよ。あったかいし」


こうして……

紀元前332年。アレクサンダーはエジプトに入った。


大王「いや~、ここってさ、めっちゃ暖かいし、海は綺麗だし、すっげえいいところじゃない?」

友人「うん。最高だよね」

大王「おれ、将来ここに住もっかな~」

友人「あ、いいかもね。じゃあさ、今のうちにこの辺にでかい町つくっておいたらいいんじゃない?」

大王「町?」

友人「うん。港や灯台や劇場や宮殿のある、でかい都市」

大王「あ、かっこいいね。ふふ。作っちゃおうかなぁ~。町の名前は何にしよう?」

友人「うーん、大王さんの自分の名前そのままつければ? アレクサンダー町とか?」

大王「ストレート過ぎない? 恥ずかしいしょ」

友人「いいじゃん。べつに」

大王「でもな~。なんかちょっとな~」

友人「じゃあさ、『アレクサン』まではそのままで、その後いきなり全然関係ない言葉をくっつけてみれば?」

大王「アレクサン・・・・枕カバー、とか?」

友人「アレクサンマクラカバー。いいね」

大王「うそ? いい?」

友人「他にもいろいろ考えてみな。もっといいのあるかもよ」

大王「アレクサン・・・ネズミコゾウ。アレクサン・・・・ピザ。アレクサン・・・・オムレツ」

友人「いいのばっかりで迷うね」

大王「なんか腹減ってるから食べ物系でいこうかな」

友人「アレクサン・・・・グラタンとか?」

大王「そうそう、あとね、アレクサン・・・・ドリアとか」

友人「あ、それいいしょ? 腹の足しになりそうだし」

大王「いいかな? じゃ、そうしよっかな。ふふ。アレクサンドリア。いいね。いいかも」


こうして紀元前331年、エジプトに『アレクサンドリア市』が建設された。

そんなある日、ペルシャ王から電話がかかってきた。


大王「もしもし、大王です」

ペルシャ王「ペルシャ王です」

大王「あ、どーも。その節は……」

ペルシャ王「いえ、こちらこそお世話になりました。ところで、今度、決戦しない?」

大王「決戦ですか。はい、いいですよ」

ペルシャ王「今年の10月とか、あいてる?」

大王「10月……。紀元前331年の10月ね。わかりました。あけときます」

ペルシャ王「場所はね、『ガウガメラ平原』ね。わかる?」

大王「えー、なんか目印あります?」

ペルシャ王「平原のところに、ちょっとした丘があるんだよね」

大王「あ~、それなら多分わかると思います」

ペルシャ王「じゃ、そこで決戦ね。OK?」

大王「OKです」

ペルシャ王「おれね、戦車に鎌つけた兵器を用意してるから、覚悟してよ」

大王「鎌ですか?」

ペルシャ王「うん。鎌びゅんびゅん振り回しながら走る戦車」

大王「マジっすか? すごいっすね」

ペルシャ王「まぁお互いがんばろうよ。じゃ、そういうことで、よろしく~」

大王「はい。じゃあ、平原で会いましょう」


こうして二人の王は、『ガウガメラ平原』で決戦することになった。



第7話 ガウガメラの戦い

ある夜の会話。

大王「鎌つき戦車って強いのかな?」

友人「すごいらしいよ。走りながら鎌びゅんびゅん振り回して、 まわりの人とか馬とかガンガン切り裂いていくらしいよ」

大王「そこまでスゴイと引くね」

友人「でも大丈夫。対策はある」

大王「ほんと! おまえすごいな~。もしかしてさ、おまえが大王になったほうがいいんじゃない?」

友人「うーん、興味はあるけど、ま、そのうちにね」

大王「あー、でも、おれが生きてるうちにおれの地位とか奪うのナシね」

友人「もちろん」

大王「王様になるんだったら、おれが死んでからにしてね」

友人「でも大王さん、長生きする予定でしょ?」

大王「するよ。で、アレクサンドリアの町で海見ながらのんびり暮らすんだ」

友人「いいね~」

大王「みんなでアレクサンドリアに住んだら楽しそうじゃない? おまえも住むしょ?」

友人「うん。この遠征が終わって世界を征服したらみんなで住もう」

大王「だね。じゃあまず、今度の決戦で勝たないと」

友人「うん」


そして決戦の10月。

ペルシャ王は、歩兵100万人、騎兵4万人、鎌つき戦車200台という大軍を引き連れてきた。


大王「うわぁ。敵、すごい大軍だよ……」

友人「かなりやる気だね」

大王「鎌つき戦車200台もあるよ。しかも兵隊とか馬とかめっちゃいるし」

友人「大丈夫。おれの言うとおりにすれば勝てるよ」

大王「どうすんの?」

友人「まず鎌つき戦車だけど、これはね、運転手を弓矢で攻撃するんだ。いくら鎌つきだろうがなんだろうが、運転手がいなけりゃただの鉄の塊だからね」

大王「なるほど。でも、鎌つき戦車はそれでいいとして、あの大軍はどうしよう。あんな100万クラスの大軍とまともにぶつかったら、ボコボコにされるよ」

友人「大丈夫。それも作戦がある」

大王「どうするの?」

友人「あのね……」


カーーン(試合開始のゴング)


大王「あ、やべ、戦い始まっちゃった!」

友人「あのね、作戦っていうのはね……」

大王「うわ~、敵めっちゃ攻めてくるぅ~。怖いよぉぉぉぉ(涙)」

友人「おい、話聞けよ、大王さん!」

大王「ひえ~~(パニック状態)」

友人「おい大王さん、落ち着けってば。おれの作戦を聞いてくれよ、ちょっと」

大王「逃げろぉ~~~」

友人「待てよ、どこ行くんだよ、ちょっと、ねぇ」


アレクサンダー大王はとんでもない方向に走り出した。


友人「お♪ 大王さん、うまいぞ! おれも同じ事を考えていたんだ。誰かがオトリになって敵の騎馬隊を本体から切り離し、ペルシャ王を無防備にする。そういう作戦だね。いいぞ! 大王さん、もっともっと逃げろ♪」


大王「ひえ~~追いかけてこないでぇ~。もう許してぇ~。 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい~~~~」


友人「遠くに行ってしまった……まあいいか」


アレクサンダー自らがオトリとなった陽動作戦により、ペルシャ王は無防備になった。

アレクサンダー軍はそこを一気に攻め込み、 勝利した。(紀元前331年ガウガメラの戦い

この戦いのあと、ほどなくペルシャ帝国は内部対立で滅亡した。



大王「……なんか、そろそろ世界征服しんどくなってきた」

友人「マジで?」

大王「もうさ、やめない?」

友人「でも、世界征服したら、合コンの自己紹介のときに『世界征服をした大王です』って言えるよ」

大王「あー、それポイント高い?」

友人「高いよ」

大王「でも、合コンの自己紹介ってやっぱ笑い取っておきたいしょ。小さくてもいいから」

友人「まぁね」

大王「『世界征服の途中で嫌になって帰ってきました』って言うほうがウケない?」

友人「かも」

大王「おれ、笑い取るほうがいいな。ツカミが大事でしょ」

友人「でもさ、せっかくここまで来たんだから世界の果てまで行ってみたくない?」

大王「世界の果て?」

友人「うん。ペルシャ帝国の向こうにあるインドっていうところが世界の果てらしいよ。もうすぐだ」

大王「めんどくさい。だって別に『世界の果てまで行った』って言っても、笑い取れないもん」

友人「じゃあさ、こういうのはどう?」

大王「なに?」

友人「『世界の果てかと思ってインドまで行ったけど、ぜんぜん果てじゃありませんでした』って」

大王「それウケるね」

友人「じゃあ、行ってみる、インド?」

大王「うん」


紀元前327年。アレクサンダー軍はインド征服をもくろみ、東に進んだ。

しかし、そこにはかつてない強大な敵が待ち構えていた。



第8話 世界の果て

アレクサンダーはついにインドまでやって来た。


大王「あー痛てっ、めっちゃ日焼けした。ひりひりする」

友人「すっげぇ赤くなってるね。日焼け止め塗らなかったの?」

大王「忘れてたのさ。見てこれ、腕とか真っ赤でしょ。あとほら肩とかさ。痛ってぇ~」

友人「火照ってるから、水で冷やしたほうがいいよ」

大王「うん。おれすぐ赤くなるほうなんだよね」

友人「あ、そういえば、そろそろインドの『ポロス王』の領土だよ」

大王「ふーん」

友人「ほら、あの川の向こうがポロス王の領土だ」

大王「川の向こうで待ち構えてるの、あれ、ポロス王かな?」

友人「間違いないね」

大王「大軍だね。あれ? ねぇ、なんかさ、あの人たち象に乗ってない?」

友人「象に乗ってるね」

大王「ふふ。象のこと馬だと勘違いしてるのかな。ふふ」

友人「ポロス王の象軍団はかなり強いらしいよ」

大王「へぇ~。……あ、雨だ」

友人「ホントだ」


そして嵐がやってきた。


友人「うわ、すっげぇ嵐!」

大王「カミナリもすごいね」

友人「ひとまず雨宿りしよう。対岸のポロス王も戦闘体制を解除して雨宿りしてるしさ」

大王「おれ、せっかくだから日焼けした肌、冷やしてくるね。そこの川で」

友人「気をつけろよ。敵の目の前で川に流されたら、みんなに笑われるぞ」

大王「……笑われる?」

友人「うん」

大王「つまり、笑いが取れるってことでしょ。合コンでウケるかな?」

友人「おい、なにを考えてるんだ、その目は」

大王「ふふ。別に♪」

友人「それはやめとけよ」

大王「『やめとけよ』ってさ、『やれよ』っていうフリ?」

友人「いや、違う。本当にやめとけよっていうことさ」

大王「まあまあ。そのへんの呼吸はおれもわかってるよ」

友人「いや、たぶんわかってない。本当にやめろって」

大王「はいはい。わかりましたよ。じゃ、行ってきまーす♪」


ざぶーーーん(川に飛びこむ音)


友人「……あーあ、大王さん本当に流されちゃったよ。しかも敵のいる対岸のほうに。 しかたない。……おーい、みんな大王さんを助けに行くぞ~」


一方、対岸のポロス王は。

部下「王様、大変です! アレクサンダーが先頭になって渡河してきます」

ポロス王「うそぉ! この嵐の中、攻めてきたの?」


ポロス王は、まさかアレクサンダーが嵐の中を攻めてくるとは思っておらず、戦闘準備をしていなかった。

こうして、強力なポロス王の象軍団もアレクサンダーの前に敗れ去った。(紀元前326年


ポロス王「いや~参りました」

大王「こっちこそゴメンね、いきなり攻めて」

ポロス王「でも久しぶりに強い敵と戦えて良かったですよ」

大王「ところでさ、ここが世界の果てだって聞いてきたんだけど、そうなの?」

ポロス王「え、世界の果て?」

大王「うん。あれ? もしかしてもっと東にも国があるの?」

ポロス王「はい。この東には私の国の10倍の領土の大国がありますよ」

大王「10倍!」

ポロス王「はい。『マガダ国』という国です」


世界は広く、まだまだ未征服の土地があった。しかしアレクサンダーの遠征にも、彼の人生にも、終わりの時が近づいていた。



第9話 大王、死す

世界の広さを知ったアレクサンダーは『オピス』という町で東方遠征の終了を宣言し、西に戻った。


途中、一行は『バビロン市』で休憩した。


大王「ここでちょっと休んでいくか。お土産とかも買わないといけないし」

友人「何日くらいここにいる予定?」

大王「わかんないけど、まぁゆっくりしていこうよ。もう遠征は終わったんだし、 ダラダラでいいんじゃない?」

友人「ダラリズムだね」

大王「遠征もさ、今じゃいい思い出だね」

友人「うん。帰ったら新聞記者とかすごい来るかもよ」

大王「うそ? そんなに有名人かな、おれ」

友人「めっちゃ有名人だよ。古代世界で最大の帝国を作ったんだもん」

大王「でも、結局みんなの領土を強引に奪っただけの気もするなぁ……」

友人「だけどさ、大王さんの遠征のおかげで大陸の東西文化が融合して、新しい文化が生まれたしょ?」

大王「え、そうなの? 知らなかった」

友人「できたんだよ、新しい文化」

大王「へぇ~。どんな文化?」

友人「『ヘレニズム文化』だよ。きれいな彫刻とか、自然科学とか、 なんかそんな感じの文化」

大王「おぉ~、よくわかんないけどカッコイイね♪」

友人「あ、ところでさ、もう日焼け治った?」

大王「だいぶね。でも今度は蚊に刺された。ほらここプクってなってるしょ? すげぇかゆいよ」

友人「なんか薬ぬれば?」

大王「風呂入ってさっぱりしてから塗るかな」

友人「けっこう風呂好きだよね」

大王「うん、好きだよ」

友人「じゃあさ、風呂入りながらダラダラするのって、もう最高?」

大王「めっちゃ最高! 考えただけでクラクラしちゃうね」

友人「おいおい、本当によろけるなよぉ。オーバーだな」

大王「う、うん……あれ? なんか本当にクラクラする……」

友人「おい? ちょっと」


アレクサンダーは『マラリア蚊』に刺されたことが原因で高熱を発し、倒れた。


大王「ねぇ、おれさぁ、死ぬのかなぁ……」

友人「何言ってるんだよ。世界を征服した君がこんなところで死ぬわけないじゃないか」

大王「いくら広い土地を征服しても、死んだら自分が横たわるだけの土地しか占められないって、 むかし誰かに言われたよ。ほんと、その通りだね」

友人「ポロス王からお見舞いの品が届いてるよ。滅びたペルシャ王家の遺族からも。 ほら、これは君がグラニコス川で戦ったあの武将からの贈り物だ。そしてこれは……」

大王「ありがとう」

友人「おいおい、なに弱々しい声出してるんだよ。しっかりしろって」

大王「言っておきたいことがあるんだ。ずっと心に引っかかってたんだけど……」

友人「なにさ?」

大王「もうずいぶん前のことだけど、グラニコス川の戦いの後、 おれさ、お腹痛くてギリシャに帰るって言ったでしょ?」

友人「うん」

大王「あれ、仮病だったんだ。ウソついてごめん」

友人「はは。なんだそんなことか。そんなの気づいてたよ」

大王「なんだ、そうか、よかった」

友人「じゃあ、おれも言わせてもらうけど。あのときの注射、本当はぜんぜん痛くないんだ」

大王「そっか、これでおあいこだね」

友人「どうせ今回も仮病なんだろ? なあ?」

大王「ふふ……。無理だよ、もう」

友人「君はいつも仮病を使って駄々をこねるからな。今回は何が望みなんだよ? まだ遠征がし足りないのか? だったら付き合うよ。まだ征服すべき土地はいくらでもあるんだ。だから、さっさと元気になれよ」

大王「おれがいなくなったら、おれの帝国はどうなるのかな……。またバラバラになって争いが 始まるのかな……」

友人「そんなことないよ。君の帝国は君が治めつづけるんだ。生きて、君が治めつづけるんだ。バラバラにはならないよ」

大王「……自分の死期くらい、わかるよ」

友人「君は自分で長生きするって言ったじゃないか。長生きして、 アレクサンドリアで海を見ながらのんびりするんだろ? 風呂に入りながらダラダラするんだろ? 合コンの自己紹介で笑いを取るんだろ?」

大王「……ふたりでさ」

友人「?」

大王「ふたりでアレクサンドリアに住んだら楽しいなぁって話したこと、覚えてる?」

友人「覚えてるよ」

大王「おれが死んだらアレクサンドリアに埋葬してくれ」

友人「……」

大王「そして君もあのときの約束どおり一緒にアレクサンドリアに住んでよ。あそこはいい町だ。ね、お願いだ」

友人「……わかった」

大王「墓は海の見える丘の上に……」


紀元前323年6月

アレクサンダー大王はバビロンで死去した。(享年33歳)

友人は約束どおりエジプトのアレクサンドリア市に大王を埋葬し、エジプト王となって大王の墓を守りつづけた。



最終話 彼が残したもの

そして時は流れた・・・・・

ここはエジプト王国の首都アレクサンドリア市。


大王「よ!」

友人「わぁ! びっくりしたぁ~」

大王「びびった?」

友人「びびるよ。ていうか死んだんじゃなかったの?」

大王「死んだよ。でも今日は神様に外出許可もらったの」

友人「そうか。幽霊か」

大王「ちゃんと外国風にゴーストって言ってくれ」

友人「でも懐かしいな。懐かしいよ。なんかすっごい嬉しい……。元気だった?」

大王「元気だったよ。おまえは?」

友人「元気だったよ」

大王「あ、そういえばさ、エジプト王になったんだって? おめでとう!」

友人「君が死んだ後、帝国は崩壊したんだ。で、君の部下のうち有力な人たち何人かが、それぞれ王を名乗って好き勝手に建国したんだよ」

大王「それでおまえはエジプト王になったってわけかぁ」

友人「うん。君との約束があったからね」

大王「あの墓の場所、気に入ったよ。ありがとう」

友人「エジプト王国のアレクサンドリア市は、今や世界最大の都市に発展したよ」

大王「マジで?」

友人「ピラミッドよりでかい灯台や、巨大な図書館や、動物園や、 あと、原始的な仕組みだけど自動ドアや自動販売機まであるんだ」

大王「うっそぉ、すごくない?」

友人「君が生み出してくれたヘレニズム文化のおかげさ。芸術も発展してるよ。宇宙の研究も進んでるよ」

大王「宇宙?」

友人「うん。地球って丸いんだよ、知ってた?」

大王「え! 丸いって……? なに? なに言ってるの?」

友人「驚いた? でもね、科学の発展ですっごいいろんなことがわかってきてるんだ。 図書館長の『エラトステネス』なんて地球の大きさをほぼ正確に計ったんだ」

大王「そんなことできるの?」

友人「数学を使えばできるんだよ」

大王「なんか、すごいことになってるな……」

友人「もしかして人類は将来、宇宙にだって行けるかもしれない。 僕たちの子孫は、君がたどり着けなかった世界の果てに到達できるかもしれないよ」

大王「そうなったら素敵だね」

友人「素敵だよ。エジプト王国がある限り、この文化を守って見せる。だから安心して天国でダラダラしててよ」

大王「うん。そうする。あ、もう時間だ。じゃ、がんばってね!」

友人「ねぇ、大王さん」

大王「ん?」

友人「次はいつ会えるかな?」

大王「科学の力を使えば世界の果てにだって到達できるんだろ」

友人「うん……」

大王「そうなったらきっと人類は天国にだって遊びに来れるさ」

友人「そうかもね」

大王「そうだよ。その時までダラダラしながら、気長にまってる」

友人「見ててよ、君が残してくれたこの文化がどんなふうに発展していくか」

大王「見てるよ。楽しみにしてる。じゃあね」

友人「ああ、またね」


大王の遠征開始から、エジプト王国が最後の女王『クレオパトラ』の代で滅亡するまでの約300年間を、ヘレニズム時代という。

ヘレニズム時代は、偉大な科学と芸術の時代であり、アレクサンダーが人類に残した最も大きな遺産だった。


アレクサンダー 完


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