【物語】織田信長 歴史を楽しく
あーりーです。
歴史を楽しく身近に感じてもらいたいと思って書きました。
小説でもなく、シナリオでもなく、少し変わった会話形式の物語です。
ころんと寝転びながら、気楽に読んでいただけると嬉しいです。
それでは始まり始まり~。
第1話 デビュー戦 桶狭間の戦い
1560年5月。
戦国武将・今川義元が織田信長の領土に侵入して来た!
信長「おい、やばいかも知らん」
家臣A「なした?」
信長「なんかさ、今川が攻めてきたんだよね」
家臣A「まじで!? 大軍?」
信長「けっこう大軍。2~3万くらい」
家臣A「やばくない?」
信長「やばいよ、どうする? こっちの兵力は2500人くらいしかないよ」
家臣A「全然だめじゃん」
信長「逃げるか?」
家臣A「いや、でもそれカッコ悪いんでない?」
信長「でもな~、戦っても負けるしな~……」
家臣A「あ、いいこと考えた!」
信長「なになに! 教えて!」
それから十数日の間に今川の大軍は快進撃を続け、どんどん織田領の奥深くに侵入してきた。
そして運命の5月19日。
戦国史の曲がり角。
信長「じゃ、出陣するわ」
家臣A「うん、いってらっしゃい。留守は任せてよ」
信長「ああ、頼む。でも勝てるかな。むこうは大軍だし」
家臣A「俺の言った通りにやれば大丈夫だよ」
信長「あ~すげぇ緊張してきた」
家臣A「うまくいくって! 心配するなよ」
信長「なんか、緊張で、ちょっと吐きそうだ」
家臣A「歌でもうたってリラックスすれば?」
信長「あ、いいね、じゃ歌うかな」
人の命は50年~♪
宇宙にくらべれば短い人生~♪
あれもこれも夢まぼろしさ~♪
家臣A「どお? 落ち着いた?」
信長「まあね。よし、じゃ行ってくるわ」
家臣「気ぃつけてね。いってらっしゃ~い」
1560年5月19日午前2時、織田信長はわずか2500人の兵を率いて清洲城を出発。
こうして、日本の歴史を変えた「桶狭間の戦い」が始まる。
第2話 目指せ天下!
信長は勝った。
誰もがおどろく方法で圧勝した。
信長のこの勝利は戦国諸国を震撼させた。
部下のサル「いや~さすがは信長さん、あの大軍を破るとは!」
信長「ほんっと、自分でも信じられん。勝っちゃったよ~、すごくない?おれ」
部下のサル「信長さんは天才ですな」
信長「いや、でもね、あの作戦、俺が考えたんじゃなく、家臣Aが考えてくれたんだ」
部下のサル「いずれにせよ、敵の大軍を完全に無視してぐるっと迂回し、今川軍の隊列を側面から奇襲してダイレクトに今川義元ひとりを攻撃するとは……驚きです」※諸説あり
信長「こっちの兵力は2500人、むこうは3万人。まともに戦ったら勝ち目はないけど、敵大将・今川義元ひとり対2500人だったら、ぜったいに勝てるからね」
部下のサル「見事な発想ですな~」
信長「いや、家臣Aのおかげだよ」
部下のサル「家臣の提案を受け入れるのもリーダーの力量です。さすがは信長さん!」
信長「えへへ。。。。てれるなぁ~」
信長のとったこの作戦は「中入れ」と呼ばれるもので、最も芸術的な戦術のひとつとされている。
「中入れ」は武将たちの間でしだいに密かなブームとなるが、成功させるには卓越した軍事的才能が必要だったため、あまり頻繁には使われなかった。
部下のサル「信長さんなら天下が獲れますよ!」
信長「いやいや、それは無理っしょ(まんざらでもない笑い)」
そこへ家臣Aが登場。
家臣A「いいじゃない、天下。獲ってみようよ!」
信長「おおっ……おまえまで……」
家臣A「この乱世が始まってもう100年くらいたつけど、そろそろ誰かが天下を獲って 平和な時代を作らないとやばいしょ」
信長「でも、だからって俺には出来ないよ。強い奴たくさんいるし…」
家臣A「今みんな『天下は俺のものだ~』とか何とか言ってるけど、実際に天下を獲れる 実力とやる気を両方持った奴って、武田信玄くらいしかいないよ」
信長「え~、上杉謙信はぁ?」
家臣A「あいつ戦いは強いけど野心がないもん」
信長「じゃあ、毛利一族は?」
家臣A「あいつらはもう守りに入っちゃってるから問題外。 天下統一の邪魔者にはなるかも知らんけど、ライバルにはならないよ」
信長「でもな~、みんな何か言わないかな『でしゃばりめ!』とか…」
家臣A「いいじゃん、言わしとけば」
信長「えーー、だってすげえ強いやつとかに目ぇつけられたらやばくない?」
家臣A「なんとかなるよ、信長さんは運が良いから」
信長「運で天下が獲れるかよ!」
家臣A「けっこう運って大事だよ。やるだけやってみ」
信長「う~~ん…。じゃあ、ちょっとだけやってみるかな」
家臣A「よし、そうと決まればまず隣の斎藤さんを攻めよう!」
信長「え~、そんなことしたらヤな人だと思われない?」
家臣A「だって、天下を獲るには政治の中心の京都を自分の領土にしなきゃいけないんだよ。 ここから京都に行くには斎藤さんの領土を通らなきゃ行けないし、やっぱ戦うしかないよ」
信長「でもさ、ちょっとやって無理そうだったらすぐやめようね。 斎藤さんに迷惑だし」
家臣A「大丈夫、うまくいくって!」
信長「うーん……まぁ、とりあえずやってみようか」
こうして信長は、斎藤さんを攻めることになった。
しかし、さっそく問題が発生した!
第3話 斎藤さん
斎藤さんはてごわかった。
なかなかやっつけられない。
信長「もうさぁ、仲直りした方が良いんじゃない? こっちから謝ってさ」
家臣A「いや、まだあきらめるのは早い。何か手があるはず……」
信長「だって、攻めても攻めてもやられてるしさー。やばいよ」
家臣A「足がかりとなる中継基地みたいなものが造れればいいんだけど」
信長「どこらへんに?」
家臣A「できれば、斎藤さんのお城の目の前あたりに」
信長「おいおい、敵の領土に基地を造るなんて、無理だよ」
そこへ、部下のサルが現れた。
部下のサル「ちょっとすいません」
信長「おお、サル。なした?」
部下のサル「斎藤さんの領土内に基地を造る話ですが、出来るかもしれません」
信長「ほんと!まじで?」
部下のサル「はい」
信長「でも、敵の城の目の前に基地を造るなんて、本当に出来る?」
部下のサル「まあ、お任せください」
サルは知恵を発揮した。
そしてみごとに基地を完成させた!
信長「すげ~なサル! 本当に敵の城の目の前に基地を造るなんて!」
部下のサル「これで斎藤さんをやっつけられますね」
信長「ねぇ、どうやって造ったのさ? 教えて」
部下のサル「プラモデルと同じですよ」
信長「プラモデルと?」
サルはあらかじめ建築材料を全て作りそろえておき、それを川に流し、建設予定地のそばで拾い上げた。
あとはプラモデルのように組み立てるだけである。こうすれば、敵の目に触れて作業する時間を最小限にとどめることができる。※諸説あり
信長「なるほどね~。すごいな、おまえ」
部下のサル「恐れ入ります」
このときサル(豊臣秀吉)が造ったこの基地はふつう「墨俣の一夜城」と呼ばれている。
実際には一夜で完成したわけではなく、準備から仕上げまで数ヶ月かかったが、 やたら早く完成したというインパクトの強さから、いつしか一夜城と呼ばれるようになった。※諸説あり
信長「これで斎藤さんに勝てる!」
こうして信長は斎藤さんをやっつけ、今まで斎藤さんが使っていた城に住み始めた。
信長「いや~嬉しい! おれ一躍有名人だね」
家臣A「今川義元の大軍を破って、さらに斎藤さんをやっつけたんだから、当然だよ」
信長「みんなおれのことすごいと思ってるんだろうなぁ~。にやにや」
家臣A「けっこうびっくりしてると思うよ。マスコミとかも注目してるし」
信長「やばい! サイン考えてない!」
家臣A「サインが欲しいって言われたら困るね。考えといたほうがイイよ」
信長「普通のサインじゃヤだな。なんか、かっこいいのないかな……」
家臣A「天下布武って、いくない?」
信長「天下布武? なにそれ?」
家臣A「武力で天下を統一する!っていう意味。かっこいいしょ」
信長「あ、それいいね。それにしよっかな」
家臣A「そうしな」
信長「じゃそうするわ。天下布武、いいね~」
この頃から信長さんは『天下布武』の印を用いるようになり、武力統一の意思を人々に知らしめた。
第4話 ついに京都へ
ピンポーン。
信長の玄関のチャイムが鳴った。
信長「誰だろう、こんな時間に」
訪ねてきたのは、将軍様だった。
将軍「よ!おれだよ、将軍様だよ。元気?」
信長「おお!将軍様、ようこそ。ささ、汚いところですが上がってください」
将軍「悪いね、いきなり来て。本当は電話してから来ようと思ったんだけどさ、 ケータイ解約しちゃったんだよね、金なくてさ」
信長「ところでどうしたんです、こんな夜中に。将軍さまといえば京都でどっしりと構えているえらいお方のはずですが……」
将軍「実はさ、調子に乗った戦国武将の一人が京都を占領しちゃってさ、 追い出されちゃった」
信長「え!」
将軍「びびった? でもマジだよ。本当に追い出されて、寝るところも金もないんだ。今晩、泊めてくれない?」
信長「そ、それはいいですけど……。京都を占領した奴ってどんなやつですか? 京都を占領したということは その武将が天下を取ったということになってしまうんですか?」
将軍「え、なに、もしかして天下狙ってるの?」
信長「いや、そんな本格的じゃないんですけど、ちょっとたしなむ程度に…」
将軍「マジで? 流行に流されやすいな~おまえも」
信長「お恥ずかしい」
将軍「じゃあさ、取引しない?」
信長「なんですか、いきなり……(汗)」
将軍「おれを京都に連れてって」
信長「将軍様を京都に?」
将軍「うん」
信長「でも、京都は今、強い武将に占領されてるんですよね? そう簡単には京都に入れないじゃないですか」
将軍「だからおまえに頼んでるんじゃないか。いま京都を占領してる悪い奴をやっつけて、おれを京都に帰らせてくれよ。そしたらおまえにたくさん褒美をやるよ。な? いいだろ?」
信長「えー、マジっすか~。京都を占領してる奴って強いんすよね? やばいっすよー」
将軍「バカおまえ、京都に入るのは天下統一の第一歩だろ?」
信長「まあ、そうですけど……」
将軍「普通おまえみたいな田舎武将が京都になんて入ったら、みんなの反感を買うんだよ。でも今回は、将軍のおれを無事に京都に送り届けるという大義名分があるだろ。こんなチャンスはめったにないぞ」
そこへ家臣Aが現れた。
家臣A「いいじゃない、京都。行こうよ!」
信長「うーん、家臣Aがそう言うなら……」
将軍「よし決まりだ! で、出発はいつにする?」
家臣A「善は急げで、さっそく明日というのはどうでしょう?」
将軍「いいね、そうしよう。頼むぞ!」
こうして大義名分を手に入れた信長は、念願の京都に出発する事になった。
第5話 根回し
深夜。
信長「さ~て、明日は京都に出発か~。なんか、どきどきするな♪」
家臣A「京都に出発する前にやっておかなきゃならない事があるよ」
信長「え、なにさ?」
家臣A「根回しだよ」
信長「根回し? まじで? なんかそれって地味じゃない?」
家臣A「地味な事からコツコツやっていかなきゃ天下なんて取れないよ」
信長「誰に根回しするの?」
家臣A「ここから京都までの道のりにいる戦国武将全員と、あと、武田信玄」
信長「えーー、ホントに~?」
家臣A「うん」
信長「メンドクサイ」
家臣A「だめだよ。一応かたちだけでもみんなに了解とっておいたほうがスムーズに事が運ぶから」
信長「でもなー、うーん」
家臣A「田舎の成り上がり大名がいきなり将軍様を連れて京都に入ったら、みんなすっげぇ警戒するしょ? その警戒心を和らげるためにも、あらかじめ報告しておかなきゃ」
信長「うーん、でもみんなに電話するのって緊張するしな……」
家臣A「電話しなかった方が後でかなりやばいよ。いじめられるよ」
信長「まじ? 靴とか隠されるかな?」
家臣A「ああー隠されるね。2回隠されるね」
信長「え! 2回も……。それはやだな」
家臣A「あと、ふたりずつ組になってとか言われたとき、あまったりするね」
信長「わかった。電話するよ」
信長さんは電話をかけた。
信長「あ、信玄。ひさしぶり。いまウチに将軍様が遊びに来てるんだよね。でさ、明日なんだけど。将軍様を京都まで送っていくんだ。ホントただ送るだけで、べつに天下を取るとかそういうの関係ないから。じゃ、また~」
家臣A「うまくいったね」
信長「ふ~、なんとかね(汗)」
このあとも信長は何人かの戦国武将に電話を入れ、今回の京都行きに他意がない事を説いて回った。
ほとんどの武将は「将軍様の要望じゃしょうがないけど、変な気おこして天下を狙ったりするなよ~」と、信長の京都入りをしぶしぶ認めてくれた。
しかし、一人だけ「ぜったい許さんコンチクショウ!」と激怒する武将がいた。南近江の武将、六角大王である。
第6話 みっちー
翌朝。
信長は京都行きを六角大王に反対され、落ち込んでいた。
信長「やっぱやめない?」
家臣A「心配ないって」
信長「だって六角大王、めっちゃ怒ってたよ」
家臣A「他のみんなはOKしてくれたんだから、ひとりくらいに反対されたって大丈夫だよ」
信長「……そうかなぁ」
家臣A「そうだよ、平気だって」
信長「……うーん、わかった、じゃあ、出発するか」
家臣A「いってらっしゃい、おれは行かないけどね」
信長「え?」
家臣A「おれは留守番してるわ」
信長「なんでだよ~、ずるいよ~」
家臣A「だって家に誰もいないとやばいしょ」
信長「じゃ、おれも留守番してる」
家臣A「だめだよ。信長さんは京都に行かなきゃ」
信長「いや、いいよ、やめとく。よく考えたらなんかお腹痛いし……。体調悪いんだよね、実は」
家臣A「ウソつくなよ。ほら、さっさと出発しないと夜になっちゃうぞ」
信長「おまえがいないと心細い……」
家臣A「それなら大丈夫」
信長「なんで?」
家臣A「頼りになる奴をひとりつけるから」
信長「だれ?」
家臣A「紹介するよ。お~い、みっちー」
家臣Aが手招きすると、一人の美青年がやってきた。
みっちー「やぁ。みっちーだよ」
信長「……みっちー、って? こんな奴いたっけ?」
みっちー「僕は途中入社だから、君が知らないのも無理ないよ」
信長「うぅ……そうなのか……」
みっちー「僕が君を京都まで無事に連れて行くよ。まぁよろしく」
こうして1568年9月5日、信長と将軍様とみっちーは京都に向けて出発した。この頃から、信長の天下統一は急速に具体化してゆく。
しかし、行く手にはケンカ上手で知られる六角大王が待ち構えていた!
第7話 鉄砲と商業
六角大王はケンカのテクニックをいろいろと知ってい手強いことで有名だ。
その六角大王が今、信長の行く手をはばんでいた。
信長「うわ~、六角大王めっちゃこっち見てる。みんな、目を合わせるなよ」
みっちー「ここは僕にまかせなよ」
信長「マジで? たのもしいな!」
みっちー「信長さん、君がわざわざ電話でみんなに根回ししたのは何のためだと思う?」
信長「え?」
みっちー「根回しってのは、こういうときに役に立つんだよ。まぁ見てな」
みっちーは近隣諸国に呼びかけ援軍を要請した。
そのため信長の軍隊はみるみる膨れ上がっていった。
みっちー「数が多ければこっちのものさ」
みっちーはその大軍を率いて、あっというまに六角大王をやっつけてしまった。
信長「おお~、やるなぁ、みっちー」
みっちー「いくらケンカ上手だろうがテクニシャンだろうが、大軍にはかなわないということさ」
信長「うんうん」
みっちー「君が本気で天下を狙っているんなら、これだけは覚えておきな。時代は変わりつつある。 これからはいくら小技を使ったってだめさ。圧倒的大人数で敵を蹴散らす! これだよ」
信長「うーん、なんか難しくてよくわかんないな……」
みっちー「合理的にいけってことさ」
信長「……??? わかるように言ってよ。具体的にどうすればいいの?」
みっちー「そうだねー、これからは鉄砲の時代になるだろうから、鉄砲部隊の編成とかを考えておいた方が いいかもね」
信長「鉄砲!? 鉄砲ってあのパーーーンっていうやつか? あれは高いぞ。とても買えない」
みっちー「金がないなら、金を稼げばいいんだよ」
信長「そんな簡単に金が稼げるかよ~」
みっちー「それが、稼げるんだよ。簡単に」
信長「え! ホント? おしえて!」
みっちー「つまりこういうことさ、将軍様にこういうんだ……ごにょごにょ(耳打ち)」
信長「ふーん、そんなものかね。まあ、やってみるよ」
とにかく、こうして信長は将軍を無事に京都まで送り届けた。
将軍「よ、信長! おまえのおかげで無事に京都に戻る事ができたよ」
信長「えへへへ」
将軍「京都を占領していた悪い武将たちも、おまえがあの六角大王をやっつけたと聞いて、 ビビって逃げちゃったよ」
信長「よかったですね、正式に将軍の座につけて」
将軍「それもこれもみんなおまえのおかげだ。そのお礼といっちゃあ何だが、 おまえを副将軍にしてやろうかと思ってるんだ。どお?」
信長「うわ、なまら魅力的っすね」
将軍「ふふーん、いいだろ?どうだ、やってみない?」
信長「でも副将軍ってけっこう大変なんすよね。おれにできるかなー?」
将軍「慣れれば楽だよ。定時で終わるし、休みも多いしさ」
信長「いやーでも、できそうにないっすわ。せっかくですけど」
将軍「うーん、そうか。残念だな。他に欲しいものはないか? 金とか、領土とか」
信長「いえ、金も領土もいりません」
将軍「なに、金も領土も副将軍の地位もいらないのか?」
信長「はい。ただ……」
将軍「ただ?」
信長「ある町に代官をひとり設置したいんですが、いいっすか?」
将軍「ははははは。無欲な奴だな。いいよ。好きにしな」
信長「ありがとうございます」
将軍「で、どこの町さ?」
信長「はい。堺なんかどうかな、なんて」
将軍「堺ね。ふーん。あんな町が良いのか? まあいいや。好きにしろよ」
こうして信長は堺の町に代官を置くようになる。
みっちー「うまくいったかい?」
信長「うん。でも本当にこんなんで金が儲けられるの? 堺なんてちっぽけな町だぞ」
みっちー「堺は有数の貿易都市だ。それに鉄砲屋も多い。堺に代官を置く事で、 君は貿易による利益と鉄砲を自分のものにできるんだ」
信長「貿易と鉄砲生産か。最近ハヤリの『商業』ってやつだね」
当時の戦国武将の経済基盤は農業が主だった。
ところが信長はその常識を破り、「商業」を基盤とした経済体制を作り上げてゆく。
第8話 幕府をひらく資格
ある夜。
信長「ねぇ、みっちー。おれの天下取りって、かなり良いところまで行ってるよね」
みっちー「そうだね。なんだかんだいって、京都も支配しちゃってるしね」
信長「だよね? おれって京都を支配してるよね?」
みっちー「うん。将軍様を京都に送って以来、事実上、君は京都の支配者さ」
信長「むふふふ。ついこの前まで地方でひっそりと暮らしていたのに、おれってすごいな~」
みっちー「京都は支配したけど、まだ天下統一とはいかないね」
信長「なんで? 京都を支配した人イコール天下人でしょ?」
みっちー「建前はそうだけど、現実はそんなに甘くないさ。全国にはまだまだ強い奴がのさばってる。そいつらをぜんぶ服従させなくちゃね」
信長「あとさ、おれもちょっと勉強したんだけど、正式に天下を取るには『幕府』っていうのを作らなきゃならないんでしょ?」
みっちー「うん」
信長「そっかー、作っちゃおっかなー、ば・く・ふ♪」
みっちー「あのさ、……ショックな事を言うようだけど」
信長「ギクッ! ……なに?」
みっちー「幕府を開くにはね、資格が必要なんだ」
信長「え?」
みっちー「資格」
信長「どんな? それ難しいの? おれ、がんばって取るよ」
みっちー「生まれながらの資格だから、今からがんばってもしょうがないよ」
信長「どんな資格?」
みっちー「源氏の血をひいてなくちゃならないんだ、幕府を開くには」
信長「源氏って?」
みっちー「昔いたしょ、みなもとのナントカとかいう人たち」
信長「源頼朝とか?」
みっちー「そうそう。そういう人達の子孫じゃないと幕府は開けないんだ」
信長「えーーーー、まじでーーーーーー???」
みっちー「そういう決まりなんだ。昔から」
信長「おれは、だめってこと?」
みっちー「君の先祖は源氏?」
信長「……いや、違うと思う」
みっちー「ははっ、じゃあダメさ」
信長「……(汗)」
みっちー「残念だったね」
信長「……(涙)。でもさ、いまどき源氏の子孫なんていう人いるの?」
みっちー「いっぱいいるよ。本当かどうかは別にして、世間で言われてるのは徳川家康とか武田信玄とか……」
信長「そういえば、将軍様は? あの人ももしかして源氏?」
みっちー「ぴんぽーん。あの人は源氏の中の源氏さ」
ピロロロ……
ピロロロ……
信長「あ、電話だ。……はい、織田ですけど。あ、将軍様。どーも。この前はありがとうございました」
将軍「よ! 信長。元気?」
信長「はい。おかげさまで」
将軍「実はサ、おれ、幕府作ろうかと思うんだよね、協力してよ」
信長「げげっ!」
将軍「将軍を名乗ってて幕府を開かないなんて変だろ? だからさ、おれもご先祖様みたいに幕府作るわ」
信長「え、えーと、それは……」
将軍「だってほら、今は実質的におれが天下人だろ? ちゃんと幕府を開いて世の中を安定させるのが、おれの責任でもあるし」
信長「いや、でも、将軍様ってべつに天下取ったわけじゃないですよね?(汗)」
将軍「まあ正確に言うならね。でもさ、おれって人望あるし、名前も将軍様だし、実際にこうして京都に偉そうに存在してるわけだし、やっぱ天下人にふさわしいわけよ」
信長「でも将軍様が京都に住めるようになったのは、おれのおかげっすよね?」
将軍「うん、だからちょっとは感謝してるよ。おれが幕府開いたらイイ役職につけてやらんでもないぞ。 わははははははははは」
信長「は、はぁ……」
将軍「そんなわけだ、協力頼むな。じゃ、ばいば~い!」
この頃から、信長と将軍の関係は悪化してゆく。
第9話 信長ピンチ!
信長と将軍の仲は、日に日に悪くなっていった。
二人の言い分は以下の通り。
信長「ちょっと待ってくださいよー。将軍様がそんな風に偉そうにしていられるのは、おれが京都まで連れてきてあげたからじゃないですか~。おれのおかげっすよぉ」
将軍「うるさいぞ。おれは将軍だ。いうことを聞けよ」
信長「あ、そんなこといっていいんですか?」
将軍「な、なんだよ……汗」
信長「また悪い奴が京都に乱入してきても、今度は助けてあげませんよ」
将軍「むむ……。ふん、いいさ、おまえなんか頼りにするもんか!」
その夜。
将軍「なぁ、側近くん」
側近くん「はい」
将軍「おれ今日さ、信長にひどいこと言っちゃったんだよね」
側近くん「それはいけませんね」
将軍「信長のやつ、怒ってるだろうな~。あした謝っちゃおうかなぁ」
側近くん「だめです」
将軍「え? なんで?」
側近くん「あなたは将軍様ですよ。あんな田舎武将に頭を下げる事はありません」
将軍「でもなぁ、あいつのおかげでおれが京都にこうして住んでいられるというのも事実だし……」
側近くん「信長が目障りじゃありませんか?」
将軍「そりゃまぁ、ちょっとは」
側近くん「目障りでしょう?」
将軍「まあね。あいつ、おれが幕府を開く事にも反対してるしな……」
側近くん「では、ジャマな信長を排除しましょうね」
将軍「え! どうやって? あいつの軍隊けっこう強いぜ~」
側近くん「いい方法があります」
将軍「なになに?」
側近くん「あなたは将軍なのですから、その権威を利用して全国の武将に『信長むかつく。誰か何とかしてくれ!』令を出せばいいのです」
将軍「おお~、なんと卑劣な、そしてクセになりそうな作戦。でかした!」
側近くん「にやり」
将軍「にやり♪」
1570年、将軍は、信長に反対する勢力をつくるため、全国の有力武将と連絡を取った。
第10話 笑われても本気で目指す
信長「あのさ、最近、『信長むかつく同盟』というのができたらしいんだよね」
みっちー「マジかい? そいつはやばいねー」
信長「でさ、おれ、もう天下狙うのやめようかと思うんだ。みんなにボコボコにされたらやだもん」
将軍の呼びかけによって結成された『信長むかつく同盟』には、上杉、朝倉、武田、毛利、本願寺、比叡山などの多くの勢力が参加した。
この時期が信長の人生最大のピンチといって良い。
みっちー「おいおい、なにを弱気なこと言ってるんだい?」
信長「えー……だってさー……」
みっちー「いいかい、こんなときにはガツンといってやるのが一番さ」
信長「どゆこと?」
みっちー「ふふ、先制攻撃さ」
信長「そんなの相手を怒らせるだけだよ。謝ろう、よし、決めた、謝ろう!」
みっちー「何を謝るんだよ、何も悪いことしてないじゃないか」
信長「調子こいた、というのは悪い事じゃないかな?」
みっちー「まぁ、とにかく。その同盟参加者の中で一番弱そうなのは誰だい?」
信長「……朝倉さんかな?」
みっちー「よし、じゃあまず朝倉さんをガツンとやっつけよう」
信長「いや、やめとこうよ。どうせおれなんて源氏の子孫じゃないから幕府開けないし。天下なんて大それた夢だったんだ」
みっちー「源氏とか幕府とか、そんな古い考えは捨てるんだ。そんなカビ臭い時代は君の手で終わらせちゃえよ」
信長「……うーん」
みっちー「世界を作りかえるんだ。古い常識は捨てるんだ」
信長「世界を作りかえる? ははっ……神様じゃあるまいし」
みっちー「神になりたいのなら本気でそれを目指せばいい。誰に反対されても、笑われてもね。君が望むのなら、僕たち家臣団は何だって協力するさ。僕たちはそのためにいるんだ」
信長「うぅ……わかった。ありがと。なんかやる気出てきたかも」
みっちー「じゃあさっそく朝倉さんを攻撃する準備だね」
信長「うん」
みっちー「でもね、ひとつ問題があるんだ。重大な問題がね」
信長「え! なに?」
みっちー「ブラザー浅井のことはもちろん知ってるね?」
信長「ブラザー浅井、うん、おれの義理の弟だ」
みっちー「もし、もしだよ、僕たちが朝倉さんを攻めてるときにブラザー浅井が裏切って攻めてきたら、僕たちは袋のねずみだ」
信長「……汗」
みっちー「ブラザー浅井に裏切られたら、地理的に非常にまずいのさ」
信長「あぁ、朝倉さんとブラザー浅井に挟み撃ちされる事になるね」
みっちー「そう、絶体絶命。逃げ場がない」
信長「ははっ、でも、そんな事にはならないよ。だってブラザー浅井はおれの義理の弟だよ。兄の俺を裏切るなんて……ありえないよ」
というわけで1570年、織田信長の軍隊は朝倉討伐のため出陣した。
戦いは信長に優位に進み、あと一押しで勝てそうだった。
しかし、ブラザー浅井が裏切った!
第11話 信長敗北
1570年4月28日。
信長はまだブラザー浅井の裏切りを知らない。
その頃、信長は…
信長「我が軍、優勢だね~。いいね~」
家臣A「ねぇ、今ニュース速報で見たんだけど、めっちゃビビることあったさ」
信長「え? なにさ? いや、待って、当てるわ」
家臣A「当ててみ」
信長「何かな~。芸能関係?」
家臣A「違う」
信長「政治?」
家臣A「うーん、近い」
信長「えー政治で近いの? 待って、言わないでね。当てるから」
家臣A「政治って言うより軍事とかかな。ヒントいる?」
信長「うん」
家臣A「おれらに関係あります」
信長「えーおれらに関係ある事で軍事関係……。今のこの戦いに関係ある?」
家臣A「あ~近くなってきた」
信長「え、近い? あ~なんかわかりそう……。でも出てこないな~」
家臣A「ギブアップ?」
信長「他にヒントないの?」
家臣A「なんで? わかんない? すげぇおれらに関係ある事でしょ」
信長「その答え聞いたらサ、あ~!って思う?」
家臣A「思うね。かなり思うね。あ~!って。失敗した~!って」
信長「え! 失敗!」
家臣A「やばい~って思うね。おれも思ったも」
信長「まさか……」
家臣A「わかった? 言ってみ。3回まで言えることね」
信長「え、もしかしてさ、ブラザー浅井、裏切ったの?」
家臣A「ピンポーン」
信長「うっそ! ブラザー浅井がおれを裏切ったの?」
家臣A「うん。こうなったらさっさと逃げた方がいいね。早くしないと朝倉さんとブラザー浅井に挟み撃ちされちゃうよ」
信長「逃げられるかな?」
家臣A「誰かが敵軍を食い止めてくれれば、なんとか逃げ切れる」
そこへ部下のサルが現れた。
サル「信長さん、ここは私にお任せを!」
信長「おお~サル!」
サル「私が敵を食い止めているすきにお逃げ下さい!」
敵を食い止めて味方を逃がす役割を殿軍(しんがり)という。
殿軍は99%死んでしまう。
このとき、サル(豊臣秀吉)はこの役目を買って出た。
信長「サルぅ~おまえの死は無駄にはしないぞ~」
サル「信長さん、早く行ってください! 敵が来ます!」
信長「おおう! じゃあお言葉に甘えて、逃げる!」
信長は命からがら逃げ出し、2日後の4月30日にようやく京都にたどり着いた。
信長の今回の敗北を最も喜んだのは将軍様だった。
そして彼は、信長打倒のさらなる罠をしかけていた。
第12話 戦国最強・武田信玄
数日後。
サルは無事に戻ってきた。
信長「サル~~、無事だったぁ~?」
サル「いやぁ~まいりましたね。でもなんとか無事でした」
信長「それにしてもさ、ブラザー浅井むかつかん? ふつう裏切るかぁ?」
サル「朝倉さんとブラザー浅井のコンビプレイは手強かったです。あの二人は早いところやっつないと厄介ですね」
信長「朝倉さんとブラザー浅井、ふたりまとめてやっつけてやるか。おれを怒らせると怖いぜぇ~」
サル「おお! 信長さん、かっこいい!」
信長「え、ほんと? えへへ。よぉ~し、やってやるぞ!」
信長は朝倉&浅井コンビの打倒を決意した。
その頃、将軍様は武田信玄に電話していた。
将軍「信玄、明日ひま?」
信玄「え? なんでですか?」
将軍「明日さ、京都に来て信長をやっつけてくれない?」
信玄「えー、でもなー……」
将軍「信長のヤツ、逃げ帰ったばかりで弱ってるから、今がチャンスだと思うんだ」
信玄「うーん、おれ明日ちょっと用事あるんすよね」
将軍「そんなぁ、頼むよ。信長がいなくなれば京都の居心地も良くなるんだよ。今のままじゃ窮屈でさ」
信玄「うーん、でも、明日は合戦の予定が入ってるしなぁ、無理っすわ」
将軍「えーまじでー? おまえのこと頼りにしてたのにな~。ショックだよ」
信玄「スケジュールが空いたら連絡しますよ」
将軍「……わかった。連絡待ってる(涙)」
一方、信長の決意は揺らぎ始めていた。
信長「……やっぱ、やめようかな」
サル「え?」
信長「朝倉さんとブラザー浅井をやっつけるの、やっぱやめようかな」
サル「なんでですか???」
信長「だってさ、相手は二人だし、なんか負けそうじゃない?」
サル「そ、そんなネガティブなこと言わないで下さいよ~(汗)」
信長「それにおれ、争い事とか好きじゃないしさ。みんなが嫌な思いするしょ、勝っても負けても」
サル「それはそうですが。でも天下を取るという夢は?」
信長「うーん、取れたら取るかな。無理しないで自然体でいくよ」
サル「えっとー、じゃあ、こっちも誰かとペアを組んで、ふたりVSふたりで戦ったらどうです?」
信長「あ、なるほどね。それなら勝ち目あるかも」
サル「ね、そうしましょうよ!」
信長「そうしよっかなー。でも誰と組む?」
サル「幼なじみの徳川家康は?」
信長「いいね! そうしよう!」
こうして1570年6月、信長と家康の連合軍は朝倉・浅井を撃破した。(姉川の戦い)
その後も信長はコツコツがんばって、『信長むかつく同盟』を少しずつ切り崩していった。
そんなある日。
みっちー「嫌な噂を聞いたよ。武田信玄が君をやっつけに京都にやってくるかも知れない」
信長「えー! ウソでしょ?」
みっちー「ありえない事じゃない」
信長「し、信玄って、日本で最強の武将なんでしょ?」
みっちー「そう、めっちゃ強いね。信玄が本気を出せば君なんて一瞬でやられちゃうよ」
信長「あ、でも、信玄がこの京都に来るには徳川家康の領土を通らなきゃならないしょ? だから家康がやっつけてくれるかも」
そのとき、大声を上げてサルが駆け込んできた。
サル「大変です! 武田信玄がこっちに向かってるそうです!」
信長「なにっ!」
サル「ノブナガをやっつけてやる~!とやる気満々みたいですよ」
信長「徳川家康は?」
サル「家康は一瞬であっけなく信玄にボロ負けしました」
信長「のおぉわあぁぁぁ~~~、マジでぇ?」
みっちー「まずいな~」
信長「なにか良い手はない?」
みっちー「今回ばかりはどうしようもないよ。あの武田信玄が相手じゃ、どうにもならない」
サル「私も打開策は何も思いつきません、すみません」
信長「ううぅぅ……(泣)」
1572年、戦国武将の中で最強といわれる武田信玄がついに動き出した!
今までの敵とは格が違うぞ。
信長、危うし!
第13話 天下は目前
武田信玄がこちらに向かっている。
信長は絶望して部屋にこもっていた。
信長「やられる、めっちゃやられるよ。やばいよ……」
そのとき家臣Aが現れた。
家臣A「大変だ~! ビッグニュースだ~」
信長「もうなんだっていいよ。どうせおれボコボコにされるんだ……」
家臣A「いいからテレビつけてみ」
信長「なんだよ、どれ」
信長がテレビをつけると…
TVアナウンサー「えー。先ほどからお伝えしているように、人気戦国大名の武田信玄さんが今日、三河の野田城で急死しました。52歳でした。野田城には大勢の弔問客が長い列を作っています」
信長「え、うっそぉ? 武田信玄、亡くなったの?」
家臣A「病死だって」
1573年、戦国最強の武将は京都にのぼる途中で病没した。
信長は武田信玄の寿命に助けられる形で危機を脱した。
その後、信長は『信長むかつく同盟』の首謀者である将軍様を京都から追放した。
こうして240年続いた室町幕府は名実ともに滅びた。
信長「みっちー、なにやってるの?」
みっちー「あぁ、ご先祖様にお祈りしてたんだ。これからも僕をお守り下さいって」
信長「へ~。信心深いんだね」
みっちー「ところで、なにか用かい」
信長「うん、あのさ、ちょっとこの雑誌見て」
みっちー「なんだい?」
信長「これ、このページ。天下人にしたい武将ランキング」
みっちー「お、信長さん、1位だね」
信長「へへ~ん、すごい?」
みっちー「僕は2位か~。けっこういい線いってるな~」
信長「え、でもみっちーは天下人になれないよね」
みっちー「……なんでだい?」
信長「だって、みっちーはおれの部下だしさ」
みっちー「君が偉大なリーダーである限りは、僕は君に従うよ」
信長「なに、なんか、はっきりしない言い方じゃない? やだな~、ははは」
みっちー「そうかい?」
信長「……ねぇ、あのさ。偉大なリーダーの条件って、なにかな?」
みっちー「うーん、そうだねぇ、いろいろあるけど僕があえて望むのは、意外性かな」
信長「意外性?」
みっちー「そうさ、時代の最先端の感覚を取り入れて、世間のみんなをあっと言わせるんだ。そういう意外性を僕は重視するね」
信長「世間をあっと言わせる意外性か……」
みっちー「例えば、明日、君は武田信玄の息子と戦う予定だろ?」
信長「うん、まぁね」
みっちー「どういうふうに戦うつもりだい?」
信長「えー、いきなりそんなこと言われてもな~。どうって、普通にがんばって戦おうと思ってるけど」
みっちー「君はもう有名人だ。日本中が君の戦いに注目しているんだよ。意外な戦い方で世間をあっと言わせなきゃ」
信長「うーん、でもなー、なんも思いつかないよ~」
みっちー「じゃあ僕がひとつアイディアをあげよう」
信長「え、ほんと!」
みっちー「鉄砲を使うんだ」
信長「でもあれって弾を入れてから撃つまでがけっこう面倒で、実戦には向かないと思うんだけどな」
みっちー「大丈夫。手分けして流れ作業でやれば効率よくできるさ」
信長「そんなもんかな。ま、やってみるよ」
みっちー「がんばって」
信長「うん。あ、もう寝るかな。あした早いし」
みっちー「そうだね」
信長「じゃあね、おやすみ」
みっちー「おやすみ」
信長「あ、ところでみっちーのご先祖様ってどんな人だったの?」
みっちー「まぁ、土岐のほうさ」
信長「土岐、ふーん」
みっちー「源氏だよ」
信長「え!?」
みっちー「源氏さ」
信長「じゃあ、みっちーは幕府を開く資格を持ってるの?」
みっちー「そうさ。でもそんな資格は僕には必要ない。君が偉大なリーダーである限りはね。そうだろ?」
信長「……う、うん(汗)」
みっちー「おやすみ」
信長「あぁ、おやすみ……」
1575年、信長は鉄砲部隊で武田信玄の息子をやっつけた。
無敵といわれた武田軍団も、新兵器の前には無力だった。(長篠の戦い)
信長「あははははは、いや~おれすっげえ絶好調じゃない?」
みっちー「ああ、天下を取るのはどうやら間違いなく君だね」
信長「ついにここまで来たか~むふふふう」
しかし、そんな信長にも最期の時が近づいていた。
第14話 王様ゲーム
信長「ねぇみんな、おれの天下統一もかなりイイ感じなんだけどさ、あと毛利さんっていう大敵が残ってるんだよね」
サル「毛利さん、ですか?」
みっちー「う~ん、毛利さんは手強いね。領土もでかいし」
信長「でさ、誰か、毛利さんをやっつけに行ってくれない?」
サル「毛利さんって、どの辺にいるんですか?」
信長「広島県のほう」
サル「あ、いいな~広島県。行っちゃおっかな」
信長「サル、行ってくれる?」
サル「わかりました。お任せあれ」
家臣A「信長さん、おれは誰をやっつければいい?」
信長「う~ん、そうだな……じゃあ新潟県の上杉さんをやっつけに行ってくれる?」
みっちー「僕はどうしようか?」
信長「みっちーにはね、ちょっと頼みたい事があるんだ。今度、徳川家康が遊びに来るんだけど、そのときに接待とか段取りとか手伝ってくれない? おれそういう堅苦しいの苦手だから」
みっちー「ああ、いいとも」
1582年5月15日、徳川家康は信長の城にやってきて長期滞在した。
その際、みっちーは接待係として活躍した。
その宴会の席で……
信長「そうだ、王様ゲームやらない? 家来とかみんなでさ」
みっちー「いいね」
家康「いいっすね」
信長「じゃあ、はい、みんなこの割り箸ひいて。この中に一本だけ王様って書いた割り箸があるからね。いいね? みんな引いた? じゃあ行くよ、せーの」
参加者全員「おーさまだ~れだ♪」
みっちー「じゃーん、僕が王様だよ」
信長「じゃあ命令を頼むよ」
みっちー「そうだなあ、じゃあ……5番の人が1番の人にキスをする」
エキストラ1「ああ~僕、5番ですぅ」
信長「げぇ~おれ1番だよ。まいったね。男とキスか~」
みっちー「じゃあ、ふたりとも、ほら、キスして」
信長「え~、あ、待って。キスってさ、どこに? ほっぺ?」
みっちー「いや、口」
信長「まじで~、それは早過ぎない? まだ最初のお題だよ~」
みっちー「いいからいいから、王様の命令にしたがって」
信長「……じゃあいくよ」
エキストラ1「どきどき……」
ぶちゅ~(キス中)&周りの歓声!
信長「うへ~、気持ち悪かった。よし、今度はおれが王様になってやる」
参加者全員「おーさまだ~れだ♪」
家康「あ、僕だ。えへへ、酔っ払ってるから、変な命令だしたらごめんね。えへへ」
信長「家康か~。おれも王様やりたいのにー」
みっちー「じゃあ家康、命令は?」
家康「えーとね、うーん、じゃあ……8番が、ビール一気飲みする」
みっちー「僕が8番だ」
信長「えーずるいよ、ビール一気飲みなんて簡単だよ」
家康「え、もっと厳しくする?」
みっちー「おいおい信長さん、口出しするのはナシさ~」
信長「だっておれさっき男とキスしたんだよ。しかもエキストラ」
家康「じゃあ、もうちょっと厳しくします。思いきって……」
信長「おう! 思いきれ~」
家康「8番が、謀反を起こす。これでどう?えへへ」
みっちー「な! む、謀反……」
信長「謀反~っ!?」
みっちー「冗談がきついな~」
信長「そうだよ家康、ちょっときつすぎるよ~。それにみっちーは謀反なんて起こせないよ。 こうみえてけっこう度胸が無いんだよ。ね、みっちー」
みっちー(カチンっ!)
信長(はっ!しまった……)
みっちー「賭けよう! もし僕が謀反を起こしたら、100円くれよ?」
信長「えー、うん、100円払うよ。そのかわり、謀反を起こせなかったら100円ちょうだいね」
みっちー「いいとも」
そのとき信長のケータイが鳴った。
ピロロロロ……
ピロロロロ……
信長「あ、サルから電話だ。やあ、サル。元気?」
サル「はい、まぁそれなりにやってます」
信長「どうさ、広島は?」
サル「いや~まだ岡山県で敵に足止めされてるんですよ」
信長「岡山県ね、そっかー、やっぱ大変でしょ?」
サル「あと一押しなんですが……」
信長「じゃあさ、おれ、手伝いに行ってやろうか?」
サル「お願いできますか。なるべく早く」
信長「あー、でも今ね、徳川家康が遊びに来てるんだよね。みんなで王様ゲームしててさ。だからちょっと遅くなるかも知れんわ」
サル「そんな~」
信長「うーん、わかった、じゃあ先にみっちーに行ってもらうね。で、おれも後からすぐ行くから」
サル「わかりました。お願いします」
信長「と、いうわけでみっちー、悪いけど先に岡山県に向かっててくれる?おれさ、 主人として家康のおもてなししなきゃならないから。ごめんね」
みっちー「気にすることは無いさ。じゃあ、さっそく準備にかかるよ」
これが5月15日のことである。
信長死亡まであと18日……
最終話 本能寺の変
みっちーは岡山に向けて出発した。
みっちーを見送った後、信長はあることに気づいた。
信長「あ! やばい!」
エキストラ「どうしました」
信長「おれさ、みっちーに持たせてやろうと思って密かに弁当作ったんだよね。でも渡すの忘れてた」
エキストラ「あちゃ~ですね」
信長「あちゃ~だよ。あ~あ、せっかくビックリさせようと思ってこっそり作ったのに……」
エキストラ「信長さんが自分で作ったんですか?」
信長「うん、チキンカツ弁当。みっちーはこれが好きなんだ」
エキストラ「まぁ、みっちーもどこかで何か買って食べてるでしょう」
そのころみっちーは……
兵士「岡山まではまだ遠いですね。もうすっかり暗いし」
みっちー「ああ、まったくだ。暗闇のせいで敵の場所もわからないからな。今はへたに動かない方がいいかも。それにお腹もすいてきたな。弁当でも買おうか? この辺にコンビニあるだろ?」
兵士「あ、僕、買ってきます。何がいいですか?」
みっちー「じゃあ……チキンカツ弁当。あとウーロン茶ね」
兵士「わかりました。じゃあちょっと行ってきます」
10分後……
みっちー「どうだい、買えたかい?」
兵士「それが、100円足りませんでした」
みっちー「本当かい? まいったな~。もう持ち合わせないしな~」
兵士「この辺に銀行ありませんでしたっけ?」
みっちー「銀行かい」
みっちーは腕時計を見た。
時刻は1582年6月1日午後10時をさしていた。
信長死亡まであと4時間あまり。
みっちー「この時間じゃ、銀行は開いてないな~」
兵士「あと100円なんですがね」
みっちー「100円。100円か……」
兵士「困ったな~」
みっちー「おい、たしか、信長さんは今、京都のホテル本能寺に泊まってるんだったね」
兵士「はい。あ、信長さんに借りますか?」
みっちーの心の中である決意が固まった。
みっちー「……これも僕の好きな『意外性』ってやつだよ、信長さん」
兵士「え? 何か言いました?」
みっちー「いや、なんでも無い。よし、敵を倒しに行くぞ!」
兵士「え~でも、こう暗くちゃ敵の場所がわからないんじゃ……」
みっちー「敵の場所はわかってる。敵は――」
1582年6月2日未明。
織田信長は京都の本能寺で家臣のみっちーに討たれて自害した。
享年49歳。(本能寺の変)
人の命は50年。
宇宙にくらべれば短い人生。
あれもこれも夢まぼろしさ。
と歌ったあの日から22年がたっていた。
そのころ徳川家康は芸能リポーターの取材を受けていた。
記者「えーと、今朝みっちーが信長さんを討ちましたね」
家康「そうですね。ニュースを見てビックリしました」
記者「みっちーは普段はどんな人でしたか?」
家康「いや~普通の、まじめな青年でしたよ。あいさつもちゃんとするし」
記者「信長さんとの仲はどうでしたか?」
家康「さあね~、特に悪いようには見えませんでしたけどね」
記者「あの~、実は一説によると……」
家康「はい」
記者「あくまで歴史ファンの間での噂なんですが……」
家康「はい」
記者「この『本能寺の変』の仕掛け人は、家康さん、あなただという説があるんですが?」
家康「あー、あの王様ゲームのことかな。あれはゲームですよ。まさか本気にするとはね~」
記者「では、黒幕はあなたではないと?」
家康「当然です。僕は信長さんの死を心から悲しんでいるんですよ」
しかし、『本能寺の変』が徳川家康の陰謀であったという説は、その後も一部の歴史ファンの間で長く語り伝えられた。
一方、岡山県のサルは。
サル「なに~! 信長さんが死んだって~~~(涙)」
部下くろべえ「はい。みっちーにやられました」
サル「のおおぉぉうをぉぉ~~~、信長さーん、必ずカタキは取りますよ~~」
………………
ここは天国。
みっちー「え~、というわけで僕もサルにやっつけられちゃいました」
信長「残念だったね」
みっちー「せっかく僕が天下人になれると思ったんだけどな~」
信長「あ、そうだ。はいこれ、約束の100円」
みっちー「ありがとう。このお金で一緒に弁当でも食べようか」
信長「いいね。チキンカツ弁当にしない?」
みっちー「あれ? 僕の好みをしってるね!」
信長「うん、まあね」
みっちー「嬉しいよ」
信長「なんか俺、いつもみっちーに頼ってばかりだったからさ、 たまには役に立ちたくて、好きな食べ物、調べたんだ」
みっちー「そうだったの?」
信長「で、弁当作ったんだけど、渡すの忘れちゃった。おれ、最後までまぬけだったね」
みっちー「信長さん……僕がここにきてよかったな。君は僕がいないと何もできないんだからさ」
信長「天国でも、頼りにしてるよ」
みっちー「下界で生き急いだぶん、ここでは、のんびりいこうか」
信長「そうだね」
みっちー「……お腹すいたね」
信長「あ、でも天国に弁当屋ってあるのかな……」
みっちー「一緒に歩いて探そうか」
信長「そうだね、探してみようか」
こうして信長さんとみっちーは天国で仲良く暮らしましたとさ。
その後、生き残った者たちによって歴史は意外な方向に流れていくのですが、それは別の物語……。
織田信長 完
お読みいただきありがとうございます!