なつかし劇場/オレたちの大和

中学生の小生はついに決断した。

貯めたおこづかいの二千円で、大日本帝国海軍旗艦、

大和の購入を！

選んだのは実際にマブチモーターで水上を航行するプラモでございます。

早速、建造が開始される大和。

長さ50センチの大型サイズだ。

やがて、モーターとスクリューの取り付け工程となる。

スクリューの心棒を船外に突き出すための穴があり、防水のためグリスを詰めろとの指示。

プラモ屋のおいさんに、バターで代用できると聞いたけど。


赤貧家庭にはバターが無い。


給食で出たマーガリンを代用の代用。

こうちゃんの技術サポートもあり、数時間で大和は完成。

自転車のカゴに大和を入れて、目指すは進水式の場所。


『六義園』


学校の校庭レベルの、かなりデカイ池があるのです。

進水式を撮影するため、家のカメラを持ってきてくれた、へーちゃんと合流。

家族旅行で行った箱根で撮ったフィルムが５、6枚残っているとの事。

池を周り対岸で撮影準備する、へーちゃんと小生。

こうちゃんは発進役として、池の前で待機です。

小生の合図で発進する大和。

予想以上のスピードでこちらに向かってまいります。

小さいながらも波を立てて、航行する大和。


「すげーかっこいーじゃん！」


歓喜の声を上げる小生。

対岸を見ると、こうちゃんがオーバージェスチャーで進水式を喜び何か叫んでおります。

ぐんぐん近づいてくる大和。


「お〜！来た来たぁ！」


大和の勇姿をアップで捉えようとカメラを覗いたまま身を乗り出す、へーちゃん、、、

その時！

ズルッ！ボッチャ〜ン！

「おわっ！」


へーちゃんの左足が池のへりから滑って水中へ。

カメラを持ったまま、慌てて地面に倒れ込み、蹴り上げるように足を引き抜く、へーちゃん。

しかしこの時、その左足が大和に直撃！


バシャーン！


空中に蹴り上げられた大和は半回転、反対方向へ航行し始めたのです。

大和はともかく、へーちゃんの無事を確認していると、駆け寄る、こうちゃん。


「裸族ちゃん、ヤバイよ。大和のマーガリン、もれちゃってる」


３馬鹿が大和を目で追うと、、、


なんと！


亀の頭の様に艦橋を突き出し、船体はすでに水中に没しております。

それでも、波を立て勢いよく航行を続ける大和。

大和の最期を見届ける、３人の口から出た言葉は、


「すげえ！カッケ〜！」


オレたちの大和が水中に姿を消したのは、それから数秒後の事でございました。







最後までお付き合いいただき
ありがとうございました。(*´∀｀*)


※ヘッダー画像は六義園です。