悲しい詩


内 と 外 は 同じ ものなんだ

外を 美しく穏やかで 豊かで実りあるものに したければ
内を 美しく穏やかで 豊かで実りあるものに すればいい

内を 美しく穏やかで 豊かで実りあるものに したければ
外を 美しく穏やかで 豊かで実りあるものに すればいい



      詩人は
内なるそれに 捧げるために 
外なるそれを 賛美し称賛してきた


 

     詩人が歌い
人々の 内なるそれは 笑顔で それに応え
人々は 外なるそれを 敬い  それに奉仕した
そうやって ひっそりと堅実に 細く強い糸を 紡いできた
ずっと ずっと 眠くなるほど のんびりと
しかし ある時 詩人は気付く  詩人が歌っても
人々の 内なるそれが 全く呼応しないことに
愕然として やがて 理解する
外なるそれが 穢され 蹂躙された この今となっては 
内なるそれも 全くそれと同じようになってしまっていて
それが 天が 思い上がった人間に下した 
当然の報い なのだということも

 

     詩人が
人々の 内なるそれに 警告を発する
幾多の危機を救ってきたのと同じように
何度も  何度も
内なるそれに 向かって
何度も  何度も
内なるそれが あるはずの箇所をめがけて
何度も  何度も


悲しい詩(うた)に 風が吹く
亡くなった母熊を求めて 小熊の泣くような
悲しい 詩が 
悲しい 空に 
悲しい 大地に


内なるそれは もう 何も 応えようとはしなかった




2019年3月13日 mixiにアップしたものを、転載しております。




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