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スマートストアは“ショッピングカートの進化”が先行、付属画面が最強の店頭メディアに?[連載]

日本でリテール改革を力強く推進するトライアルホールディングスが、千葉市の長沼店を“スマートストア”に改装リニューアルオープンさせた。この数年、地場の九州では進めてきたスマートストア方式店舗の、関東初上陸事例だという。

AmazonGOが2015年に登場して以来、遠くない未来にウォークスルー型(買い物を手に取ってそのまま店を出るだけでいい世界)がぐっと進むのかとひととき夢みたが、あの方式はまだ設備が大変で普及に時間がかかっているし、「システムごと外販するモデル」もいくつか出てきてはいるが、まだまだ高額すぎるようでそちらも進みが悪い。

そうこうしているうちに、いままず現実的に進み出しているのは、従来からスーパーなどの店舗に置いてある「ショッピングカート」を“スマートカート化”する流れだ。これだと店舗中の至る所にカメラやシステムを張り巡らせなくても済む。

この「スマートショッピングカート」の日本における最新事例が、前述したトライアル長沼店だ。
テレビ東京『ガイアの夜明け』の9月1日放送でもこの店の改装オープンが特集されていた。

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このスマートショッピングカートを“顧客側のメリット”の視点で整理すると、
・レジに並ばずにスムーズに退店できる
・買い物途中に「現在の合計額」がわかる
・どこに何が売ってるか等調べやすい

特にコロナ時代になり“非接触”に価値が出てきて、「レジでの接客や行列を無くせること」に一段と注目が集まっているという。

また、ちょうど北米でもAmazonが「Amazon Dash Cart」という名のスマートショッピングカートをリリースしたところである。

(記事より引用) アメリカの生鮮食料品店では、セルフレジが発達しており、こうしたセルフチェックアウトへの抵抗は年齢を問わず皆無と思います。また、COVID-19対策という観点においても大行列や人と接する可能性が高くなる「有人レジ」は避けるトレンドになっており、Amazonにとってはタイムリーなスマートショッピングカートの導入となりました。

ただ、この仕組みだと、「お客様に自分でレジ係の役目を代役してもらっている」ことになるので、“本来の便利さの追求”からみると「退化なのでは」とも感じるのだが、とはいえそんなに対した重労働でもないのだから慣れてしまえば(習慣化さえ進めば)そういうものだと捉え直しなんの違和感もなくなるのかもしれない。UIさえしっかりしてれば子供などは喜んでバーコードリーダーに読み込ませたがるだろうし。ある意味では逆転の発想ともいえる。

最大の店頭メディアに?

特に番組を見ていて「なるほど」と思ったのは、“販促表示の仕組み”だ。
たとえば「牛肉」のバーコードを読み取ったらすぐに「ビール」の販促情報が画面表示される。
たとえば「鶏肉」の売り場にカートを押して近づくと、ピコーンッと“カート画面”におすすめレシピが表示される。

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(牛肉を買うのにバーコードを読み取ると、下記のように、直後にビールがおすすめされる)

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これらはすごく新鮮なアイデアというわけではないが、こういう「画面付きショッピングカート」がそのスーパーマーケット店頭でお客全員が使うようになれば、「店頭のメディア化」としては“無敵の面”が出来上がるんだなというのがよくわかった。
最近は、紙のPOP掲示から進化して、店頭のあちこちに大型ディスプレイが置かれるのを見かけるが、あれよりもカートのほうがよりOne to Oneなコミュニケーションが可能そうだ。

同じことをスマホの画面上でもやれなくはないが、いちいち買い物しながらスマホを開くのかという課題が残る。それに比べて、このカート画面は、“買い物と密接な関係”なのが強い。

さて、誰がこの“店頭カート画面”をおさえるのか?いろんなプレイヤーがこの周辺にはいる。
トライアルのように流通小売業者自身はもちろん、ITシステム系の企業によるカート開発もあれば、広告代理店も参入する意義はあるし、最近だとネットのレシピサイト企業が店頭販促コンテンツに参画もしている。

この“カート画面”のようなものが、新たな“店頭販促でのプラットフォーム”のような存在になり、多様なコンテンツをこの上に載せていき、そこにメーカー企業が販促広告を出稿する。買い場で“買う瞬間”を捉えられるメディアは、とてつもなく強いメディアへと育ってゆくのかもしれない。

(おわり)

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