見出し画像

今までの経営書には書いていない 新しい経営の教科書

岩田松雄

画像2

はじめに
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
こんにちは。伊藤 航です。
いつも本の紹介をご覧いただき、誠にありがとうございます。

本日は元スターバックスコーヒージャパンCEOの岩田松雄氏の『 新しい経営の教科書 』をご紹介いたします。

「不都合な真実」を受け入れる

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 マーケティングの基本に3C分析というのがあります。3Cつまり、Company(自社)、Competitor(競合)、Customer(お客様)について、しっかり事実を捉え分析しないといけません。こういった基本的なことを、目の前の忙しさにかまけて疎かにしている会社もあります。

お客様の満足度が向上したかどうか、自社の接客レベルが向上したかどうか、定量的なデータがないと、感覚でしかわかりません。人の感覚はあてにならないし、だいたい自分に都合よく感じるものです。これがイメージや主観的な評価ではなく、絶対的な数値なら、誰もその結果を認めざるを得ません。できるだけ事実やデータを集めたファクトベースで物事を考える必要があります。例えば、お客様からどのように見られているのかを、正しく理解できていなかったとすれば、正しい戦略を打ち出すことができません。ところが、こういった基本的なことをしていない企業は、決して少なくありません。

ザ・ボディショップの社長に就任したとき、競合企業の「ラッシュ」について調査分析がなされていませんでした。もともとラッシュは、ザ・ボディショップ創業期の技術者が立ち上げた企業で、とても似たコンセプトを持ったブランドです。日本にも進出し、急成長を遂げていました。

しかし、ザ・ボディショップのスタッフたちは、あくまでザ・ボディショップをまねた後発ブランド、という印象を持っていました。私は、ザ・ボディショップのお店を訪問した際、近くにある競合店にも行くようにしていました。中でもラッシュのお店に行くと、とても活気があるし、お声掛けのアプローチも早くてフレンドリーでした。接客トークもしっかりしていて、お店の人がよくトレーニングを受けている感じがしました。

「ラッシュの接客はとても積極的で素晴らしいし、見習うべきところもあるので、もっと研究したら」と朝礼で話したら、マーケティング部門の人たちを中心に何人もの人から、「岩田さん、何を言っているんですか!ラッシュなんてライバルじゃないですよ!」と強い反発を受け、びっくりしたと同時に傲慢さも感じました。

画像4

数字(事実)の前には人は謙虚になる

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 しかし、私はここでも「ファクト」を重視すべきだと考えました。
本当にそうなのか。

そこで、自社だけではなく、ラッシュへの覆面調査を依頼しました。アプローチ、商品説明、クロージング、そしてお見送りを、消費者視点でチェックするのです。その結果、ラッシュの接客は、多くのお店でザ・ボディショップより高い評価が出ました。アプローチが積極的で、顧客は引き込まれてしまう。その他の販売方法やキャンペーンも、ザ・ボディショップとは異なる展開で顧客の支持を得ていました。「天使の優しさ」など商品のネーミングも秀逸で、顧客の心をつかんでいました。

さらに売り上げ情報を集めて、私は愕然としました。なんと、ザ・ボディショップが負けている店舗のほうが多かったのです。立地条件はザ・ボディショップのほうが圧倒的に良いのに、売り上げで大きく負けていた店舗もありました。これが現実だったのです。この事実を見て、ようやく社内の人たちもラッシュを意識するようになりました。自分たちのブランドを強く愛し、誇りを持っていることが、逆に落とし穴になっていました。

人は物事を、ついつい自分に都合よく解釈してしまいがちです。勝手思い込みで、現実からどんどんと離れていってしまいます。

きっとお客様はこう思ってくれているに違いない、などという思い込みが、大変な事態を引き起こすのです。競合の登場も含め、周りの環境は着々と変化します。常に数字やデータの「ファクト」を集める努力をして、検証し続けなければいけないのです。

私は「競合のまねをする必要はないが、学ぶことが多くある」といつも話していました。

画像3

「マーケティングの罠」を知る

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 強いブランドを持った企業の社員は、自社の商品に誇りを持っています。

それはとても良いことなのですが、社員が「ユーザーの誰もが、そのブランドの良さを知っている」と思い込んでしまうことがあります。その思い込みがもとになって、さまざまな販売戦略が作られたり、商品戦略が立案されたりしてしまうことがあります。

すっぽりと、ユーザー目線が抜け落ちてしまうことがあるのです。
「ユーザーはこうあるべき」を押しつけてしまいかねないことがあります。そういう意味で、強いブランド意識には、大きな危険が潜んでいます。

大ヒットしたボディバターについても、最初はマーケティング担当者の声は決して前向きなものではありませんでした。今さらボディバターなんて、そんな量が売れるはずがない、メインの商品ではない、冬場は売れるが春夏に展開しても売れない・・・・・・。そんな声を、何度ももらったのです。

そこは、化粧品の素人の社長だったことがむしろ幸いした、と言えるかもしれません。マーケティングの「こうあるべき」に反していたからこそ、実際にはボディバターは大きく売れて大ブームになったのです。

画像5

新卒こそが会社のカルチャーを創る

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 よく就活中の学生さんに、「社長が新卒の採用に、どれだけ時間をかけてコミットしているのかを見なさい」とアドバイスをしています。

新卒の人たちにとって大切なのは、その会社の今よりも、これから5年先10年先の成長性が大切です。人財の採用にトップ以下、会社がどれだけエネルギーをかけているのかで、その会社の5年後10年後がわかります。その考えから、私はザ・ボディショップでもスターバックスでも、新卒採用に力を入れました。新卒採用で大切なのは、安定的な採用を続けることです。ある年に100人採って、翌年はゼロ・・・・・・というふうに採用人数が振れるのはよくないと思います。できるだけ安定的に人を採用すべきだと思います。

スターバックスは私がCEOになったとき、前年は150人を新卒採用していましたが、リーマンショックの影響もあって、ストップしていました。そこで私はすぐに、新卒採用を再開しました。景気が良くても悪くても、出来るだけ安定的な採用を続けるようにしました。

また新卒採用のメリットとして、社内の若手は、新人が入ってくると格段に成長します。人は人に教える時に一番成長します。ザ・ボディショップでは2~3年目の若手がメンターとして、新入社員を入社後もフォローする制度を導入し、教えるほうも教えられるほうも、とても成果が上がりました。

画像6

おわりに
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 今回ご紹介した本書の要点をまとめると以下のようになります。

❶ 「不都合な真実」を受け入れる
 マーケティングの基本に3C分析というのがあります。3Cつまり、Company(自社)、Competitor(競合)、Customer(お客様)についてしっかり事実を捉え分析しないといけません。できるだけ事実やデータを集めたファクトベースで物事を考える必要があります。人の感覚はあてにならないし、だいたい自分に都合よく感じるものです。
❷ 「マーケティングの罠」を知る
 強いブランドを持った企業の社員は、自社の商品に誇りを持っています。それはとても良いことなのですが、社員が「ユーザーの誰もが、そのブランドの良さを知っている」と思い込んでしまうことがあります。すっぽりと、ユーザーの目線が抜け落ちてしまうことがあるのです。「ユーザーはこうあるべき」を押しつけてしまいかねないことがあります。そういう意味で、強いブランド意識には、大きな危険が潜んでいます。
❸ 新卒こそが会社のカルチャーを創る
 新卒採用のメリットとして、社内の若手は、新人が入ってくると格段に成長します。人は人に教える時に一番成長します。ザ・ボディショップでは、2~3年目の若手がメンターとして、新入社員を入社後もフォローする制度を導入し、教えるほうも教えられるほうも、とても成果が上がりました。

※上記文章はコスミック出版『 新しい経営の教科書 』より一部抜粋しています。


この記事が参加している募集

推薦図書

私は本で世界を変えられると信じています。そして常に既存の考え方とは違う考え方をします。世界を変えるために美しいデザインかつ情報に優れた記事を世に送り出そうと努力するうちに、このような『note』ができあがりました。一緒に世界を変えてみませんか?