映画感想 アントマン
この記事はノートから書き起こされたものです。詳しい事情は→この8か月間に起きたこと。
最初に接したとき、なんとなくマーベル映画っぽくないな……という気がした。なぜだろう? マーベル映画っぽくないと言いつつ、冒頭からパパ・スタークが登場し、アベンジャーズについても言及されるので、間違いなくマーベル映画なのだが。
なんだろうね。マーベル映画特有のキラキラ感というか。主人公は物語の始まりでスーパーヒーローではないどころか、苦労をしょいこんだ一般人だから、というところもあるのかも知れない。
ただマーベル映画っぽくない、という感触が、マーベル映画にさして詳しくもない私でもすんなり見れてしまう。見やすい理由かもしれない。
さて映画について。
いつも通り予備知識ゼロで見始めたので、まず主役誰だろう……? 主人公が出てくるのが遅いので、最初、しばらく誰が主人公なのかわからなかった。
ようやくスコット・ラングというくたびれたオッサンが主人公とわかって「このオッサンか……」となった。
でも、実はここが『アントマン』の面白いところ。マーベルといえばスーパーパワーを持ったヒーローショーだが、『アントマン』はその辺にいそうなオッサン。ここがスタートになっている。
映画前半はちょっと凡庸な感じ。あまり映画的なカッコよさはないな……と感じていたけど、アントスーツを着てから一変。デジタル使いまくり、移動カメラ使いまくり、一気に活劇映画としての爽快感が画面からあふれ出す。このギャップを見せたくて、前半、カメラを動かさなかったのか、と納得。
主人公が小さくなってしまう映画……といえば『ミクロ決死圏』を思い出す(ラングの娘が食べているシリアルがまさにその映画に出てくるものと同じ形だった)。小さくなって世界を見渡す……ただそれだけだが、実はこれは意外とワンダーな体験をもたらす題材なのだが、不思議と映画の世界では長年作られていなかった。それが、現代映画の中で、マーベル映画の中で突如アップデート版が描かれる。
最新のミクロ映画では、三種類のアリを操り、様々なギミックを鮮やかに潜り抜けていく。スパイ映画的なトラップ潜り抜けシーンが、非常に鮮やかで見ていて楽しい。
バトルシーンはただ小さいだけではなく、大きくなったり小さくなったり。大きくなる、小さくなることが戦術として利用されているのも面白いし、そのたびに撮影のスケールがスムーズに変化するのも面白い。おそらくサイズが変わるたびにセットを変えて、少しずつ撮影して編集でうまく繋いだのだと思うが、こんな面倒くさいの、よく作ったな……。
私のお気に入りは、落下するスーツケースの中でのバトル。スーツケースの中のものが渦を巻き、スマホが跳ね跳んで音楽を鳴らし、それがそのままBGMになる。小粋だし、シーンそのものに既視感がなく、新鮮な体験をもたらしてくれる。
おもちゃの鉄道上での戦いも面白かった。小さくなった本人たちは必死だが、客観的に見ると……ここで軽く笑いを引き起こしてくれる。
この映画のポイントはユーモア。笑い。ラングの仲間たちのおかしなやり取り、ボスであるスキンヘッドのやり取り、いいところで笑いを取り入れてくれる。笑いが嫌味に感じられないのは、良いポイントだ。
ラスト際、自分が倒して身ぐるみを剥がしたザコ助けに行く場面があったが、ちょっと嬉しかった。映画ではああいうザコはフォローされずそれきり、ということがよくあるから。こういう、なんでもないところに目を向けてくれるのが、なぜか嬉しい。
結局は、何でもなかった冴えないオッサンが頑張る話。何もなかったオッサンが、ひょんなことからマーベル世界に踏み込んでしまう話。頑張るオッサンが、最後にはヒーローになっていく映画だった。
何でもない一般人がヒーローになる話……いや、むしろ今までで一番キラキラ感があるマーベル映画だったかも知れない。
ラスト近く、原子サイズまで小さくなってしまう主人公だが……。
わりと簡単な方法で危機を脱出してしまう。そんな簡単な方法で脱出できるんだったら、奥さん死なずに済んだんじゃ……。ここだけ、もうひとひねり欲しかった。
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