出会いの日 #05
おばちゃんによる見事なレスキューにより、
ようやく赤ちゃん猫の姿が露わになったのだが…
おばちゃん、妻、私の3人はその姿に驚愕した。
全身がベタベタな何かに覆われていたのだ。(前回記事の写真参照)
後に動物病院へ連れて行き判明するのだが、
得体の知れない物体は鼠捕りに使われる粘着剤だった。
それは我が家に設置していないから、
察するに色々な家を徘徊している間にくっついてしまったのか、はたまた……
答えは誰もわからない。
おばちゃんが、
「市役所に連れて行けば保護してくれるよ」
と言った。
しかし、実は私たち夫婦は既に家族として迎え入れることに決めていた。
話し合った記憶はないのだが、お互いの考えは同じだった。
私たちはおばちゃんに、我が家で飼うという意志を伝えた。
このとき、私たちとこの子は家族となった。
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粘着剤は全身の毛に絡まり、タオルで拭く程度では全く取れる様子がない。
いずれにしても健康状態も気になるため、
我々はすぐに動物病院へ連れて行くことにした。
「どこの動物病院が良いんだろう?」
と本来ならここで迷うところなのだろうが、
幸い私たちの近所には犬や猫を飼っている家が多かった。
この騒動を聞いて集結していた先輩たちから、
「あの先生が親切」「あっちの先生はぶっきらぼうだ」などどいう情報をもらい、
私たちはとある動物病院を訪れた。
「こんな状態の子を連れて行ったら、さぞ驚くだろうな…」
と思いながら病院の扉をノックした。
この子を診察台に乗せると、
先生は私の予想を裏切り全く驚く素振りもなく、
「あー、とりもちだね、こりゃ。根気いるよー」
と、淡々と診察を開始。
この子も暴れたり泣き叫んだりすることなく、一番落ち着かなかったのは私たち夫婦だったかもしれない。
幸いなことに、ケガ・病気・ノミなどは見当たらず、健康状態は良好だった。
ほっとした気持ちで我が家へ連れて帰る。
さぁ、ここからが大変だ…
「猫を飼うには何が必要なんだっけ??」
ネットを見ながらリサーチ開始。
ご飯、おやつ、ゲージ、トイレ、歯ブラシ、おもちゃ、除菌シート、、、結構ある。
しかし、近所にあるビバホームは全てのニーズを満たしてくれた。
(結局あれがない、これがないと、何度か往復したが)
だが、何より大変だったのは粘着剤。
動物病院でもらった粘着剤を溶かすシャンプーを使いながら、丁寧に、丁寧に。
我が家に来てくれてありがとう、という想いを込めて。
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だが、私たちの愛情たっぷりのシャンプーは、
この子にとっては苦痛だったようだ。
床下から聞こえていたあの鳴き声が風呂場に響く。
(結局粘着剤が完全に取れるまでは約2週間かかった)
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そして、名前が決まった。
種類はキジトラ、そしてフーテンの寅さんのようにふらっとやってきたこの子。
命名 寅次郎
3人の新しい生活が始まった。
つづく