見出し画像

仮面を被れば誰でも喋れるし、20歳差の友達だってできる『Apex Legends』

 私は『Apex Legends』が結構好きで、定期的に集中してプレイしては一定期間やめて、思い出したかのように再開する、というのを何度か繰り返している。人見知り気味な私は知人とやることもほとんどなく、野良で黙々と遊ぶのが私のスタイルだ。

 しかし、一時期ボイスチャットを付けてプレイしていたことがある。きっかけはたまに他の人のボイスチャットが聞こえると面白かったり嬉しかったりしたから。どうせ一期一会なんだし思い切って自分もやってみよう、と心が動いたのだ。

 私がボイスチャットを通して得た体験について2つ紹介する。

人見知りに必要なのは仮面を被る勇気だけ

 初めて野良でボイスチャットを使ったとき、私は操作キャラクターのレヴナントのモノマネをしていた。キャラクター選択時には「我が名はレヴナント……。足を引っ張るなよ……」などと言い、とにかく低い声と偉そうな口調を心掛けていた。

 クオリティの低さやキャラと外れた発言が面白味に繋がるだろうと考え、モノマネの練習や勉強は一切せずに、「ここに降りるのがよかろう……」とか「我はダウンした!助けろ!」とか言うレヴナントはかなりうっとうしかったと思う。
 私のレヴナントにリアクションをした人は2人くらいしかいなかったが、そのどちらも好意的な反応だったことは強調しておく。

 この体験を通して得られた教訓がある。それは「他人のフリをすれば至極気軽に喋ることができる」ということ。
 『Apex Lengds』はバトルロワイアル形式の3人チーム戦のFPSだ。そのため、次にどこを拠点とするか、そこまでどのような経路で進むか、敵を見付けたとき戦うか逃げるか、など様々な判断が必要になる。私はカジュアルプレイヤーで定石も知らず間違ったことを言いかねないため萎縮しがちなのだが、レヴナントの真似をしている間はそんなことをまったく気にしなくなっていた。
 というのも、何か間違っていても「すまぬ……。申し訳ナス……。」とか低い声で言っていれば笑って許されると思えたからだ。最悪何か誹謗中傷されるようなことがあっても、それはさむかわという一個人ではなくレヴナントに向けられたものだと思えたのだ。

 メタバースやらVRやらで見た目や性別、年齢などに捉われないコミュニケーションの発展が期待されているが、別にそんなたいそうなものは必要ない。被る仮面さえ見つけてしまえば何でも構わないのだ。

肉声Twitter小学生らとフレンドに

 ある日ボイスチャットを付けてプレイしていたところ、小学生二人組とマッチングした。彼らの名前は"ブタメン最高"、"ブタメン大好き"のようなもので、私は思い切って素の自分として声を掛けてみた。
「そんなにブタメンって美味しい?」
 するとブタメンの二人はブタメンが大好きだとか一言だけ対して、あとは私に対して色々なことを聞いてきた。その中で「高校何年生ですか?」と聞かれたので「36歳だよ」と伝えると、凄く驚かれた。彼らにとっては"ゲームをやっているイイ大人"が珍しいのだ。小学生にとって大人は親と先生がほぼすべてで、子供の前では模範となるような立派な大人を演じている。だから、私のようなゲーマーの大人は珍妙に映るのだ。

 その後彼らの方からフレンド申請があり、その後2、3回一緒にプレイしたことがある。私が何か話題を振っても、各々が好きなことを喋っているのが凄く印象的だった。

「クラスの他の人も『Apex』やってるの?」
「みんな『フォートナイト』です。あー、マジでマスティフどこにもないんだけど!」
「あ!こっちに箱ある!フラットライン見っけ!やったー!」

 ずーーーっとこんな感じ。話題の一貫性なんてなく、自分の思ったことをひたすら伝えるだけ。会話のキャッチボールなんてものとは程遠く、どちらかといえば肉声でTwitterをやっているようなものだ。好き勝手つぶやいて、興味があるときだけ反応する。支離滅裂というか、無邪気というか、延々と続く閑話休題というか、いや、言葉を選ばずいえばおバカなのだろう。しかし、それはそれで小学生らしくて良いじゃあないか。どんなに大人ぶっても所詮は看破されるのだから、彼らは思い切り小学生でいれば良いのだ。そう思った私は彼らに時々質問しては半ば無視され続けたのであった。

 その後私は『Apex』から離れてしまい、ブタメンコンビとは一緒にゲームをしていない。彼らはまだ『Apex』をやってるのだろうか。

 ちなみに、彼らとフレンドになったその日にブタメンを買って食べた。味は、まあね。うん。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集