旋風のルスト横タイトル新ノート用

第2話:野営の夜/事後見聞

 作業小屋から出てきた仲間たちが各々に行動を始めている。
 まずは状況を見聞する者たち。
 
「自爆だと?」

 そう疑問を口にするのはドルスさんだ。

「煙が少ないのは種類からして綿薬だな。しかも首から上がまるごと消し飛んでる」

 綿薬――木綿の綿を材料として硝酸を反応させて作った無煙火薬の事だ。威力は高いが扱いが難しい。対して木炭や石炭粉を材料として作る黒い火薬が黒色火薬でこちらは扱いやすい代わりに湿気に弱く煙が多い。
 そう言うことに妙に詳しいのは彼が元正規軍人だった事も関係しているだろう。カークさんがそれに問いかける。

「証拠隠滅か」
「少なくとも正規軍でもトルネデアスの砂モグラでもねえな」
「〝兵隊以外〟ってことか」
「あぁ」

 そして地面に転がっていた一振りのナイフを拾い上げる。
 
「キドニー・ダガーだな」

 私は問うた。
 
「知っているのですか?」
「あぁ、敵兵や出自の怪しい連中がよく持っていたからな」
 
 その言葉に背後事情が一気にきな臭くなる。
 さらに続けてゴアズさんが言う。その顔には険しさが現れている。

「しかし荒っぽいやり方ですね。頭を丸ごとなんて」

 さらにはバロンさんが言う。
 
「少なくとも正規部隊の人間ではない。いくら敵国同士とは言え捕虜規定はしかれているから黙秘も認められているはず。それがここまで正体を秘したいのは存在自体が明かせない地下組織的な存在と考えるのが妥当でしょう」

 適切な判断だ。
 
「私もそう思います」

 そしてパックさんが残された遺体を探り始めた。焦げ茶の装束の襟元をめくる。すると――
 
「これを見てください」
「え?」

 東洋系の肌色の素肌、その胸元にはのたうつ龍の文様が彫られている。
 
「〝結社人〟です。フィッサールの各地に存在する秘密結社の構成員とされています。組織の全容は不明。しかし世界中に手広く組織の網を張り巡らせているといいます。これは――」

 唸るような声にドルスさんが続けた。
 
「――単なる敵国の裏工作とかじゃねえな」
 
 ダルムさんがため息を吐く。

「厄介だな」
「全くです」

 私は痛む左腕を抑えながら同意する。そしてその場を遠巻きに眺めていたあの人が前へと進み出てきた。正規軍人のゲオルグさんだ。
  
「極秘査察任務の範疇を超えつつあるな」
「そのようですね」
「私の方から上層部に伝えておこう、テラメノ通信師、西方司令部へ打伝しろ」
「はい――」

 そして私はそれを長めながら命じた。
 
「遺骸を移動させてください。人目につかないところへ」
「はい」
「了解です」
「了解」

 カークさんやゴアズさんらが遺骸処置の命令に応じてくれた。浅く地面を掘って枯れ枝を積み上げるのが妥当だろう。
 そして私の背後からドルスさん歩み寄ってきた。周囲を警戒しながらそっと問いかけてくる。
 
「なんか、話が変な方に動いてねぇか?」
「えぇ、私もそう思います」

 そうそっと答えればプロアさんが私の肩を叩いた。
 振り返ればプロアさんは無言で顎をシャクって視線でゲオルグ中尉を見ていた。
 あまりにも不審な点が多すぎるのだ。

「また――」

 そう、またゲオルグ中尉は左袖の内側を眺めていた。
 プロアさんとドルスさんに視線を投げかけながら私は目線で頷き返した。
 そして落ちていたキドニーダガーを拾い上げる。
 
 この一振りの小さな刃物にはどれだけの陰謀が隠されているのだろう? そして一体誰がこのワルアイユの里を踏みにじろうとしているのだろう? そう――
 
「本当にアルガルド領が背後なのかしら?」

――そう疑問を抱かずには居られなかった。

「隊長」

 そっと声をかけてくるのはパックさん。
 
「手当を。鉛毒が残っていると傷が腐ります」

 パックさんが治療を申し出てくれた。
 
「ありがとうございます。お願いします」

 私はパックさんの言葉に従うことにした。
 ここを拠点とするのは危ない。別な場所へと移動する必要がある。このまま仮眠を取り、日の出前に移動すべきだろう。
 難問が山積している。
 陽の光はまだ見えなかった。

■次話紹介


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WEB小説【傭兵少女・旋風のルスト】を執筆しています。WEB小説サイトでも活動していますが、NOTEでも公開を始めます。ご支援お待ちしております。書籍化を目指しています
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