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リバー、流れないでよ

上田さんがXで「アマプラで公開されたよー」ってポストされてたのを見つけて、これは見なきゃなって見てみたら、めっちゃ面白かった。ハートウォーミングでウェルメイドなコメディです。ラストで流れるくるりの主題歌も映画の内容にぴったりでエモいです。
なんで、みんな見るべき。

ってことで感想を終わりにしてもよいけれど、もうちょっと書きますね。


まあ一言でくくってみりゃ「2分間をループする世界にハマってしまった人々が繰り広げるドタバタ人情コメディ映画」なんですが、ヨーロッパ企画の作品だからかとても舞台劇っぽい印象なんですね。それはたぶん出演している俳優さんたちの演技や画角のなかの立ち位置が舞台っぽいからだろうし、手持ちカメラが俳優さんの動きに合わせてずっとついてくる感じで、それが客席から舞台を見てる観客の視線の動きを模している印象を受けました。舞台とは違う動き回る場面展開の連続なんだけど、そういった演出が舞台っぽさの原因ではないかって思いました。

追記)
この映画よく見てみれば1シーン1カットの長回しで撮影したみたいです。ミコトちゃんが川のほとりでハッて気がついて、そこからいろいろあった後の2分のターン終了を知らせる雷(?遠くでゴロゴロなってる)の音までずっと続きの1カットですね。(1カットを2分で撮り終えるために、役者さんの最初の立ち位置や各シーンの中心となる場所をどこにするか何度も推敲されたとのことで、そりゃ大変だ)
で、これをもっと突き詰めたのが前作の「ドロステのはてで僕ら」で、上田さんによれば70分1カットで死にそうになったそうです。とか書かれてるるけど、どっかで(例えば背景だけ写ってる場面とかそんなカンジの場面などで)繋いでるとかあるんじゃないかってちょっと疑ってる。(映画『1917 命をかけた伝令』も全編1カットに見えるけど、川に飛び込むとか気を失う場面で(たぶん)繋いでるみたいに)でもながーい1カットであることは間違いなく、話を聞くだけで大変だよなーって思いますね。まあ舞台は言ってみれば全編1カットって言えなくもないから、カメラワーク以外はお手の物だったのかもね。

描かれるのは、最初はループに陥ったことで混乱する人々であり、次にはそんな珍奇な状況を受け入れ始めて面白がり、その次には繰り返す時間の中でそれぞれの本音が現れてきて混乱し、そんななか主人公のミコトちゃんと板前のワカモンのちょっと微笑ましい恋愛模様が繰り広げられつつ、悲劇的な結末を匂わせたと思ったら、一気に大団円へと流れ込もうとする気分を少し裏切ったあとにすべて解決って、わかりやすく場面設定が変わっていくっていう、そんなループを見ながら上手く展開させるよなぁなんて感心しながら観てましたね。

ループする時間の中で雪が積もってたり積もってなかったりする場面が混在しますが、これってロケ中に突然雪が積もったらしく、普通ならばシーンのつながりを考えるとロケ延期などもあるんだろうけれど、そんな緊急事態に対しては「ループしてて時間軸が混乱してるんですよ」なんてセリフでさらーっと流しているのが映画制作陣の現場力を感じて面白かったし。

で、何故時間がループするかの原因はラストで判明するんだけれど(その解決を手助けするためにバーナーで炙ったりビールを注いだりするとこでちょっとだけBTTFを思い出したりもしましたけど、あんまカンケーないかな)、舞台が鞍馬山近くの貴船だしで、おそらく番頭あるいは料理長に化けた赤玉先生こと大天狗の如意ヶ嶽薬師坊が憎き鞍馬天狗どもを困らせるため、その絶大な法力で時間をループさせてたんじゃないかとか、実は女将は弁天で一緒に面白がってて、それをミコトに化けた弥三郎がうんざりしながら見守ってるっていうのもいいんじゃないかって妄想を膨らませたりもしましたけど、森見登美彦がそんなふうな小説を書いてくれんかな、っても思ったり思わなかったり。

物語の登場人物みな個性的で魅力的なんだけど、なかでもやはり主人公の仲居さんとして働くミコトちゃんがいい。途中で乙女らしい感情をあらわにするミコトちゃんが可愛くてしょうがないです。物語の重要な役回りで登場する我らが乃木坂の久保ちゃん演じるヒサメは当然カワイイんだけれども、それ以上にミコトちゃんはカワイイ。彼女は同じヨーロッパ企画の舞台「来てけつかるべき新世界」の主人公を演じるらしく、うちの近所の街にもその舞台はやってくるので、観に行こうかなぁ。でも平日だし、行けるかなぁなんて思っとります。

さいごにちょっとネタバレですが、ヒサメ役の久保ちゃんの衣装が藤子・F・不二雄の「SF(すこしふしぎ)作品」に出てきそうで、それに気づけば何故時間がループしてるのかの原因がちょっと想像出来ます。ってか、久保ちゃんの役って絶対藤子・F・不二雄作品を意識してるでしょ。

映画も約90分と長くはないし、ちょっとした時間で観られるので、アマプラ会員は必ず観るべき。そうじゃないヒトもぜひ観るべき。観て損はないよ、ぜったい。

そんな現在の映画上映時間と比べればすこし短めだから、これってテレビで放映するにはぴったりじゃないかって思います。内容も誰でもが笑って少しドキドキしながらもほんわかしたエモい気持ちになれるし。
最近テレビで放映される映画ってコナンかジブリかディズニーばかりでつまらないから、これからはこういう作品をもっともっと放映すべきだと思いますね。

っなことで、また書きますね。


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