197.リーダーにできること
今日は、僕の会社の同僚を家に招待している。
僕が転職して1年半ほどになるが、家に呼べるほどの友人ができたことが何より嬉しいのだ。
彼は引越し祝いにと、我が家にないことを確認の上で、ホットプレートを買ってきてくれていた。
僕たちは早速そのホットプレートを使い、たくさんのたこ焼きを焼いている。
生地を流した上から、たこだけでなく、ウインナーにしらす、チーズにコンビーフ、さらにはネギや明太子も好きに入れていく。
デザートには、たこ焼きみたいに丸い形をしたホットケーキも焼くつもりだった。
「おふたりは、一緒の職場で働いていたんですよね。」
「そう、そう。妻とは本当に、隣の席で仕事をしていたんだよ。ね。」
「へえ、面白いなあ。ご主人はどんな仕事振りでしたか。」
「うーん。本来業務じゃないことにばっかり手を出していたわよね、あなた。」
「あはは。」
「いやいや、あれは皆の為を思ってだよ。」
「どんなこと。」
「いや、お金の話なんだけどね。当時の上司をはじめ、予算がない予算がないって、みんな言うんだよ。とにかく節約しなきゃって。」
「うん、うん。」
「誰かが離れ業を演じて予算を持ってこようものなら、拍手喝采だったわよね。」
「そう。でも、うちの予算が増えて他の予算が減っているだけの話だから。予算がないから節約するんじゃなくて、どうしてみんな予算を増やす努力をしないのかと不思議だったんだよ。」
「思ってはいても、行動に移す人は少ないね。」
「それで、僕なりにアイデアを考えて、社長に直接プレゼンをしたんだ。こういう事業を立ち上げましょうって。そうしたらこうやってお金が入ってきますよって。」
「おお、すごい。そのアイデアは採用されたの。」
「半分くらいは、採用されたかしらね。」
「そうだね。僕がいなくなっても、事業は今後もしばらくは続く。ね、ちゃんと会社にお金を入れ続けているだろう。」
「さすが。やるなあ。」
「まあ、社長も大変だよ。僕も含めてみんなが好き勝手に言うけど、予算にも人員にも限りがあるんだから。」
「私のところにもしわ寄せが来て大変でしたけどね。」
「プレゼンの時、やっぱりうちの社長は凄いなって思ったんだ。僕のプレゼンを聞いて、その場で自分の経験と組み合わせて、こんなやり方はどうかって導いてくれた。」
「うん。」
「急に人をつけることもできないし、急にお金が湧いてくるはずもない。そんな時にリーダーができることっていうのは、道筋を示すことなんだなって思ったよ。」
いつもお読みいただき、ありがとうございます。 「人生が一日一日の積み重ねだとしたら、それが琥珀のように美しいものでありますように。」